鈴鹿モータースポーツファン感謝デーレポート 星野一義氏、半世紀ぶりの夢叶う

トークショーでも歴史的な出来事が!?

 トークショーが始まった。最初にレザーのツナギに身を包んだ高橋国光氏と北野元氏が登場。左胸には当時のワークスメンバーの証である”HSC(ホンダスピードクラブ)”のロゴが光る。

 そして最後に星野氏も同じ衣装で登場。さりげなく過ぎた、たった数秒の出来事だったが、これは歴史的な一瞬だった。

 トークショーではいつもの星野節だったが、どうも時折声が震えている。そしてこみ上げる感情を抑えているような様子も何回かあった。

 同席した高橋氏、北野氏への憧れの言葉、そして何度も繰り返したのがこの機会を提供してくれたホンダと日産への感謝の言葉だった。こんな光景を間近で見られたこと、観客にとっても貴重な体験だったと思う。

 また現役当時は家族をサーキットに呼ばなかったという星野氏だが、この日ばかりは家族をサーキットに招いた。半世紀ぶりの夢が叶う瞬間、その瞬間を”日本一速い男”を支えた家族と迎えたい。そんな思いがきっとあったはずだ。

 いよいよ歴史的瞬間が近づいてきた。あのイエローとホワイトの見慣れたカラーリングのヘルメット(こちらも史上初となる星野一義仕様の二輪用ヘルメット)を被る。

 レザーグローブを身につけ、メカニックが最終調整をするRC166を見つめる。時折しゃがみ込み、エギゾーストを聞き入る。集中を高めている様子だった。なんせ目前にあるのは憧れ続けたホンダのワークスマシンだ。

“HSC”のネームが輝かしい特製のツナギ。星野氏がこのツナギを着ることはとてつもない意味を持つ。左から星野一義氏、高橋国光氏、北野元氏
“HSC”のネームが輝かしい特製のツナギ。星野氏がこのツナギを着ることはとてつもない意味を持つ。左から星野一義氏、高橋国光氏、北野元氏
いったいこの時、何を考えていたのだろうか。順位もタイムも関係のない鈴鹿の地でこのマシンに乗れる日が来るとは、きっと星野氏自身も思わなかっただろう
いったいこの時、何を考えていたのだろうか。順位もタイムも関係のない鈴鹿の地でこのマシンに乗れる日が来るとは、きっと星野氏自身も思わなかっただろう

夢が叶った、そして鈴鹿からマン島へ!?

 ツインリンクもてぎにある、ホンダコレクションホールのメカニックたちが暖機を行う。RC166の6気筒エンジンはその咆哮を鈴鹿サーキットに轟かせる。現代に聞いても凄まじいサウンド。星野氏の目つきがキッと変わる。

 いよいよ星野氏がRC166にまたがる、そしてスムーズに走り始めた。憧れだった高橋国光氏、北野元氏、そしてホンダのワークスマシン。東コースを2周して戻って来た星野氏の表情には満足感、そして多くの感謝の念がにじみ出ていた。

 最後に司会のピエール北川氏から感想を求められて「ホンダと契約したから、これからマン島に行ってくるね!!」とひと言。ファンは大歓声でいつもの星野節に賛辞を送った。

 今回の歴史的な出来事の舞台裏にはホンダと日産、そして鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドなど多くの企業と人物が関わっているはずだ。「レジェンドの夢を実現させたい」。その思いを結実させた関係者にも賛辞を送りたい。

 2017年3月4日。モータースポーツの歴史に新たな1ページが追加された。

憧れの先輩二人のスタートを待つ星野氏(右)。6気筒のエギゾーストがスタンドを包み込む
憧れの先輩二人のスタートを待つ星野氏(右)。6気筒のエギゾーストがスタンドを包み込む
そのライディングフォームは美しい。ブランクはあれど、さすがワークスライダーである(写真提供:モビリティランド)
そのライディングフォームは美しい。ブランクはあれど、さすがワークスライダーである(写真提供:モビリティランド)
満面の笑みで「最高!!」と述べた星野氏。本人にとっても、そして多くのファンにとってもきっと忘れられない1日になりそうだ
満面の笑みで「最高!!」と述べた星野氏。本人にとっても、そして多くのファンにとってもきっと忘れられない1日になりそうだ
まるで少年のような笑顔を見せる星野氏。50年越しの夢が叶った!!
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