10月8日、日産期待の新型EV、リーフが発表された。ところがその翌日、世間はトヨタの発表に驚愕する。登場したのは改良型bZ4X。なんと航続距離でリーフを上回り、価格も大幅に値下げしてきたのだ。トヨタが意図したのはリーフ潰しか? その真偽と背景をじっくり分析してみた!
文:渡辺陽一郎/写真:トヨタ自動車、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】話題を呼びそうな改良版bZ4Xの姿をじっくり!(23枚)画像ギャラリー航続距離を伸ばして70万円もの値下げ!
最近はクルマの値上げが相次いでいる。2年ほど前に比べると、大幅な改良を実施したわけではないのに、5%前後を値上げした車種も多い。約2年前に車両価格が200万円だったクルマなら、約12万円の値上げが実施されている。
ところが電気自動車のトヨタbZ4Xは、逆に値下げを行った。bZ4Xの改良前の価格は、2WDのGが550万円でZは600万円だったが、改良後はGは70万円安い480万円、Zも50万円下がって550万円だ。値下げ幅を比率に換算すると10%前後に達する。
しかもbZ4Xは、機能を向上させた上で値下げを実施した。Zの2WDは、今は総電力量が74.7kWhのリチウムイオン電池を搭載して、1回の充電によりWLTCモードで746kmを走行できる。従来型に比べて1.3倍に伸びた。このほか急速充電時間も短縮され、走行安定性や乗り心地も向上させている。
販売のテコ入れが求められていたbZ4X
bZ4Xがここまで改良を実施しながら、10%前後の値下げをすることは、通常では考えられない。bZ4Xがこのような思い切った改良を行った背景には複数の理由がある。
まずbZ4Xの販売が低迷していることだ。2022年4月にbZ4Xがリース販売を行うと発表した時、国内で「初年度は5000台分の生産・販売を予定」と公表していた。
ところがbZ4Xの1年間の登録台数は、2022年が350台、2023年は920台、2024年は1010台だ。当初の予定に比べると、圧倒的に売れていない。
ちなみにメーカーの報道発表資料に掲載される販売台数に関する記述は、希望的な数字ではない。いわばビジネス上の公約で、開発費用の償却なども、販売目標台数の上に成り立つ。部品などの調達にも関係する。実際の登録台数が販売予定台数を大幅に下まわると、さまざまな計算が違ってしまうのだ。
bZ4Xの販売不振をほかの車種で補うことは十分に可能だが、販売のテコ入れは実施しなければならない。そこでbZ4Xは、性能を向上させる一方で、大幅な値下げにも踏み切った。
旧型bZ4Xを上回っていた新型リーフの航続距離と価格
bZ4Xが値下げを実施した2つ目の理由は、2025年10月に実施された日産リーフのフルモデルチェンジだ。現在販売されている新型リーフは、駆動用リチウムイオン電池が78kWhに達する上級のB7(駆動方式は前輪駆動の2WDのみ)で、1回の充電によりグレードに応じて670~702kmを走行できる。
以前のbZ4Xでは、1回の充電で走れる距離は512~567kmだった。この航続可能距離では、670~702kmの新型リーフB7に比べて負けてしまう。
それがbZ4Xが改良を受けた後は、ベーシックなGこそ駆動用電池が57.7kWhと小さいために航続可能距離も544kmに留まるが、上級のZ・2WDは、74.7kWhの駆動用電池で航続可能距離が746kmまで拡大した。つまりリーフのフルモデルチェンジに伴う航続可能距離の拡大に応えるべく、bZ4Xも距離を伸ばしたと受け取られる。
同様のことが価格にも当てはまる。新型リーフB7・Xの価格は518万8700円で、B7・Gは599万9400円だ。
改良前のbZ4Xであれば、Gが550万円だから、新型リーフB7・Xの518万8700円よりも高かった。それが今のbZ4X・Gは、480万円に値下げしたから、新型リーフB7・Xよりも安い。
上級のbZ4X・Zは、改良前は600万円だったから、新型リーフB7・Gの599万9400円よりも若干高かった。これも改良後は550万円に下がり、新型リーフB7・Gよりも安価になっている。


























コメント
コメントの使い方「リーフ潰し」であることは事実だと思いますが、そもそも日本では「EVであること」が「買わない理由」、「減点要素」になるので、そもそも市場にそれほど大きな影響は無い気がします。
一方で、これまでEVと言えばテスラやヒュンダイ、BYDが話題を牽引する流れと流れとなっておりましたが、「日産vsトヨタ」の構図が出来ることで、日本メーカーに主軸が移るので、それは良いことだと思います。