最近「クルマの価格が高くなった」という嘆き節がよく聞かれる。
はたして10年前と比べて、新車価格はほんとに高くなっているのか?
それとも、安全性や燃費もよくなり、性能も向上しているので、実質値下がりしているのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB
5車種の新車価格は10年前と比べ10~25%のアップ!
最近、クルマの価格が高くなったという声を聞くことが多い。はたしてクルマの価格は本当に高くなっているのか?
そこで10年前(2009年)と2019年の価格を売れ筋車種の新車価格を比べると、以下のようになった。
※2009年の消費税率は5%、2019年7月時点の消費税率は8%
■軽自動車:2009年/2019年 スズキワゴンR・FX
■軽自動車:2009年/2019年 ダイハツタントX
■コンパクトカー:2009年ホンダフィット13L/2019年ホンダフィット13G・Lホンダセンシング
■ミニバン:2009年/2019年日産セレナS
■SUV:2009年/2019年 日産エクストレイル4WD・20S
■セダン:2009年トヨタクラウン3.0ロイヤルサルーン/2019年トヨタクラウン2.0S・Cパッケージ
上記の価格上昇率は「2019年の価格÷2009年の価格」をパーセンテージで示したものだ。
10年前と現在の価格を同じグレード同士で比べると、現行型はおおむね10~25%値上げされている。
フィットが約31万円、タントが約25万円も値上がりした理由
価格上昇率の大きなフィット(23%)やタント(20%)は、両車ともに緊急自動ブレーキが標準装着されて価格が高くなった。
特にフィットは約31万円の大幅な値上げになったが、現行型は、安全装備の緊急自動ブレーキと運転支援機能を兼ね備えたホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプなどを標準装着している。
それでもプラスされた装備を価格に換算すると25万円前後だろう。約31万円の価格上昇は、少し行き過ぎた値上げとも受け取られる。
タントXの2019年モデルは、2009年式に比べると24万5400円高い。10年前に新車として売られていたタントは2代目だが、すでに左側にはピラー(柱)を内蔵したスライドドアを装着している(右側は前後ともに横開きドア)。
快適装備は相応に充実していたが、緊急自動ブレーキを作動できるスマートアシスト、横滑り防止装置などは備えていなかった。現行型でこれらの装備を加えると、24万円少々の値上げになる。
一方、クラウンやエクストレイルのような価格が高い車種は、価格上昇率が下がる(値上げ幅が小さい)。価格が高ければ、メーカーや販売会社の受け取る粗利も大きく、装備の追加によるコストアップを吸収しやすいからだ。
それに比べると、軽自動車やコンパクトカーは昔から価格競争が激しい。最初から粗利を少額に抑えた価格設定だから、安全装備の追加を吸収できない。その結果、値上げされる場合もある。
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