「ミニバンのクラウンを」革新的だった初代アルファード
当時は日産の業績が悪化していたこともあり(ルノーとの資本提携は1999年)、エルグランドはプラットフォームを初代から流用。後輪駆動が踏襲されて床が高く、機能は旧態依然としていた。加えてフロントマスクも不評だった。
対するアルファードはフロントマスクを鋭角的に仕上げた。プラットフォームを当時の2代目エスティマと同じく前輪駆動に刷新したから床が下がり、乗降性や居住性も大幅に向上している。インパネなどの内装も上質だ。
販売店はアルファード「G」を現在と同様のトヨペット店、アルファード「V」はトヨタビスタ店(ネッツ店の前身)が扱い、大ヒットさせて販売面でエルグランドを打ち負かした。
すべては「打倒!! エルグランド」から始まっている。この意気込みがアルファードの商品力と販売力を一気に加速させ、2002年の時点でクラウンの登録台数を追い抜いた。
そして、商品開発でアルファードの売れ行きが急増した理由は、まさに「ミニバンのクラウン」を開発したからだ。グランビアの外観と内装は当時のコロナプレミオのレベルだったが、アルファードはクラウンの水準だ。
インパネには光沢を持たせた木目調パネルが装着され、本革シートにはギャザーをあしらって豪華に見せている。フロントマスクもクラウンのメッキグリルを拡大したような形状だ。
しかも価格はV型6気筒3Lエンジンを搭載した上級の「MZ」が345万円になる。クラウンの直列6気筒3Lを搭載する「ロイヤルサルーン」が382万円だったから、ゆったりと広くて豪華なアルファードは魅力的で買い得感も強かった。
厳密に走行安定性や乗り心地を比較すれば、クラウンの方が優れていたが、アルファードでも十分に満足できる。そして室内は圧倒的に広く、2列目に座れば足をゆったりと伸ばしてクラウンの後席よりもリラックスできるから、多くのユーザーにとってアルファードが快適だった。
さらにアルファードであれば大人が不満なく座れる3列目のシートも備わり、実用的な付加価値も抜群に高い。その上で価格がクラウンよりも割安なら、アルファードの売れ行きが勝るのも当然だろう。
求められるクラウン独自の「価値」
このアルファードは2008年に2代目にフルモデルチェンジされた。すでにネッツ店が発足しており、アルファード「V」をヴェルファイアに改称して、フロントマスクも大幅に変えた。それ以来、アルファード&ヴェルファイアの売れ行きは、クラウンを上回り続けている。
問題はクラウンだ。「アルファード&ヴェルファイアでは得られないセダンの価値」をアピールできていない。
セダンはミニバンに比べて重心が低く、後席とトランクスペースの間に隔壁があるからボディ剛性を高めやすい。トランクスペースが張り出した形状は、空気の流れを整える上でも有利だ。
これらのメリットにより、セダンは走行安定性と乗り心地を高めやすい。「安全と快適な乗り心地」がミニバンに対する優位性だ。クラウンはトヨタを支える大黒柱だから、アルファード&ヴェルファイアに負ける車ではない。
この期待は次期クラウンで叶えられると思う。レクサスLSとプラットフォームの基本部分を共通化しており、渾身の開発を行っている。
今のトヨタには、ストリームやレガシィのような敵がいなくなった。闘志を燃やす機会を失い、のんびりと安心して、ちょっと堕落しているのが今の日本国内におけるトヨタだ。
そこに自らカツを入れるのが「次期クラウンVSアルファード&ヴェルファイア」なのだろう。もはや「トヨタの敵はトヨタ」。「伝統のセダンVS成り上がりミニバン」の図式も含めて、妙に滑稽な時代になってきた。皆さんはどう思いますか?
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