前向き駐車をしても違反にはならない
気になるのは、たとえば前向き駐車をお願いする看板を設置している駐車スペースで指示どおりに駐車しないと、法律に違反して訴えられるケースがあるのかということだ。
この点に関しては、そもそも法律が存在しないうえに、店舗の敷地内は公的な場所とはいえあくまで私有地であって、警察の管轄外だから法律による取り締まりの対象にならないので不安にかられる必要はない。
しかし、「前向き駐車をお願いします」という看板を見たら、やはりやむなき事情を鑑み、ましてや私有地に停めるのだから、前向き駐車をするべきだろう。
海外では前向き駐車、バック退出が当たり前
アメリカではロサンゼルスをはじめ、ニューヨークやハワイでも、クルマは前向き駐車が普通。これはドイツやフランス、イギリスなどヨーロッパでも同じだ。あえて後ろ向き駐車にしてください(あまり見たことはないが)という看板がないかぎり、頭から入れてバックで退出する。
実際、この前向き駐車は理にかなっている。巨大なカートに大量の買い物品を入れて駐車場へ向かい、バックドアを開けてトランクに荷物を積み込む。
これが後ろ向き駐車だったらどうなるか? そもそも巨大なカートは、隣と自分のクルマの間は通らないし、通ったとしてもわざわざ後ろまで回って、買ったものを積めるのは面倒だ。一度に大量の買い物をする場合なら前向き駐車のほうが便利だ。
でも日本ではそこまで大量に買わない人がほとんどだと思うので、後ろ向き駐車してもそんなに不便に感じることはないのだが……。
また、車両盗難の多いアメリカでは、前向き駐車をすると、盗難のリスクが下がるという考え方もあり、盗難されにくいという観点から、前向き駐車が一般的になっているという。
前向き駐車の車両を盗むのに、バックして出るのは前進して出るよりも逃げ去りにくく、盗難に時間がかかってしまうからだという。
おもしろいのは日本にあるアメリカの大型スーパーマーケット、コストコの駐車場。アメリカ発祥だから、駐車場に車止めがなかったり、前向き駐車向けの斜め駐車のスペースがあるが、そこはやはり日本人、斜め駐車のスペース以外は、後ろ向き駐車をしている人がほぼ100%。
前向き駐車に伴うリスクとは?
利便性を含めた入庫しやすさとしては、前向き駐車はどうだろう。現実に前向き駐車をする際には後ろ向き駐車よりも気を遣うことが多いように思える。
テクニカル(というほどではないかもしれないが)な部分、駐車スペースに自車を入れようとする場合に、意外に慎重さが必要になってくる。
たとえば、店舗前に他車と並べて駐車するにしても、車両のサイズや駐車枠に両側の車両がバランスよく入っていればよいが、場合によってはバンパーのコーナー部の位置が気になってしまい、すんなりと入り込めないケースもある。
ここで前向きに駐車した場合に後退(バック)で出庫する場合にどんな危険があるか、教習所の「方向変換コース」(直角バックの車庫入れ)を思い出してみると、教習所のコースの印象は狭い駐車場を想定していたように思えるのは、一般の駐車場よりは幅は充分のはずでも、進入しにくさが難しさを助長しているのかもしれない。
教習所のコースでは、必ず後退で駐車スペースに入り、入れた方向に出て行く運転パターンとなっていて、現実の場面では前進して駐車部分に入ろうとすると、難しく感じることもあったはずだ。
このように、後退なら比較的容易に入れる駐車スペースでも、前進で入れるのは難しく、車体がまっすぐに収められないという状況になるのは、内輪差が生まれる内輪の影響と車体の外側先端が隣の車両に接触する要素があるからだ。
進入する路の道幅が狭い場合には、車庫や駐車場からまっすぐ後退できる距離が限られ、ハンドルを回すとすぐに外輪差が発生するので、外側部分の接触を避けるために何度も切り返して少しずつ向きを変える必要が出てくる。
現実の一般的な駐車場であれば、その間にも進入路には車両や歩行者の往来があり、後退して出庫する際には横方向や後方の死角を何度も確認する必要があり、急ぎすぎると確認作業がおろそかになるリスクも低くない。ギアのセレクトなどを含めて、後退時には誰でも慎重さが必要だ。
特にコンビニエンスストアでは、突然自転車が通り過ぎるような場合もあるから、重ねて注意を払う気構えをもつべきだろう。
当たり前だが、運転席から見た前方と後方の視界を比べれば、周囲の状況を細かく把握しなければならない。
最近ではペダル踏み間違いによる事故も報道されることも多くなって、この点に関しては、年とともに車両の背後を振り返りながら確認しつつ操作することが辛くなるというドライバー側の事情もある。
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