大型トラックで自動運転を実現することの難しさ
乗用車と比べ車体が大きい大型トラックは、道路に対する余裕がないため、制御のすべてが乗用車より高度なレベルが要求される。
三菱ふそうと同じダイムラー傘下の一員であるダイムラートラックでは、大型トラックのレベル2自動運転開発のために世界中で500万kmもの走行テストを行なったそうだ。そこで得られた膨大なデータは、中央の開発部門が自動運転の制御を煮詰めるために使われている。
日本でも三菱ふそうが100万kmの走行テストを実施しており、そのデータは前述のダイムラーの開発部門に送られた。そうしてレベル2の自動運転技術が開発されたのだが、さらに日本の道を走るために三菱ふそうが独自のチューニングを施す必要があったそうだ。
日本の高速道路は欧米と比べ、道路幅が狭く、レーンキープアシストの制御がよりシビアになる上に、歩道橋や電柱などの障害物も、全高が高く車幅も大きい大型トラックでは乗用車よりもセンサーやカメラが反応しやすく、開発当初は苦労したらしい。
それを考えると、大型トラックのドライバーがいかに運転が上手く、長時間の運転で神経をすり減らしているかが分かろうというものだ。
自動運転はできても居眠り運転は防止できない!
高速道路上で起こる大型トラックによる悲惨な交通事故として、渋滞の最後尾に居眠りやわき見運転の大型トラックが突っ込んで玉突き衝突事故を起こすケースがある。レベル2の自動運転が導入されることにより、こうした事故はなくなるのだろうか。
すでに販売されているスーパーグレートでも、メーターカウル部分に組み込まれた赤外線カメラでドライバーの視線や瞬きをモニタリングして居眠りを警告する機能を搭載している。
しかし、警告は単なるブザーと警告灯による表示だけで、それが覚醒を促してくれる効果はそれほど期待できない。休憩する目安としては有効だが、それ以上の効果は望めないのが現状だ。
レベル2の自動運転を搭載しても、この分野の機能は大きくは変わらない。ステアリングを握っていることは、EPSのトルクセンサーによって検知できるが、そのまま居眠りしてしまったら警告は出るものの、それがドライバーを起こす効果は限定的だ。つまり、居眠り運転を防止することはできない。
スカイラインのプロパイロット2.0では、居眠り運転してしまったら路肩にクルマを寄せて停止する機能が盛り込まれているが、スーパーグレートのレベル2ではそういった機能はなく、警告を発しながらも走行を続けてしまうようだ。
その理由の一つに、大きく重い大型トラックでは車線変更などの制御は難しいということがある。
日本での自動運転の開発を統括した、三菱ふそうトラック・バス 開発本部 エンタイヤビークル開発統括部長の恩田実氏によれば、特に乗用車が近付いてくるような状態では、車線変更などの可否やタイミングを判断させるのが極めて難しいそうだ。
ドライバーが操作するのと同様に急ハンドルは横転の危険もあり、さらに大型トラックは高速道路の制限速度は80km/h、また90km/hでスピードリミッターが作動する関係で、乗用車とは速度差があるため車線変更の際、後方から近付いてくる車両を検知して安全に車線変更をさせるのは相当に難しいのである。
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