マーチスーパーターボ、bB、セラ…常識をぶっ壊した規格外のクルマたち

■完璧を求めたターボ×スーパーチャージャーたち

1989年1月に発売されたマーチスーパーターボ。 エクステリアはフロントグリルに埋め込み型フォグランプ、ボンネットフードのエアインテーク、サイドには控えめながらサイドスカート、またリアにも小ぶりのリアウィング、マフラーはデュアルカッターを装備
1989年1月に発売されたマーチスーパーターボ。 エクステリアはフロントグリルに埋め込み型フォグランプ、ボンネットフードのエアインテーク、サイドには控えめながらサイドスカート、またリアにも小ぶりのリアウィング、マフラーはデュアルカッターを装備

 1980年代は、「ツインカム」「ツインカム4バルブ」「ターボ」「ツインターボ」といった、ハイパワーを絞り出すメカが大いに脚光を浴びた時代だった。そんななか、登場したのが、初代マーチに設定された、マーチスーパーターボ(1989年)だ。

 当時、全日本ラリー選手権向けのレース車両として発売された「マーチR」をベースに、市販向けに仕立てられたのがマーチスーパーターボだが、エンジンは「マーチR」と同じ、930㏄のターボ+スーパーチャージャー。

 最高出力は、今見ればやや拍子抜けの110㎰に過ぎなかったが、当時はターボでリッター100馬力オーバーは大変な高出力。

スーパーチャージャー+ターボチャージャーが装着されたMA09ERT型930㏄直4エンジンは電子制御式燃料噴射インジェクターECCによって110㎰/13.3kgmを発生

 大径タービンが必要だったため、レスポンスを補うために、低い回転域ではスーパーチャージャーがトルクを補った。

 車両重量はたったの770kgだったから、相当なパフォーマンスを誇ったと思われる(残念ながら私は乗ったことがありません)。

 マーチスーパーターボの登場から18年後の2007年。再びターボ+スーパーチャージャーが登場する。5代目ゴルフの後期モデルに採用された「直噴ツインチャージャー」がそれだ。

2006年に発売されたVWゴルフGT TSIはスーパーチャージャー+ターボの1.4Lツインチャージャーエンジンを搭載し、170㎰/24.5kgmを発生。ターボはアイドリングからブーストを開始するが、1.4Lという小排気量エンジンに大風量タービンを組み合わせているため、低速域ではフルブーストにならない。2000rpm台まではスーパーチャージャーの過給に助けられながらブーストが立ち上がり、ターボが充分に作動する中、高回転域ではターボ単独で過給する。

 コンセプトはマーチスーパーターボと同じで、1.4Lという排気量ながら、低回転域ではスーパーチャージャーが、高回転域ではターボが過給するという役割分断だ。

 ただしゴルフの場合、マーチのような競技ベース車両ではなく、高出力・低燃費を実現する実用エンジン。ダウンサイジングターボの一種ですね。

 実際に乗ってみると、大排気量自然吸気エンジンのような、まったくもって自然なフィーリングで、とんがった部分はまるでなかった。

 当時ツインチャージャーは低燃費がウリでもあったが、実用燃費は頑張って13km/L程度で、それほど優れているとも感じなかった。

 VWのツインチャージャーは、6代目ゴルフにも搭載されたが、その後のターボ技術の進歩により、スーパーチャージャーがなくても十分な低速トルクを出せるようになったため、短命に終わった。

 ぶっちゃけツインチャージャーは生産コストがかかりすぎたし、メカが複雑になる分、何かあると大変なのでした。

■3人家族仲良く! 前席3人乗りのクルマたち

2000年4月に発売されたベンチシートコラムATのプロナード(米国名アバロン)
2000年4月に発売されたベンチシートコラムATのプロナード(米国名アバロン)

 前席3人乗りといえば、昔はベンチシートのアメリカ車が定番だったが、日本車にもいくつか存在した。

 トヨタアバロンは、初代から前席3人乗りのベンチシートが存在したが、販売は北米向けのみで、日本に逆輸入されたモデルは通常の前席2人乗りだった。しかし2代目アバロンは、「プロナード」の車名で、日本にも前席3人乗りのベンチシート車が逆輸入された(2000年)。

 ただ、アバロンとプロナードは、見た目も走りもオッサンくさかったし、ベンチシートもウリにならず、日本ではまったくの販売不振で終わった。

 1998年に登場した日産ティーノも、ベンチシートを持つ前席3人乗り。後席を取り外して広大なラゲージを確保することもできた。

2000年に登場した日産ティーノ。3列7人乗りのミニバンブームになっていく時代、前席3人乗りとはいえ、そのブームにのることはできなかった
前席3人、後席3人乗りの2列シートのシートレイアウトを持つティーノ

 当時はミニバンブームの初期で、乗用車にもミニバン的なユーティリティを取り入れようとする動きがあり、ティーノはその反映だったのだ。

 が、スペース性ではミニバンにかなうはずはなく、全幅は1760mmと広くて取り回しがイマイチ。見た目もイマイチで販売は低迷。一代限りで消滅の憂き目に遭った。

 一方、2004年登場のホンダエディックスは、ベンチシートではなく独立シート。前3席はそれぞれ独立して前後スライド&リクライニングすることができた(ちなみに後席も中央席のみスライド可能)。

2004年7月に発売されたホンダエディックス。ミニバンブームのなかにあって2列6人乗りはウケなかった
 「<strong>3by2</strong>」という3席2列の全座席独立シートで6席とも独立していて全席リクライニング可能。前3席と後席中央はスライドできる。前席中央・後席中央は大きく後退できるようになっていて、それぞれを実質1.5列目、2.5列目といえる位置に配置することによって前後それぞれの左右席との乗員の体の干渉を防いでいる
3by2」という3席2列の全座席独立シートで6席とも独立していて全席リクライニング可能。前3席と後席中央はスライドできる。前席中央・後席中央は大きく後退できるようになっていて、それぞれを実質1.5列目、2.5列目といえる位置に配置することによって前後それぞれの左右席との乗員の体の干渉を防いでいる

 エディックスは、「子供ひとり時代」のファミリーカー。一家3人が前席に並んで座ることができるという、実にユニークなコンセプトだったが、これまた中途半端ということで受け入れられず、一代で消えた。カッコも悪かったし。

 海外モデルでは、フィアットのムルティプラ(1998年)が、オール独立シートの前後3人乗り(合計6人乗り)の珍車として有名だ。

前席3人、後席3人乗りのシートレイアウトと奇抜なデザインを持つフィアットムルティプラ。2004年にはフェイスリフトして普通の顔に
独立式の6座シートを持つムルティプラ。MTしかなかったのが災いした

 また、マクラーレンF1も、前席のみの3人乗りで、しかもドライバーが中央に座る(左右の座席はやや斜め後方に位置)という、超絶ユニークなスーパーカーだった。

 ドライバーが中央に座るフォーミュラマシン直系なのだからものすごい。これに追従するクルマはまだ出ていない。

次ページは : ■失敗作ばかり?! トヨタの真面目な不真面目カーたち

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!