キモとなる「3D高精度地図データ」
日産のプロパイロット2.0の技術的な内容をまとめると、高速道路/自動車専用道路の複数車線での限定的な使用として、ドライバーが介入可能な自動運転の“レベル2”を実現したことだ。
ナビゲーションシステムと連動して設定されたルート上を走行中に、自動的に車線変更と分岐、追い越し時の車線変更を可能とした。これに同一車線内でハンズオフを可能とした。
それではプロパイロット2.0が他社をリードすることになった最大の理由はなにかといえば、日本市場で初採用となった「3D高精度地図データ」を利用していることだ。
日本全国の高速/自動車専用道路の約2万9000kmをカバーするもので、地図製作会社としておなじみのゼンリンが日産に提供した。
この地図データにより、カメラの認識範囲を超えた走行予定の道路の曲率や勾配などを先読みして速度を制御、分岐やIC出口を考慮して適切なレーンを走行するなど、自車位置を高い精度で把握してステアリングの作動などを制御する自動走行を実現した。GPSと併用して自車位置を5cm単位で計測可能としている。
日産はプロパイロット2.0では、車両周囲を認識する従来の「全方位運転支援システム」同様の機能を「360度センシング」と称している。
白線や標識といった道路の標示や周辺車両の状況を、7個のカメラ、5個レーダー、12個のソナーを利用して、自車の全周位で検知。制御は1/100秒単位で実施される。
いっぽうでセンサー技術よりも使い勝手のうえではむしろ重要に思えるのが、車両とドライバーの“対話型”システムとして採用された「インテリジェントインターフェース」だ。
ヘッドアップデイスプレイやメーター内の表示、音声機能などを利用して、たとえば自動走行中に前方に自車よりも速度の遅い車両をシステムが認識した場合には、車両側から車線変更を提案する。
これをドライバーが確認したうえでステアリングに手を添えて、スイッチ操作によってシステムの作動を承認すると、自動的に車線変更を実施する。
ハンズオフ機能はドライバーが責任を負う
日本メーカーとして初の法的認可を受けた同一車線走行時のハンズオフ機能は、前方の注意を含む安全運転義務を負うのはあくまでドライバーであることを前提として高速/自動車専用道路における手放し運転が可能となった。
注意すべきは、走行している道路が対面通行、トンネル内、カーブ、料金所、合流、車線減少の地点およびその手前などでは手放し走行ができないことだ(ハンズオフ機能が停止する区間に入るときは事前に報知)。
日本市場では去る4月に輸入車としてBMWが3シリーズで日産に先んじて、高速道路/自動車専用道路の同一車線内のハンズオフ機能である「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援システム」を与えることを発表したが(車両認可を取得した後、2019年夏以降にBMW3/8シリーズなどの新規導入車種にオプション設定の予定)、あくまで渋滞時に速度域を限定しているので、精密な地図データを必要としなかったことが想像される。
むろん、道路交通法に基づいて、ドライバーには安全運転義務があるから、事故が発生した場合の責任はドライバーにあることは心しておきたい。
この機能を成立させるために、日産はドライバー自身が自動走行に介入可能かどうか、前方への意識を確認する装置として「ドライバーモニター」を用意した。ドライバーの顔の位置をモニターする赤外線センサーをダッシュボード上部に設置。
ドライバーの顔の向きや目の開閉状態を検知して、ドライバーが前方を注視していないと判断した場合に警報を発生する。これにも反応しない場合にはハザードランプを点灯して車両が減速、停止し、自動的に緊急通報センターに接続する。
加えておけば、スバルのフォレスターのハイブリッド仕様「アドバンス」に、「ドライバーモニタリングシステム」を採用している。インストルメントパネル中央のバイザー上部に内蔵されており、同じく顔の表情を認識して警報音や表示によってドライバーに注意喚起を促している。
ちなみに、トヨタは以前に先代レクサスLSなどに採用していたが、現行型では装備していない。いっぽうで、傘下の部品メーカーであるデンソーは緊急停止機能をもつシステムを開発しているから、トヨタ車で復活しても不思議ではない。
日産のプロパイロット2.0は確かに現状では他メーカーから一歩先んじている。
しかし、たった月販目標台数200台のスカイラインだけに搭載するよりも、セレナやノートなどのベストセラーモデルに普及するようにしてもらいたいものだ。
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