ガバッと後ろのドアを跳ね上げ、荷物を積む。
ミニバンやワゴン、SUVなどのバックドアは、上に跳ね上げるタイプが一般的。それゆえ冒頭のシーンは、よくある日常のひとコマだろう。
しかし、“上”ではなく“横”に開くバックドアを持つ車も少数ながら存在し、特に本格派のSUVを中心に根強く残っている。なぜ、一般的な跳ね上げ式ではなく、わざわざ横開き式のバックドアを採用するのか?
本記事では、歴代モデルで横開き式を採用しながら、最新モデルで通常の跳ね上げ式に変えたある軽自動車の例から、各種バックドアが持つ長所と短所に迫った。
少数派のバックドアが根強く採用される背景には、たしかな「理由」がある。
文:永田恵一
写真:編集部
歴代「横開き式」だったムーヴがバックドアを変えた理由
バックドアで注目したいモデルがダイハツ ムーヴである。
2014年登場の現行モデルで6代目となるムーヴは、3代目(2002年発売)で一部グレードに跳ね上げ式のバックドアをオプション設定したことはあったが、それ以外は先代の5代目まで横開きのバックドアを長年使っていた。
ところが、現行モデルのバックドアは跳ね上げ式に変更されており、その理由をダイハツ広報部に聞いた。
「ムーヴは跳ね上げ式のバックドアだと『開閉が重い』という声もあり、長年横開きのバックドアを使ってきました。
しかし、跳ね上げ式の要望も多かったことに加え、2013年登場のタントでバックドアに使う素材を鉄板から樹脂に変えたことで軽量化できたこともあり、開閉の重さは克服できました。そのため跳ね上げ式に変更しています」(ダイハツ広報部)
このムーヴの変化を見ても、軽自動車に代表される一般的な車のバックドアは跳ね上げ式が好まれる傾向であることが分かる。
横開き式のメリットは? 各種バックドアの長所と短所
バックドアには、一般的な「跳ね上げ式」と上述の「横開き式」があり、この他ステップワゴンのわくわくゲートのような「観音開き式」もある。
大きく3種類に分けられるバックドアの長所と短所としては、それぞれ以下のポイントが挙げられる。
■跳ね上げ式バックドア
【長所】
・雨の時にはバックドアが屋根替わりになり、荷物の出し入れの際に濡れずにすむ
・バックドアを開ければ車の真後ろだけでなく左右から荷物を出し入れできることもある
【短所】
・ムーヴの項で書いたように、バックドアの開閉が重く感じることがある(高額車に付く電動バックドアにすれば解決できるが、当然重量やコストが増加)
・バックドアが大きいと開閉のために後ろ側に大きなスペースが必要となり、小柄の人だと開閉が大変なことも
■横開き式バックドア
【長所】
・後ろ側が狭い場所でもバックドアを開閉でき、身長に関係なく開閉しやすい
・開閉の際の力が小さくて済む
【短所】
・開く反対側からは荷物を出し入れできない
・バックドアを雨の時に屋根代わりにできない
・風が強いとバックドアが動いてしまうことがある
■観音開きバックドア
【長所】
・3列シートミニバンの3列目を収納すればバックドアからも車内にアクセスできる(ステップワゴンのわくわくゲートは跳ね上げ式のバックドアとしても機能)
・横開き式と同様に大きなスペースがなくてもバックドアが開閉できる
【短所】
・デザインが武骨になりがち
・観音ドアの分割比率によっては、左右ドアを分割する部分がルームミラーからの後方視界を遮ることがある
・バックドアが二分割になることでコストが高く、重量もかさむ
このように、それぞれ一長一短あることが分かる。
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