自動運転の社会実装に向けた京都府の挑戦
ーー自動運転技術の普及についても、いろいろ施策を打っていると伺いました。
西脇:日本政府は2030年までに自動運転サービスの本格的な普及を掲げていますし、自治体としても早急に社会実装を進めていく必要があります。京都府では、まだレベル2ではありますが、自動運転EVバスの運行実証実験を京田辺市で行うなど、社会実装に向けた取り組みを進めています。
自動運転社会では、複数の(技術レベルの異なる)車両が連携する必要があり、そうなると互いの空間情報を共有しなければなりません。そのうえで、これは「京都モビリティ会議」で一緒に登壇した同志社大学大学院の方のご指摘でもあったように、プライバシーの問題や法整備の必要性もあるんですね。そうしたことを順番に乗り越える必要があります。
ーー法整備や規制緩和、大事ですね。
西脇:行政にまず出来ることというと、ガイドラインを作成することだと思うんです。これは私の以前からの持論なのですが、物事ってルールや枠組み(=ガイドライン)がないと進まないんですよね。「これは守りましょう、あとはそちらでやっていただいて結構ですよ」という枠組みがあったほうが物事って進むんです。自動運転という新しい技術が社会に入ってくる時に、まず行政が枠組みを作ってあげて、その中で企業や研究者の皆さんに開発や進化を進めてもらう。
ーーなるほど。まず規制がないと規制緩和も出来ないですしね。
西脇:そのとおりです。京都府のけいはんな学研都市は、デジタル庁との連携により自動運転車両と配送ロボットの協調運行の実証実験を推進しています。自動運転技術とロボット技術が組み合わさった社会の実現に向けて、技術開発と規制緩和のバランスを取りつつ、早期の社会実装を目指します。
ーーそういう大変な時代に、京都府としてメーカーやユーザー、メディアにお願いしたいこと、「ここをやってくれると助かる」みたいなことってありますか?
西脇:いま仰った中で、「メーカー」というのは我々行政と同じく(新技術の)「供給側」ですよね。「ユーザー」の皆さんは「需要側」で、それぞれ役割が異なると思います。また「供給側」でも「メーカーが出来ること」と「行政が出来ること」と「メーカーと行政が一緒になって出来ること」とカテゴリーが3つあると考えています。
ーーおお、すごく整理された気がします。
西脇:メーカーはやはり安心安全を重視するでしょうし、採算性も大切でしょう。行政は先ほど申し上げたとおりルール作りやインフラ整備などの役割があります。それぞれ役割があって、それを進めるためには、これはやはり双方の話し合いが重要になってくるんですね。お互いに困っていることや要望をすり合わせる必要がある。そうなると、このすり合わせ、コミュニケーションが重要になってきます。
また、「需要側」であるユーザーの皆さんも、たとえば新しい技術の中身を詳しく理解することって難しいと思うんですよ。みんなが専門家ではないし、専門家である必要もない。そうなると新しい技術の説明をして、「こういうふうな仕組みで、広がっていくとこういういいことがあります」と説明する役割があります。
この「メーカーと行政のコミュニケーション」や「ユーザーへ向けた新技術の説明」という役割を、メディアの皆さんにお願いしたいと考えています。
ーーとてもよく整理されていて、分かりやすかったです。
西脇:ありがとうございます。新しい技術っていきなりは理解できないし、普及しないですよね。不安があるでしょうし。一方で、自動車って「パーソナルモビリティ」じゃないですか。これが飛行機や電車だったら、仕組みや運転方法をユーザーの皆さんがいちいち理解する必要はないんですが、自動車の場合は違う。一人ひとりがある程度、仕組みや使い方を理解して納得する必要があります。その理解や納得のための不安を取り除くことを、メディアの皆さんにはがんばってもらいたいです。
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