【常識をぶっ壊した規格外のクルマ】もうクルマがつまらないとは言わせない?!

 今、販売されているクルマは、常識の範囲内というか、驚きのない普通のクルマばかりで、つまらないと思っている人が多いんじゃなかろうか。なんでもかんでも規格内にあるというのはおもしろくないですよね。

 でも、常識を覆す、「規格外」のクルマも存在するんです。さて、どんな規格外のクルマがあるのでしょうか?

 規格外のクルマは成功したのでしょうか? それとも失敗作だったのでしょうか?

文/清水草一
写真/ベストカーWEB編集部


■こんなの必要?! 掟破りの SUV+オープンたち

1993年の東京モーターショーでの反響を受け、発売されたX-90.初代エスクードのラダーフレームに丸みを帯びた2ドアボディを載せた2シーターのSUVオープン2シーター

 SUVのオープンの元祖といえるのが、珍車として歴史に名を刻むスズキX-90だ。ただしX-90のオープン機構は、手動で屋根を外すTバールーフ。完全オープンではない。

 発売された1995年当時は、まだSUVという言葉も一般的ではなかった。ましてやクロスオーバーSUVなんて言葉はなかったので、「これはマツダロードスターとエスクードのハーフかな?」という感じで捉えたものだ。

 乗ってみると、とにかくサスペンションが固く、乗り心地が悪かった! 初代エスクードの2ドアモデルがベースだったが、エスクードよりすべてがダイレクト。オシャレなオープン2シーターと思ったら大間違いで、トラックに乗っている感覚だった。

 私は「これは大失敗作だな」と思ったが、案の定売れ行きは超低空飛行で、2年後に生産中止となった。

着脱できるグラスルーフ(Tバールーフ)がトランク内に収納できる。2シーターというのが失敗の原因か?

 X-90のリベンジ……という感覚はゼロながら、たまたま?その後を継ぐ存在として登場したのが、レンジローバーのイヴォークコンバーチブルだ。

ソフトトップルーフは防音仕様で、時速48kmまでの走行時であれば、わずか18秒でルーフを格納

 正確には、日産ムラーノにクロスカブリオレというモデルがあったが、日本では販売されなかった。その他「ジープ・ラングラー」など軍用車系に「屋根が取れます」というのはあるが、オシャレさん系ではない。

 イヴォークコンバーチブルの登場は2016年。X-90と違ってこちらはフル4シーターで、幌のフールは電動フルオート開閉機構を持つ。まさにオシャレ&ゼイタク系!

 目線の高いSUVとオープントップの組み合わせは、ウルトラ爽快&優越感満点。世界的なSUVブームでもあり、今後このカテゴリーは爆発的に増殖するんじゃないか! と思ったが、まだ追従モデルは現れない。不思議である。

■完璧を求めたターボ×スーパーチャージャーたち

1989年1月に発売されたマーチスーパーターボ。 エクステリアはフロントグリルに埋め込み型フォグランプ、ボンネットフードのエアインテーク、サイドには控えめながらサイドスカート、またリアにも小ぶりのリアウィング、マフラーはデュアルカッターを装備

 1980年代は、「ツインカム」「ツインカム4バルブ」「ターボ」「ツインターボ」といった、ハイパワーを絞り出すメカが大いに脚光を浴びた時代だった。そんななか、登場したのが、初代マーチに設定された、マーチスーパーターボ(1989年)だ。

 当時、全日本ラリー選手権向けのレース車両として発売された「マーチR」をベースに、市販向けに仕立てられたのがマーチスーパーターボだが、エンジンは「マーチR」と同じ、930㏄のターボ+スーパーチャージャー。

 最高出力は、今見ればやや拍子抜けの110㎰に過ぎなかったが、当時はターボでリッター100馬力オーバーは大変な高出力。

スーパーチャージャー+ターボチャージャーが装着されたMA09ERT型930㏄直4エンジンは電子制御式燃料噴射インジェクターECCによって110㎰/13.3kgmを発生

 大径タービンが必要だったため、レスポンスを補うために、低い回転域ではスーパーチャージャーがトルクを補った。

 車両重量はたったの770kgだったから、相当なパフォーマンスを誇ったと思われる(残念ながら私は乗ったことがありません)。

 マーチスーパーターボの登場から18年後の2007年。再びターボ+スーパーチャージャーが登場する。5代目ゴルフの後期モデルに採用された「直噴ツインチャージャー」がそれだ。

2006年に発売されたVWゴルフGT TSIはスーパーチャージャー+ターボの1.4Lツインチャージャーエンジンを搭載し、170㎰/24.5kgmを発生。ターボはアイドリングからブーストを開始するが、1.4Lという小排気量エンジンに大風量タービンを組み合わせているため、低速域ではフルブーストにならない。2000rpm台まではスーパーチャージャーの過給に助けられながらブーストが立ち上がり、ターボが充分に作動する中、高回転域ではターボ単独で過給する。

 コンセプトはマーチスーパーターボと同じで、1.4Lという排気量ながら、低回転域ではスーパーチャージャーが、高回転域ではターボが過給するという役割分断だ。

 ただしゴルフの場合、マーチのような競技ベース車両ではなく、高出力・低燃費を実現する実用エンジン。ダウンサイジングターボの一種ですね。

 実際に乗ってみると、大排気量自然吸気エンジンのような、まったくもって自然なフィーリングで、とんがった部分はまるでなかった。

 当時ツインチャージャーは低燃費がウリでもあったが、実用燃費は頑張って13km/L程度で、それほど優れているとも感じなかった。

 VWのツインチャージャーは、6代目ゴルフにも搭載されたが、その後のターボ技術の進歩により、スーパーチャージャーがなくても十分な低速トルクを出せるようになったため、短命に終わった。

