クルマのシートは運転席、助手席だけでなく、ミニバンのセカンドシートにいたってはベッドのようにフルフラットになるくらい、つまり180度(水平)近くまでリクライニングできるものも多数ある。
フルフラット機能はクルマが停止している休憩中や車中泊の際などに使うもので、クルマが走行中であれば運転席が極端に寝た角度になることはないにせよ、クルマに関心のないユーザーが運転席以外を極端にリクライニングして走行してしまうというケースも考えられなくはない。
そこで気になるのは「ではどのくらいまでならシートはリクライニングして走っても、シートベルトをしたうえでの衝突時の安全性が担保されるのか」という点で、当記事ではメーカーへの取材を中心にこの点を調べてみた。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、HONDA
【画像ギャラリー】快適性よりも安全性を!! 運転中の背もたれはどこまで倒してもいいのか?
■シートのリクライニング角度問題
まず助手席、セカンドシート、サードシートをリクライニングの角度について基本となる取扱説明書を読んでみると、各車「背もたれは必要以上に倒さないでください」と記載されている。また一例としてトヨタアルファードの取扱説明書には、
必要以上に倒しすぎると、事故の時に体がシートベルトの下にもぐり、腹部などに強い圧迫を受けたり肩部ベルトが首にかかるなどして、重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。
と補足されている。その通りであるが、これではあまりに情報に乏しいのでトヨタとホンダに「走行中シートをリクライニングして問題のない限度」を問い合わせてみるとトヨタは、
「取扱説明書の通り、走行中は必要以上に背もたれをリクライニングしないでください」
との回答で、デリケートな問題だけに具体的な範囲を伝えるのも難しいというのも理解できる。
ホンダからは、
「シートベルトが全体的に体に接触している範囲だったら、走行中シートをリクライニングして構いません。
やはりシートベルトが体と接触していないと、衝突時に乗員がシートベルトをすり抜けて車内に潜り込んでしまうサブマリン現象が起きるリスクがありますので。またチャイルドシートを付ける際はシートを一杯に下げて、背もたれはちゃんとした角度で装着してください」
と○○度という角度ではないが、具体的な回答をいただいた。走行中シートをリクライニングしたいならこの範囲にとどめておけば、どのクルマでも大きな間違いはないだろう。
いずれにしても特に最近のミニバンはリクライニングをはじめとしたシートアレンジやエンターテイメント機能が非常に充実していることもあり、部屋のような空間と錯覚してしまうのも分からなくはない。
しかし走行中のクルマは事故に遭う可能性があるあくまでも移動空間であり、乗員全員がシートベルトを装着し正しい姿勢で座るのを基本に、くつろぎたい時もほどほどの範囲にとどめることを今一度認識して欲しい。
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