半導体危機はどうして起こったのか?
はじめに少し説明したが、今回の半導体危機が発生した原因はいくつかある。まずは新型コロナの流行によって世界各国の半導体工場が生産数減少や業務停止などの状態に追い込まれたこと。スマートフォンを筆頭に半導体素子を使用するデバイスの種類と数は年々増加し、ひとつのデバイスに使われる半導体素子の数も増えている。
ただでさえ以前より需要が高まっていた状況にあって、コロナ禍は完全な向かい風になった。皮肉なことに、コロナ禍による在宅ワークの推進も、半導体素子を利用するパソコンや通信デバイスの需要を高めてしまった。
加えて日本国内の半導体工場であいついで火災が発生し、工場設備が甚大な被害を受けたことも原因といえる。火災による減産の影響は大きく、海外の工場に頼ろうにも、そちらも需要に対して生産が追い付いていない状態が続いているため、国内の自動車産業に回せるだけの余裕はない。これらが国内の自動車生産数停滞を招いてしまっているということになる。
半導体危機はクルマのどこに影響を与える?
結論から書くと“ほぼすべて”だ。以前のクルマは燃料の噴射をキャブレターで行い、ダッシュボードのメーターはアナログ式、もちろんパワステなんてないし、ウィンドウの開閉も搭乗者がハンドルを回して行っていた。つまり、ムカシはクルマを動かすのに電子機器の力を借りる必要はなかった。
だが、現在のクルマを見ると、燃料噴射を含むエンジンのコントロールはECUが行い、ダッシュボードにはデジタル表示が並ぶ。加えて電子制御のパワステが装備され、エアコンもコンピュータが調整。
なかにはサスペンションの制御も電子機器が行うモデルもあり、ABSだってコンピュータが理想的な踏力にアジャストしてくれる。これに加えて前出のカーナビ、ドラレコ、ETCなど“後付け”のデバイスも含めれば、数え切れないほどの電子機器が車体に搭載されている。これらすべてが半導体危機の影響を受けているといっていい。
半導体危機はいつまで続くのか?
現在、新車の多くが納期遅れの問題を抱えている。半導体危機が解消されないかぎり、この問題も解消されない。当然ながら各自動車メーカーもこの問題を放っておくわけはなく、半導体素子の調達方法を変えるなど、さまざまな対策を行っている。
スマートフォンをはじめとする民生用機器での半導体需要もますます高まっている現在、必要な数の半導体素子を確保するのは容易なことではなさそうだ。とはいえ、メーカー関係者に話を聞くと、少しずつではあるが、先の見通しがつきつつあるという。しかし、まだまだ完全解決までは時間がかかりそうとも。
電子化が進んだ現代のクルマは、半導体不足の影響をモロに受け、ドラレコなどの周辺機器も半導体危機による供給減が発生している。エンドユーザーである一般ドライバーがこうした状況に直接介入する手段はなく、半年ともいわれる新車の納期待ちを受け入れることぐらいしかできない。だが、こうした状況が中古車市場の活性化を招いているのも事実で、クルマ業界においてすべてがマイナスということでもない。
幸いなことに、ワクチンの普及などによって世界経済は立ち直りを始めており、半導体危機もいずれ解消されることが予想できる。しかし、実際に解消されるのは2022年以降との予測も多く、もうしばらく時間が必要なようだ。欲しいクルマをすぐに手に入れられる日が来るのを期待しながら待ちたい。
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