軽は競争が激しいためあまり値上がりしない?
この値上げも、軽自動車はライバル同士で競争しながら最小限度に抑えるため、タント、N-BOX、スペーシアなどの価格は常に横並びだ。
例えば現行型の場合、標準ボディの買い得グレードの価格は、全車が140万~150万円の価格帯に収まる。タントX:146万3400円、N-BOX G・Lホンダセンシング:149万9040円、スペーシアハイブリッドX:146万8800円だ。
このなかで現行タントは2019年7月にフルモデルチェンジされ、設計が最も新しいから、N-BOXとスペーシアの買い得グレードに比べて価格が若干安い。ここまで突き詰めて価格を決めているわけだ。
そのために開発者も「タントの価格は、コストというよりライバル関係により、予め決められていた」という。ライバル車に比べて価格が少しでも高いと(先の買い得グレードでいえば150万円を超えると)、販売に大きな悪影響を与えてしまう。
このような経緯から、現行タントでは、先代型に標準装着されていた運転席シートリフターとチルトステアリングをオプションに変更している。
緊急自動ブレーキを進化させながら、値上げはできないため、仕方なくこれらの装備をオプションに落とした。
マイナーチェンジ時の便乗値上げもあり?
軽自動車では、ステアリングホイールの中央に装着されるメーカーのエンブレムをメッキから普通の塗装に変えるなど、細かな節約を図ることが多い。
価格競争が熾烈な軽自動車を除くと、原材料費や人件費の高騰を価格に転嫁することもある。
価格を少し高めて、装備は若干削る(例えばスピーカーの数を6個から4個に減らす)といった方法で、ユーザーに気付かれないようにコストダウンをすることもある。マイナーチェンジの時など、必要に応じて、このような一種の便乗値上げが行われる。
所得の伸び悩みが「新車価格が高くなった」と感じる理由
「最近はクルマの価格が高くなった」と感じさせるもうひとつの理由は、所得の伸び悩みだ。1世帯当たりの平均所得やサラリーマンの平均所得推移を見ると、1997年前後がピークだが一向に上がっていかない。
リーマンショック直後の2009年には所得が最も下がり、その後は上昇に転じたが、今でも20年前の水準には戻っていない。所得が下がり、クルマの価格が高まったのでは、値上げしている感覚が一層強まってしまう。
■1世帯あたりの平均所得金額 の推移(世帯構造別、単位:万円)
■各種世帯の1世帯あたりの平均所得金額(最新データは2017年)
●全世帯 2009年:549.6万円、2017年:551.6万円★ピーク:1994年/664.2万円
●高齢者世帯:2009年:307.9万円、2017年:334.9万円★ピーク:1998年/335.5万円
●児童のいる世帯:2009年:697.3万円、2017年:743.6万円★ピーク:1996年/781.6万円
■サラリーマンの年間平均給与と伸び率の推移(最新データは2017年)
●2009年:405.9万円 2017年:432.2万円 ★ピーク:1997年/467.3万円
一方、景気動向指数は、リーマンショックの時に大きく落ち込んだが、その後は回復してきた。したがって、一般的に企業などは以前よりも景気がよくなったといわれるが、所得が戻らないのだから、多くの人達が「景気の好転を実感できない」と感想を漏らすのは当然だ。
新車価格が10~25%上がっているのに対し、2017年の全世帯の所得は551.6万円(2017年)と2009年に比べ、0.03%(2万円)の上昇に留まり、1994年のピーク時の664.2万円に比べると112.6万円も少ない。
サラリーマンの平均年収も1997年のピーク時の467.3万円から下降を続け、過去最低の405.9万円を記録した2009年以降はほぼ横ばいで、2013年以降、2017年までかろうじて徐々に上昇しているものの、2017年の432.2万円は、1997年に比べると35.1万円も少ない。
つまり、10年前に比べて所得が少ないのに、クルマが値上げされると、ユーザーは以前と同じサイズの車種に乗り替えられない。
そこで所得に応じた価格のクルマを選ぶと、ボディサイズやエンジンの排気量を小さく抑えることになる。
■サラリーマンの年間平均給与の詳細
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