ついに超本気を見せてきたトヨタ「2030年にEVを年350万台販売」の背景と実情


■世界の世論が変わったことが後押しに

 それにしても、今回トヨタが社長を筆頭にEV戦略へ力を込める姿を見せようと試みたのはなぜだろう。

 実際これまでトヨタからの発信は、「EVも電動化の道筋のひとつ」という姿勢であり、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)と並列的にEVを扱い、「未来の目標をEVに絞ることは必ずしもカーボンニュートラルに資するわけではない」との見解を明らかにしてきた。トヨタは乗用から商用を含め、また世界各国・各地域に広く新車販売をしているからとの理由だった。

 この記者会見においても、トヨタブランドとして170以上の国と地域へ、約100車種のエンジン車、HV、PHV(トヨタはプラグインハイブリッド車をPHVと呼ぶ)、FCVを投入してきたと豊田社長は成果を披露した。しかしそこにEVの名は出ていない。

 こうしたトヨタのこれまでの姿勢によって、「トヨタはEVに対し後ろ向きではないか」との論調が散見されるようになったわけだ。

 そうした折、2015年12月開催の「パリ協定」では明示されなかった具体策つきの数値目標が、2021年10月末~11月中旬に英国で開催されたCOP(気候変動枠組条約締約国会議)26では、2030年までに温室効果ガスの排出量を45%削減し、2050年までにゼロにする必要があると明記された。これによって温暖化による気温上昇を1.5℃までに抑えることが明記されたのである。

 日本は2030年度までに46%削減するとしたが、一方で、英国が主導して石炭からの脱却を段階的に進めるとした方針に、日本は、中国や米国などと共に署名せず、「化石賞」なる不名誉な称号を(前回に続いて)受賞した。

 これを受けたかたちで、英国BBCは、トヨタMIRAIなど水素への取り組みをワールドニュースのブレイキングニュース(最新ニュース)で採り上げた。

「日本の水素は石炭火力に依存しており、その石炭は中国から輸入されている。さらに液体水素をオーストラリアから輸入する計画があるが、これも石炭から作られ、日本が水素社会を目指すなら今後数十年にわたり石炭を掘り続け、それによる二酸化炭素排出はオーストラリアの排出分になる」、と報道したのだ。

 ライフサイクルによるカーボンニュートラルを標榜し、「国や地域のエネルギー事情にあった環境車という選択肢を提供する」としてきたトヨタの姿勢に横槍が入ったかたちだ。

 現状を踏まえれば、まだ火力発電に依存する日本だが、政府は2030年までに再生可能エネルギーと原子力発電による電源構成比を60%に増やす計画で、これは70%を原子力発電に依存するフランスの排出ゼロに近づく数値だ。

 2030年というEV導入の目標を掲げるうえで、9年後の電源構成比を視野に入れたカーボンニュートラルという取り組みでなければ、世界は納得しないのである。

■章男社長「これまでのトヨタのEVは好きではなかった」

 こうした背景を受け、トヨタは新たな目標を掲げ、さらにレクサスはEVブランドとしていくことが示された。豊田社長もRZというレクサス初のEVにテストコースで実際に試乗し、アクセルを深く踏み込んだところで「別の顔が見えた。いつまでも乗っていたいクルマ」と、感想を述べた(編集部注/会見の質疑応答で豊田章男社長に宛てて「クルマ好き、運転好きとして知られる豊田社長は、EVが好きではないのではないか? 本音のところではどう思っているのか?」という質問があり、章男社長は「これまでのトヨタのEVは好きではなかった、クルマとしてではなくEVとして接していた。しかしこれからのトヨタのEVにはワクワクしている」と語った)。

 2025年までには、全国のトヨタ販売店(国内約5000店舗)に急速充電器を設置することも明らかとなり、トヨタのEV時代がいよいよ動き出しそうだ。

【画像ギャラリー】圧倒的じゃないか……トヨタが世界初公開した15車の新型EVと章男社長のラスボス感(19枚)画像ギャラリー

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