修理まで1年!?? 異例中の異例・超大規模リコールとタカタ倒産、一般メディアが伝えないカラクリ

 今、自動車業界で一番の話題はタカタの倒産だろう。2017年6月26日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請。負債総額は1兆円を超えるともいわれている。

 それはそれとして、ユーザーからすると「いつになったらリコール対象者を修理してくれるの?」といった肝心な情報は今イチ伝わってこず。

 『タカタ、タカタ』と連呼する報道の前に「リコールって自動車メーカーも費用を負担するはずじゃなかったの?」という疑問も晴れない。

 一連の問題を、一般紙とは違った視点で検証したい。

文:渡辺陽一郎/写真:shutterstock.com


なぜタカタは倒産したのか?

 倒産に至った理由は、タカタ製エアバッグのリコールが1億台という膨大な件数に達したことだ。

 タカタはシートベルトやチャイルドシートなどの製造メーカーとしても知られるが、エアバッグのシェアが高く、生産台数はスウェーデンのオートリブ社に次いで2位にランクされる。生産規模が大きいためにリコール台数も増えた。

 リコールの内容は、エアバッグが展開した時、インフレーター(エアバッグを膨らませるガスを発生させる装置)の作動に伴う圧力が設計値以上に高まり、インフレーターの容器を破損させて金属片が飛散するものだ。

 海外では飛散した金属片が加害性を持ち、死亡事故が発生している。国内でもケガをするケースが生じてリコールに発展した。

リコール対象車は即修理できるわけではない

 問題はタカタの倒産に伴う今後の動向だが、一般の倒産や民事再生法の適用と異なるのはリコールが絡むことだ。

 通常の民事再生であれば、再生計画が立てられ、債権者はその割合に応じて弁済を受けられる。

 実際には債権額に比べると受け取ることの可能な金額が大幅に減って損失が生じるが、手続きはそこで終わると考えていい。

 ところがリコールが絡むと、民事再生法の適用後もリコール作業が継続的に行われて費用負担が生じる。

 前述のようにリコール台数が1億台ともいわれるから、各社ともリコール費用を貸倒引当金(=債権回収ができない可能性のある金額)として計上した。

 私の所有するフォルクスワーゲンポロ(2010年式)にもタカタ製エアバッグが搭載され、2016年末に『リコールに関するお知らせ』が届いた。

 この書面では「タカタ製エアバッグ・インフレータの交換作業を行う」としているが、時期は明記されておらず、問い合わせると「2017年末」とのことだった。

フォルクスワーゲンより届いたタカタ製エアバックリコールに関するお知らせ

タカタ問題は異例!? リコール費用はメーカー負担のケースもあり

 今回のリコールは、タカタが自動車メーカーに供給しているエアバッグに欠陥が生じたので、タカタが話題に取り上げられ、責任の所在とされた。

 しかし大半のリコールにおいては、タカタのような部品やユニットを供給するサプライヤーの社名は挙がらない。

 その意味で今回のリコールは、特殊なケースともいえるだろう。

 もっともメーカーの発表などにサプライヤーの社名が挙がらなくても、内々ではメーカーがサプライヤーに対して損害賠償請求をしている場合はある。

 例えばリヤゲートを開いたのに垂れ下がってしまう、ATなどのユニットが過熱するといったリコールがあった場合、サプライヤーの供給した部品等に問題があれば、自動車メーカーはリコールによって生じた損害をサプライヤーに請求できるからだ。

 タカタは規模が大きく、複数の自動車メーカーに供給していたので、大きく取り上げられた。

タカタ

 いっぽうで、サプライヤーに責任が生じないリコールもある。

 サプライヤーに対するメーカーの発注内容に不具合の原因があったり、エンジンやボディなど、メーカーが製造している箇所に問題が生じれば、それは内々においてもメーカー自身の責任になるからだ。

 今回の件では、リコール通知から一連の報道まで、すべてにおいて「タカタ」という言葉が出てくるが、ユーザーはタカタからエアバッグを購入して取り付けているわけではない。

 タカタ製とオートリブ製をユーザーが選べる自由もないから、エアバッグの製造メーカーがどこかなど、ユーザーにとって知ったことではない。ユーザーから見た時の責任の所在は、タカタではなく自動車メーカーにある。

 私の場合、先の通知では「VWの調査で異常破裂は確認されていない」とされているが、一抹の不安を抱えながら運転している。

 それはVWポロのエアバッグに対する不安であり、タカタ製か否かの問題ではない。この点を取り違えてはダメだ。

 自動車メーカーは、大手マスコミにとっても大切なスポンサーだから、鋒先をタカタに向けることで、メーカーへの批判を弱めようとしているのではないか、などと考えてしまう。

エアバック

リコールの責任をタカタだけに押しつけてはいけない

 リコールの制度は、ユーザーと自動車業界の両方に大きなメリットをもたらす。車両の信頼性に不安が生じた時、その情報を、ユーザーを含めて多くの人達で共有できるからだ。

 従ってリコールを発生させたメーカーなどの当事者を過度に責めてはいけない。リコール隠しに繋がるからだ。

 ただし、タカタのエアバッグに関する報道と世間の反応を見ていると、一抹の不安を感じる。

 ユーザーに対して責任を持つべき製造メーカーの帰責性が曖昧になり、もっぱらサプライヤーのタカタが責められているからだ。

 これでは今後も規模の小さなサプライヤーが社会的な責任を問われ、根本的な帰責性が製造メーカーに生じた時は、リコール隠しが発生しかねない。

 読者諸兄がリコールの通知を受け取った時は、まず内容を正確に把握することが大切になる。

 サプライヤーの社名が出てくることもあるだろうが、あくまでも責任の所在はメーカーにあると考え、安全を最優先して対処していただきたい。

 ご自分の使い方を考えて不安が伴う時は、販売店に代車を要求するなど、対策を講じるのがいいと思う。

 この程度しか対処できないのが実情だ。それだけに自動車メーカーの責任は重い。

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