賛否両論あるがユーザーメリットは大きい
以上のように、bZ4Xが航続可能距離を拡大して値下げを行った背景には「性能と価格の割安度の両方で、新型リーフに勝つこと」もあったはずだ。すくなくとも外部から両車の(前モデルからの)価格変更、性能向上具合、コンセプトの方向性を観察すると、そう見える。
(※上記一文は、新型bZ4Xおよび新型リーフの日程、仕様、コンセプト、日本市場におけるポジション、両社の歴史的開発競争の経緯を踏まえたうえでの、ベストカーWeb編集部および筆者・渡辺陽一郎氏による予測です。トヨタ自動車および日産自動車の開発および商品戦略担当者に直接取材した見解、意見ではないことを注記いたします。2025年10月20日 17:30追記)
この戦略は賛否両論だが、ユーザーのメリットは大きい。bZ4Xが航続可能距離を伸ばして、価格を安く抑える攻撃体制に入れば、新型リーフも応戦に出る。競争が激化すれば、新型リーフとbZ4Xは、ますます高性能に、買い得になっていく。
そしてこのトヨタの戦略は懐かしい! 以前はホンダがワゴン風ミニバンのストリームで人気を高めれば、トヨタはウィッシュで応戦した。日産がエルグランドをヒットさせると、トヨタは初代アルファードを開発している。このような具合に、トヨタは自社製品よりも販売の好調なライバル車の存在を許さなかった。
この戦略でトヨタは、ずいぶん悪口を言われたが、ライバルメーカーに与えた優れた影響も見逃せない。例えば天井を思い切り低く抑えた3代目ホンダオデッセイの開発者は「ここまでの低床プラットフォームは、トヨタも開発できない!」と誇らしげに語った。いい換えれば、ホンダの低床技術はトヨタが鍛え上げたのだ。
昔の怖いトヨタが戻ってくる?
当時のトヨタは、さまざまな日本メーカーから恐れられ、しかし同時に「トヨタに負けるもんか!」と奮起も促し、日本の自動車業界に好ましい緊張感をもたらした。商品力もサービスの水準も高まり、販売も好調だった。
この流れが大きく変わったのは、2008年に発生したリーマンショックだ。トヨタの商品開発でもコスト低減が激しくなり、3代目トヨタヴィッツは「これがトヨタ車なのか!?」と愕然とするほど乗り心地、静粛性、内装などの質を下げた。販売店のセールスマンは「この仕上がりでは、2代目ヴィッツのお客様に、3代目への乗り替えを提案できない」と頭を抱えた。
同時にトヨタは、販売の好調な他社のライバル車を許さない姿勢も薄れさせ、国内の自動車業界では緊張感が緩み、国内販売も急降下した。
この経緯も踏まえると、今回のトヨタbZ4Xの「打倒!リーフ」は、かなりワクワクさせる。もしかすると昔の怖いトヨタが戻ってくるのではないか? そして緊張感の伴う開発競争と販売合戦が始まるのでは? そうなれば昔は絶対に考えられなかった今のトヨタの納期遅延なども、自戒して終息に向かうのか?
「bZ4X対新型リーフ」で激しい競争を!
そもそもトヨタは小型/普通車市場で半数のシェアを持つメーカーなのに、国内で売られるトヨタブランドの電気自動車がbZ4Xのみというのは間違いだ。日本の乗用車市場における電気自動車比率は僅か1.5%で「日本では電気自動車が売れない」「日本のユーザーは電気自動車を買わない」といわれるが、トヨタブランドの電気自動車ですら、bZ4Xだけでは売れなくて当然だ。
まずは「bZ4X対新型リーフ」で激しい競争を展開していただき、電気自動車市場全体の活性化に繋げて欲しい。今のぬるま湯ではダメだ。
そして今は国内で新車として売られるクルマの40%近くを軽自動車が占めるが、この理由も、軽自動車だけは開発と販売面でしっかりと競争しているからだ。電気自動車も頑張って競争して欲しい!
特に電気自動車は、海外メーカーの進出が著しい。国内で新車として売られる電気自動車の約40%を輸入車が占める。このまま安穏としていると、電気自動車を切っ掛けに、日本車の自動車市場が海外メーカーに乗っ取られてしまう心配も生じている。



コメント
コメントの使い方「リーフ潰し」であることは事実だと思いますが、そもそも日本では「EVであること」が「買わない理由」、「減点要素」になるので、そもそも市場にそれほど大きな影響は無い気がします。
一方で、これまでEVと言えばテスラやヒュンダイ、BYDが話題を牽引する流れと流れとなっておりましたが、「日産vsトヨタ」の構図が出来ることで、日本メーカーに主軸が移るので、それは良いことだと思います。