 ぶっちゃけツインチャージャーは生産コストがかかりすぎたし、メカが複雑になる分、何かあると大変なのでした。

■3人家族仲良く! 前席3人乗りのクルマたち

2000年4月に発売されたベンチシートコラムATのプロナード(米国名アバロン)

 前席3人乗りといえば、昔はベンチシートのアメリカ車が定番だったが、日本車にもいくつか存在した。

 トヨタアバロンは、初代から前席3人乗りのベンチシートが存在したが、販売は北米向けのみで、日本に逆輸入されたモデルは通常の前席2人乗りだった。しかし2代目アバロンは、「プロナード」の車名で、日本にも前席3人乗りのベンチシート車が逆輸入された(2000年)。

 ただ、アバロンとプロナードは、見た目も走りもオッサンくさかったし、ベンチシートもウリにならず、日本ではまったくの販売不振で終わった。

 1998年に登場した日産ティーノも、ベンチシートを持つ前席3人乗り。後席を取り外して広大なラゲージを確保することもできた。

2000年に登場した日産ティーノ。3列7人乗りのミニバンブームになっていく時代、前席3人乗りとはいえ、そのブームにのることはできなかった
前席3人、後席3人乗りの2列シートのシートレイアウトを持つティーノ

 当時はミニバンブームの初期で、乗用車にもミニバン的なユーティリティを取り入れようとする動きがあり、ティーノはその反映だったのだ。

 が、スペース性ではミニバンにかなうはずはなく、全幅は1760mmと広くて取り回しがイマイチ。見た目もイマイチで販売は低迷。一代限りで消滅の憂き目に遭った。

 一方、2004年登場のホンダエディックスは、ベンチシートではなく独立シート。前3席はそれぞれ独立して前後スライド&リクライニングすることができた(ちなみに後席も中央席のみスライド可能)。

2004年7月に発売されたホンダエディックス。ミニバンブームのなかにあって2列6人乗りはウケなかった
3by2」という3席2列の全座席独立シートで6席とも独立していて全席リクライニング可能。前3席と後席中央はスライドできる。前席中央・後席中央は大きく後退できるようになっていて、それぞれを実質1.5列目、2.5列目といえる位置に配置することによって前後それぞれの左右席との乗員の体の干渉を防いでいる

 エディックスは、「子供ひとり時代」のファミリーカー。一家3人が前席に並んで座ることができるという、実にユニークなコンセプトだったが、これまた中途半端ということで受け入れられず、一代で消えた。カッコも悪かったし。

 海外モデルでは、フィアットのムルティプラ(1998年)が、オール独立シートの前後3人乗り(合計6人乗り)の珍車として有名だ。

前席3人、後席3人乗りのシートレイアウトと奇抜なデザインを持つフィアットムルティプラ。2004年にはフェイスリフトして普通の顔に
独立式の6座シートを持つムルティプラ。MTしかなかったのが災いした

 また、マクラーレンF1も、前席のみの3人乗りで、しかもドライバーが中央に座る(左右の座席はやや斜め後方に位置)という、超絶ユニークなスーパーカーだった。

 ドライバーが中央に座るフォーミュラマシン直系なのだからものすごい。これに追従するクルマはまだ出ていない。

■失敗作ばかり?! トヨタの真面目な不真面目カーたち

2001年6月に発売されたbBオープンデッキ。トヨタの意気込みとは裏腹に売れずに2003年3月に販売終了

 トヨタという会社は、あまりにも真面目であるせいか、不真面目さに憧れがあり、たまに猛烈に不真面目なクルマを出す。そのなかから1台を選ぶとすれば、bBオープンデッキだろう。

リアドアに小ぶりにして観音開きとしている
リアウィンドウを跳ね上げ、その下のデッキスルードアを倒すと、キャビンと荷台をつなぐことができる

 bB のラゲージ部をピックアップトラックのようにしつつ、ルーフキャリアでクルマの輪郭をイメージさせることで、ヨーロピアンなステーションワゴンもかすかに髣髴とさせるという、超クロスオーバー&一発芸的なクルマだった。

 開発陣によると、これは「健康的な昼間の bB 」ということで、アウトドアでアクティブに楽しむことをイメージしたようだが、アクティブに荷物を積むにはオープンデッキ部は狭すぎて使い道がなかった。

 結局、健康的というより、刹那的な珍車として歴史に名を遺すことになった。

 そのほか、トヨタの真面目に不真面目なクルマとしては、ガルウイングのセラ、アルファロメオへのオマージュだったヴェロッサ、WiLLシリーズ(3台)などがある。

 どれも真面目に不真面目に取り組みすぎていて、楽天的になり切れない日本人の悲哀を感じさせた。涙が出ます。

1990年に登場したガルウイングドアを持つトヨタセラ
2001年7月に発売されたトヨタヴェロッサ。 成り立ちとしてはマークⅡの兄弟車でクレスタの後継モデル。ヴェロッサはイタリア語の「Vero(真実)」と「Rosso(赤)」からの造語。トヨタが作った、なんちゃってイタ車と揶揄された
日本の異業種企業を集めてWiLLという1つのブランドを作り上げたが、トヨタからはWiLLブランド第一弾として2001年1月に登場させたWiLL Vi。ヴィッツをベースにかぼちゃの馬車をモチーフしたエクステリアが特徴
2001年4月に発売されたWiLL VS。ステルス戦闘機をモチーフにしたデザイン重視のクルマだった
ディスプレイ一体型ヘルメットをデザインコンセプトに、車載通信情報サービスG-BOOKを搭載したWiLLサイファは2002年10月登場

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