【ついに到来】 高速道路120km/h時代に必要なもの

■「腹を立てるドライバーが増える」というリスク

 いっぽう、大型トラックのスピードリミッターは90km/hのままであり、速度差が広がり、それだけリスクは高まる――と考えるのが自然ではある。

 しかし私は、それに関しても心配はしていない。今回の引き上げで、大型トラックと一般車両との最高速度差が20km/hから30km/hになるため、新東名の片側3車線区間(上り線2区間、下り線2区間)では、大型トラックなどの通行帯を指定する交通規制が実施され、基本的には一番左側の車線を走らなくてはならなくなる。

 これが忠実に実行されれば、速度差の拡大によるリスクは逆に低くなる。これに関する取り締まりも強化されるだろうから、ある程度の効果は期待できる。

 しかし、はっきり言って渋滞中の脇見や居眠りを除き、低速で走行する大型トラックに追突する乗用車などほとんどない。

 乗用車のブレーキ性能は、その程度の速度差はまったく問題にしないし、反応速度が衰えた高齢者が、最高速度が上がったからといってガンガン飛ばすというのも考えにくい。

 例えばドイツのアウトバーン。速度無制限区間であっても、トレーラーの最高速度は80km/hだ。そこにはものすごい速度差がある。

 あちらでは通行帯規制が厳格なので、トレーラーが追い越し車線に出てくることは滅多にないが、速度差が猛烈に大きいことは間違いない。

 しかし、アウトバーンでの死亡事故発生率は2010年の統計では日本の高速道路とほぼ同水準となっている。

 つまり、最高速度の引き上げで増すリスクは、「特にない」というのが私の予測だが、あえて言うと、追い越し車線に割り込んできたクルマに腹を立てるドライバーが増え、それが原因のトラブルが増加する可能性はある。

■必要なのは「アウトバーン的な姿勢」

 アウトバーンの追い越し車線を走っていると、こちらがかなり飛ばしていてもわりと平気で割り込んでくるクルマが多い。

 それに対して追い越し車線を飛ばしてきたクルマは、激しいパッシング→後ろにぴったりついてアオる→相手のクルマが速やかに車線を譲る、といったことが日常茶飯事なのだ。緊張感は猛烈に高い。

 この緊張感が事故の発生を抑えている面も大いにあるのだが、特筆すべきはそういったことがまったくふつうに行われていて、それを根に持つドライバーはいないということだ。

 つまり、最高速度の引き上げとは無関係に、「失礼だ」とか「ムカついた」とかいった感情を持たず、追い越しのために割り込むのは相手の正当な権利として認識し、それで減速するのはこちらの義務、アオられたら車線を譲りましょうと、アウトバーン的に割り切る姿勢を我々はぜひ持ちたいものである。

☆      ☆      ☆

 速度取り締まりが強化され、トラックと普通車との「走り分け」が進むことで「特に変わらない」という清水氏の予測には説得力があった。

 それだけに文末の(昨今取り沙汰されている)「あおり運転」の恐怖が広まるかもしれない、という予測が恐ろしい。

 制限速度120km/h時代には、ぜひとも120km/h時代なりのマナーと姿勢と心構えも広まってほしい。

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