「いつかはクラウン」という言葉どおり、クラウンは「いつか買いたい」というブランドを確立した高級車だ。
そのクラウンに取って代わるほどの地位を確立したのが、同じくトヨタのアルファード/ヴェルファイア。2017年にはクラウンの約4倍の台数を販売するまでに成長している。
意外かもしれないが、アル/ヴェルの属す高級ミニバンは、かつてトヨタが苦手としたカテゴリーだった。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、TOYOTA、NISSAN
ここ15年で激変したクラウンとアルヴェルの販売台数
かつては憧れの日本車といえばクラウンだった。初代モデルを1955年に発売した高級セダンの代表で、2000年頃までは売れ行きも国内販売の上位に食い込んでいた。
【図表1】は、2002年から2017年までのクラウンとアルファード/ヴェルファイアの年間販売台数。初代アルファードの登場当初は、まだクラウンとの差は少なく、ゼロクラウン発売後の2004年には、クラウンがアルファードを上回った。
それが、2代目アルファードがマイナーチェンジを受けた直後の2012年にはクラウンの約5倍、直近の2017年でも約4倍の販売台数を売り上げるようになった。
こうして今では高級ミニバン=アル/ヴェルのイメージが定着したが、「トヨタには大型ミニバンで苦戦していた歴史がある」と自動車評論家の渡辺陽一郎氏は指摘する。
大型ミニバンで苦戦した“アルヴェル以前”の時代
トヨタは高級セダンに力を入れる半面、Lサイズのミニバンでは苦戦していた。1990年に発売した初代エスティマ、1992年の5ナンバーサイズに抑えたエスティマルシーダ&エミーナは成功したが、1995年のグランビアがいまひとつ伸びないからだ。Lサイズのミニバンで車内も広いが、全体的に地味であった。
そして、1997年に日産が初代エルグランドを発売すると、これが一躍ヒット作になった。
当時のトヨタは今と違って、国内市場に本気で取り組んでいた。売れ行きを伸ばすライバル車は必ず叩き潰す勢いがあった。例えばホンダがストリームを発売すれば、トヨタはウィッシュで対抗。モビリオにはシエンタ、スバル レガシィツーリングワゴンにはカルディナという具合だ。
このような具合だからエルグランドの独走はトヨタにとって許し難く、グランビアとその姉妹車の後継車種として、渾身の開発を行ったのが初代アルファードだった。
発売は2002年5月22日で、2代目エルグランドが発売された翌日だ。「エルグランドよ、お前を潰す!」という非常に分かりやすいアピールだ。
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