ホンダはアライアンスを組まないで生き残れるのか

ホンダはアライアンスを組まないで生き残れるのか

 いまや多くの自動車メーカーがアライアンスと呼ばれる業務提携を組み、互いの技術や人材を生かして生き残りをかけている。

 この流れにずっと逆らって生きているのがホンダである。基本的に他社とのアライアンスは組まず、これまで自動車開発をしてきた。

 「100年の一度の変革期」とも言われるこの時代にホンダは一匹狼のまま生き残れるのか? そしてホンダがアライアンスを組まない理由とはいったい?

文:福田俊之/写真:ホンダ


■本田宗一郎から受け継がれる「他社と同じことはしない」という精神

 男と女の恋愛話のように同棲、結婚、離婚、そして再婚を繰り返しながら、生き残るために従来の概念を超越した“巨大連合”が次々に誕生している自動車業界。

 今や、独立独歩を守っているメーカーのほうが圧倒的に少数派となっているが、そんな中で、相も変わらずに”独身”主義を貫いているのがホンダである。

N-BOXで日本国内での販売台数トップを記録しているホンダ。ホンダの国内販売の約3割はN-BOXが担っている。N-WGNも2019年7月にデビューし、今後もその勢いは続くのか?

 独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタグループなどの巨大連合の多くは年間生産台数の合計が1000万台を軽く超える。それに対してホンダの年間生産台数は500万台レベル。

 もちろん経営へのプレッシャーは年々高まるばかりだが、ホンダが今後も自主路線を保っていくのかどうかが大いに気がかりなところでもある。

 そもそも、なぜホンダはこれだけ独立性にこだわるのか。そのDNAはものづくりに夢と情熱を傾けた創業者の本田宗一郎氏の想いから連綿と受け継がれたものだ。

 ホンダはバイクづくりで成長を収めた後にクルマづくりを始めたメーカーで、日本の四輪車メーカーの中では最後発。

 しかも、自動車メーカーを増やしたくないと考えていた当時の通産省(現・経済産業省)の制止を振り切って四輪に参入したという経緯がある。

 宗一郎氏は最後発のメーカーが他と同じようなことをやっていては成功を収められないという思いを強く持っていた。

 1973年に社長を退任してからも、若手の技術者が「こんなものができました」と報告をすると、宗一郎氏は決まって「ほう、それは他社とどこが違うんだ?」と聞き返した。

 他社と違うものをつくり出す挑戦は、ホンダの原点であり生き甲斐のようなものだった。

初代オデッセイでホンダはミニバンへの道を切り開いた。そしてこのオデッセイこそが他社との提携を突っぱねることができた起死回生の大ヒット作となったのだ

 それゆえ、他社と資本提携するということへのアレルギーは相当なものだった。実は90年代、ホンダが深刻な経営危機に見舞われたときに他社との合併の話が降ってわいたことがあった。

 ホンダと縁の深かった取引銀行で大株主の三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)の主導で、当時四輪駆動車「パジェロ」がバカ売れするなど業績が絶好調だった三菱自動車と経営を統合させられそうになったことがあった。

 ホンダは「三菱自とは社風もものづくりの気質も全然違うため、融和するわけがない」と、その話を懸命に突っぱねた。

 業績が悪いままだといつまでも突っ張りきれるものではなかったが、1994年に発売したミニバン「オデッセイ」が大ヒット。神風が吹いて経営状況が劇的に改善し、三菱自との合併話は立ち消えとなったのである。

■例外的にGMやサプライヤーとの提携をしているが……

 そんな歴史を歩んできたホンダだけに、今でも独立独歩でありたいという思いは非常に強い。

 ただ、ホンダも他企業との提携を頑なに拒み続けているわけでもないが、そのパートナーの大半は自動車以外である。

 たとえばハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)用のモーターを開発製造する会社を日立製作所と、バッテリー分野では電池メーカーのGSユアサと合弁会社を立ち上げたりもしている。

2013年のLAショーに出展されたホンダFCEVコンセプト。水素スタックの小型化などGMとの提携をしている

 AI (人工知能)分野ではソフトバンクとも共同研究を進めている。

 さらに、自動車メーカーで例外的に手を組んでいるのは米ゼネラルモーターズ(GM)だ。

 独自開発には多額の費用がかかるため、まだまだ普及の見込めない燃料電池車(FCV)を共同で研究。

 また、GMの自動運転研究部門に800億円規模の投資を行っている。ただ、これは先端分野の研究開発をシェアするという色合いが強く、稼ぎ頭のクルマを共同開発するという話ではない。

 では、ホンダはこの先も、クルマづくりを巡って他メーカーと巨大連合を組むことはないのだろうか。

 昨今、自動車業界を揺るがせている“100年に一度の大変革期”を迎えた中で呼ばれているのがCASEである。

 すなわち、コネクティビティ(クルマのインターネット接続)、自動運転、シェアリング(クルマの共同使用)、電動化の4分野に対応しながら、ホンダが独自でクルマの開発を続けていくことは簡単ではない。

 「日の丸連合」を標榜するトヨタ自動車が、ホンダにもラブコールを送りながら「仲間づくり」に取り組むのは、単独でCASEに対応するのが難しいという危機感があるからだ。

 今後のメーカー同士の競争の展開次第では、ホンダも他社と本格的に組まざるを得ない時がやって来る可能性は十分にある。

次ページは : ■他社との提携が「ホンダらしさ」を失うとは限らない理由

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