スバル吉永社長インタビュー「次の百年のために」

なぜスバルは愛されているのか?

TEXT/鈴木直也

 スバルの世界的な人気ぶりは万人が認めるところ。北米を中心にクルマの在庫が枯渇するほど引っ張りだこだし、日本でもインプレッサがカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、ユーザーから専門家まで幅広い支持を集めている。

 ’17年3月決算では、売上高3・3兆円、経常利益4120億円をマークするなど、会社の業績も申しぶんない。この好調の原因は、いい意味で「変わらなかったこと」だと思う。

 現在のスバルの技術的ルーツは、言うまでもなく1966年デビューのスバル1000だ。伝説的なエンジニア百瀬晋六はてんとう虫として愛されたスバル360の後継として当時ほとんど例がなかった縦置き水平対向のFFというユニークなメカニズムを選択した。

 ただ、率直にいえばこの決断は20年ほど早すぎた。〝エンジニアズドリームカー〟と呼ばれたほど凝ったメカニズムは、「とりあえず乗用車が欲しい」という当時のニーズには高級過ぎたし、スペシャルティカーブームや高級車ブームなど、移り気な日本市場の流行にも乗り切れなかった。初代レガシィが登場するまで、スバルは熱狂的なファンはいるものの、常にマイナーな存在に留まることになる。

 しかし、ついにスバルの魅力に世界が気づく時がやってくる。レガシィが提案したスポーツワゴンというコンセプトは、優れた四駆性能と相まってまずスキーファンのあいだで圧倒的人気を獲得。続いて登場したインプレッサがWRCで大活躍することで、〝水平対向シンメトリカルAWD〟の実力を世界が知ることになる。

 富士重工の業績が最悪だった’80年代、「金ばかりかかる水平対向はヤメたほうがいいんじゃないか?」という議論があった。実際、この頃の富士重工は日産からサニーやパルサーなどを受託生産していたからレオーネの後継が安く作りやすい横置きFFになる可能性もゼロではなかった。

 しかし、そこで安直な横置きFF路線に流れたら、現在までスバルが存在し得たかどうか……。しぶとく踏ん張って初代レガシィの開発を続けたエンジニアたちの情熱と奮闘があったからこそ、現在のスバル人気が花開いたのだと思う。

〝変わらぬ個性〟。これこそ、スバルのような年産100万台クラスのメーカーに最も重要な要素だと思うなぁ。

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