■NSXはスーパーカーか?
実はこのNSXを初めて写真で見せられた時から、そうすばらしいボディスタイルだとは思っていない。
まず、縦横比のバランスがよくない。幅に対して長すぎるのだ。トランクルームを付けたからと言い訳されるが、エンジンを横に置いたのだから、少なくともホイールベースはもっと短くできる。少なくとも2400㎜くらいにすべきだろう。
ちなみにフェラーリ348はV8エンジンを縦に置きながらホイールベースを2450㎜に抑えている。328の時は2350㎜だった(こちらは横だった)。
ボディに凹凸が多いのは、このクルマがフェラーリ328を横目で見ながら企画され、開発されたからだろう。
もし、348を見ていたらこうなっていたろうか。すべては不慣れな、初めてのミドシップということもある。
しかし、私はそうは思わない。NSXのスタイルは、多くのほかの国産車と同じように〝なにか〟に似ていることで、デザイナーも関係者も安心するやり方で育ったとしか思えないのだ。
NSXはどんなスポーツカーだろう。800万円なる価格は高いだろうか、安いだろうか。
私はNSXはスーパーカーではないと思う。スーパーカーというたぐいのクルマは、結局のところイタリアでしかでき得ないのではないだろうか。
スーパーカーをもし定義づけるならば、〝過剰〟だろう。性能もスペックもスタイルも、そのパフォーマンスもすべてが、過ぎたるものでなければならない。そこには合理の正義が大手を振って通れないものがある。
たとえば5L、V12。こいつはエンジンを選ぶためのエンジンだ。スタイルだってそうだ。過剰のうえにも過剰。テスタロッサの、ディアブロのそれを見ればわかる。348にもそれは脈打っている。
これらのスーパーカーと比べればNSXは極めて論理的で理性的だ。むろんそれは実用性につながろう。
NSXは最近、私が感じつつある「最高到達点に近づきつつある国産車」をシンボライズしている。セルシオとこのNSXは、そのメーカーの意気込みを含めてひとつの頂点にあると思う。
正直言って私は、この日本でこんなクルマができるとは思わなかった。技術的にも経営という面から考えても、こういうクルマのゴーサインは出しにくいものだ。
最後に、スポーツカーはまだ可能性を残している。NSXはそれを見事に証明している。〝このカッコ、もうちょっとなんとかならないか〟といいたいNSXの最大の美点はそこにある。
【HONDA NSX】 1990年9月誕生
第二期F1参戦時に作られたフェラーリ328をライバルとしたピュアスポーツ。オールアルミボディを採用し、ミドに搭載された横置きのV6、3ℓはNAながらVTECによって、5MTモデルは自主規制数値一杯の280psを発生。
ニュルブルクリンクサーキットでの走行テストによって開発されたことも革新的だった。発売当時はバブル期ということもあり、納車3年待ちという異常事態も生まれた
◎NSX(5MT)テスト結果
- ・0~400m加速 13.70秒
- ・0~1000m加速 24.91秒
- ・最高速度 266.0㎞/h
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