100年に1度の大転換期にソニーも重い腰を上げた
実は、発表当初はまだソニーは「VISON-S」の量産化や市販には消極的だった。
しかし台湾の鴻海精密工業が2020年、EV市場に乗り出し、2021年には試作車を披露、米国大手半導体企業のインテルも中国自動車大手の浙江吉利控股集団と共同で完全自動運転のEVの開発計画を発表した。米アップルも参入の機会を虎視眈々と狙っており、世界はまさに「100年に一度」の大転換期を迎えている。
ソニーもただ指をくわえて見ているわけにはいかなくなった。
「当社にとってモビリティーは新しい領域です。貢献するためにはモビリティーを学ぶ必要があり、そうした思いからこれまでVISON‐Sの開発に取り組んできました。そして我々は安全面を支える『セーフティー』、移動空間を感動空間にする『エンタテインメント』、それらの進化を支える『アダプタビリティー』という3つの領域で貢献できるとの実感をもつにいたりました。一方より大きな貢献をするためには、PCやスマートフォンのようにEVそのものに自分自身で取り組むことが重要と考え始めました」(吉田社長)
そのような中で声をかけてきたのがホンダの三部だ。
「三部さんとは何度もお話させていただきましたが、モビリティーの進化にチャレンジしたいという思いを共有できました」(吉田社長)
その後両社の若手で構成されるメンバーでワークショップがスタートした。2021年末には三部と吉田はさらに突っ込んだ協力関係を結ぶことを決断、その後3月までに5回以上の話し合いがもたれた。
ソニーはホンダと提携を進めてる一方で、2022年1月に米ラスベガスのテクノロジー見本市「CES」でSUV(多目的スポーツ車)「VISION-S02」の試作車を発表するとともに、EV事業を推進する新会社「ソニーモビリティ」を設立することを発表した。
ソニーの開発グループは外部からの人材も獲得し、すでにグループの半分以上の人材が自動車業界での経験者となっていたが、新会社の設立は「新しい場」をつくることで新たな挑戦をしたいと思っている人の背中を押すという意味合いが込められている。
「ソニーモビリティ」の社長兼CEOにはEV開発をこれまで主導してきたソニー執行役員の川西泉が4月1日に就任した。ちなみに吉田は取締役会長に就任している。AIロボティクスビジネスグループの事業は9月をめどにここに移管され、aiboやAirpeakの事業もここで一緒に行うことになっている。ホンダと年内に設立が予定されている合弁会社との協業も、ソニーモビリティがソニー側を主導することになる。
EVがけん引する形で、世界の自動車市場は2030年には現在の2倍の600兆円に拡大するといわれている。果たしてソニーはEV市場の新しい旗手として活躍できるのか、成り行きが注目される。
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