本当の本当に本気なのか? ソニーが電気自動車市場を狙う事情とガチ度

EV開発の原点は新生「aibo」

「何か動くものをつくろう」

 2015年からソニーの取締役副社長兼最高財務責任者(CFO)に就任し平井を支えていた吉田は、構造改革が一定の成果を見せ始めた2016年ごろからAIロボティクスの開発チーム「中長期事業開発部門(現AIロボティクスクビジネスグループ)」に呼びかけた。

 そこから動き出したのが新生「aibo(アイボ)」の開発だった。「AIBO」は1999年、ソニーが開発した犬型ロボットで、ロボットでありながらセンサーで動物のような反応をしたり、内臓ソフトで成長の過程を楽しんだりすることができることから一大ブームを巻き起こしたが、2005年にエレクトロニクス機器部門のリストラ策の中で生産終了した。

 これを開発チームが名前のロゴを「AIBO」から「aibo」に変え、再び開発に取り組んだ。新生aiboの特徴はAIの導入とネットワーキング化されている点だ。

 磨き抜かれたセンサーやAIの活用でより動物に近い存在となり、2018年に発売されると再びヒット商品に返り咲いたのである。それだけではない。実は新生aiboの開発こそEV開発の大きな基礎となっているのである。

 当時社長を務めていた平田一夫は自著「ソニー再生」(日本経済新聞出版)で新生aiboとEVの共通点について「『周辺の状況を正しく認識して自律的に動く』という点ではまったく同じ」だと説明している。さらに重要な共通点が「人に寄り添う」ことだという。

「クルマはハンドルを握るひとの思い通りに動いてくれないと困る。マツダはこの感覚を『人馬一体』と表現して名車ロードスターを生み出したが、それはEVになっても自動運転車になっても同じだろう。『人に寄り添う』という、なんとも定量化したり言語化したりするのが難しい感覚の部分が大切になる。これはアイボもクルマも同じだというわけだ。人と機械が触れ合う際にどうしても生じる違和感のギャップを、ソニーが持つさまざまなテクノロジーで埋めていくのだ」(「ソニー再生」より)

「アップデート」で「レベル4」も可能に

 2018年春からEV「VISON-S」の開発がスタートした。ソニーにとってEVの車体を開発することは初めての経験だったが、車体はオーストリアのマグナ・シュタイアが設計を担当し、基幹部品は独ボッシュ、独コンチネンタル、独ZFと協業してソニーが独自で車体の開発を手掛けた。

 ちなみにマグナ・シュタイアはBMWやトヨタと組んで高級スポーツカーの開発・生産を担当している。

 ソニーは2020年1月、米ラスベガスで開催されたテクノロジー展示会「CES 2020」にEV「VISION-S」を発表した。

ソニーが2020年に公開した「VISION-S」。こういってはなんだが、自動車専門メディアから見てもかなりカッコいい。ただ発表当時は「そうはいってもソニーは本気じゃないんだろうな…」という感じはした
ソニーが2020年に公開した「VISION-S」。こういってはなんだが、自動車専門メディアから見てもかなりカッコいい。ただ発表当時は「そうはいってもソニーは本気じゃないんだろうな…」という感じはした

「VISION-S」は全長4m89cm、スポーツタイプの4人乗りセダンで、フル充電の走行距離は非公表だが、最高時速は240km/h。ディスプレイを最大限に活用できるようダッシュボード全面にタッチディスプレイが設置され、ソフトウエアが制御している。映像や音楽など車内エンターテインメントシステムも搭載されている。

 車内外に搭載された40のセンサーが走行時の安全に目を光らせ、常時ネットワークと連動、快適な車内環境を提供するほか、自動運転に対応しているところが大きな特徴だ。

 自動運転はレベルに応じて0~5までのランク分けされ、「レベル0」が運転自動化なし、「レベル1」が運転支援、「レベル2」が部分運転自動化(ハンズオフ)、「レベル3」が条件付運転自動化(アイズオフ)、「レベル4」が高度運転自動化(ブレインオフ)、「レベル5」が完全運転自動化(ブレインオフ)だ。

「レベル2」ではすでに大手自動車メーカーでも開発が進み、トヨタの「アルファード」「プリウス」、ホンダの「レジェンド」「インサイト」、日産の「リーフ」「デイズ」、スバル「XV」「インプレッサ」、マツダ「アテンザ」「CX-5」などに搭載されているといわれ、「レベル3」は2020年11月に世界ではじめてホンダの「レジェンド」が認可を受けた。

 ソニーの「VISON-S」は「レベル2」の運転に対応し、AIの機能を生かし、ソフトウエアのアップデートにより、「レベル4」に相当する自動運転システムにまで発展することを目指している。

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