月極駐車場の無断駐車にどう対応する?
さて、一番やっかいに思えるのが月極駐車場での無断駐車の対応だ。そこで月極駐車場に関して、都内の東京弁護士会所属の志賀剛一弁護士に取材した。
「貸主が無断駐車した人に追及する責任の根拠となるのは不法行為です」と志賀氏。
無断駐車は法律上、不法行為として取り扱われ、駐車料金の相場から時間(あるいは日数)計算して、請求金額を算出することになるという。
ただし、志賀弁護士によれば、無断駐車の法的な対応の依頼については「ごく稀といえます。なぜなら、単純に弁護士に依頼するコストが実情に見合わないからです」。
さらに「法的手段に訴えて交渉を進めて和解などになるケースを想定しても、請求できる金額と書類手続きなどの手間を考えると、所有者側が得られるメリットが少ないからです」とのことだった。
タイヤロック 貼り紙はNG!
いずれの場合も交渉ごとになるわけだから、金額の交渉を含めて、話はそう簡単にはいかないだろう。では、どう無断駐車にどう対応すればよいのだろうか。
まず、無断駐車への対応として押さえておくべきなのは、タイヤロック装置の装着などで“対抗”するのはやめておいたほうがよいということだ。
海外では許されるケースはあっても、日本の法律では実力行使による「自力救済の禁止」が定められているからだ。
まず真っ先に対抗処置として頭に浮かぶ、前出の「看板」による警告表示には、金額に差が生まれていることからもわかるように依るべき法的根拠がないので、無視されても文句のつけようがない。
たとえば「無断駐車を見つけた場合にはタイヤをロックします」と看板で警告しても無駄なのだ。
さらに、業者に依頼して車両をレッカー移動させたり、タイヤロックの装着やフロントウインドウへの「警告書」を貼り付けるなどの対応策としては、無断駐車という不正行為の悪質さを考えれば、それ相応のやり方に思えるかもしれないい。
しかし正しく対処しなければ、逆に無断駐車車両の所有者から損害賠償請求をされてしまう可能性が出てきてしまう。
たとえば作業中に車両に傷がついたりすれば、所有者が器物破損罪で逆に訴えられるケースもあり得る。
無断駐車していても「クルマを即移動できない状態にされた」として損害請求をされる可能性があるというから、あくまで慎重に事を進めることを肝に銘じておく必要がある。
泣き寝入りをしないためにどうすればいいのか?
駐車場所有者が泣き寝入りしないために、どう対処すればよいのか。いくつかの対応策があるので紹介しておこう。
【警察への通報】
無断駐車の状況を説明すると、各警察で対応してもらえることもあるようで、無断駐車車両の所有者がわからない場合は、まずは警察に対応依頼するのもひとつのやり方だ。
1/現場での状況確認
2/ナンバーから所有者を特定
3/連絡先の登録があれば電話で連絡
4/周辺をパトカーで巡回し拡声器で呼びかける
などといったケースがあるようだが、これらは警察の関わり方は協力レベルであることを頭に置いておくべきだろう。前述のように法的手段には当てはまらないことは認識して、過度の期待はしないほうがよさそうだ。
駐車車両の特定はできるのか?
警告や請求をするために実行すべきなのは、まずは所有者の情報を集めることだ。駐車場を管轄する運輸支局に照会すれば「登録事項等証明書」を取得できる。
車両ナンバー、無断駐車期間や場所(見取り図)、無断駐車の状況がわかる写真を提出のうえ各運輸支局に判断してもらい、提出内容が認められれば基本的に当日に手続きが可能とされ、この書類で無断駐車の所有者の氏名や住所を判明させることができる。
肝心なのは、日付時間が確認できる駐車期間がわかるように、無断駐車時の車両写真を残すなど、詳細に記録を残しておくことだ。
無断駐車した車両の所有者に損害賠償の請求はできるのか?
損害賠償の請求をするのであれば、請求金額を提示しなければならない。
月極駐車場であれば1ヵ月の貸し出し額の日割り金額、付近のコインパーキング駐車場の相場となる金額と使用時間などを算出する。
自身が別の駐車場を利用したのであれば、そのコインパーキングの駐車料金を控えておく。これに車両所有者の調査に要した費用や書類作成にかかった人件費相当額などを計算しておくべきだろう。
月極駐車場に関するケースでは、管理者側の「思い」が認められたケースもある。
月極駐車場に約40分間無断で駐車したとして、土地の所有者が無断駐車した車両の所有者に対して損害賠償を求めていた大阪地裁での裁判では、車両の所有者に200円の支払い(近隣のコインパーキングの料金を参考に算定)を命じた。
報道によると、原告は2015年に大阪府内の駐車場に軽乗用車を無断で駐めたとして賠償を求めたとのこと。
原告側は「駐車場ではなく空き地」「クルマを止めても損害は発生しない」と争っていたとされ、判決では「所有者には自分の土地を承諾なく利用されない権利がある」として原告の請求を認めた。
被害者が訴えから判決まで1年半の期間がかかっても「泣き寝入りはしない!」という決意の元に訴えを続けたのは、損害金をどれだけ得られるかというような問題ではなく、裁判を起こすことに意味を感じていたからだろう。
ちなみに、原告は弁護士に依頼せず、いわゆる「本人訴訟」の形で裁判を起こした。費用は5000円以上かかったが、「やめてもらうために訴えた」と話しているという。
この裁判のように弁護士に依頼せず、本人が訴訟するのは珍しくはないようで、当事者のいずれかに代理人がつかない本人訴訟の方が多いようだ。
コメント
コメントの使い方権力者と犯罪者にやさしい日本の司法、バカだろwww