昔懐かしきカセットテープ……じつは今も健在って、知ってました?

昔懐かしきカセットテープ……じつは今も健在って、知ってました?

 いまでこそスマートフォンをクルマに接続して音楽を聞くのが当たり前の時代だが、スマートフォンはおろかiPodのような「携帯音楽プレーヤー」すらなかった時代にはMDが、MDもなかった時代にはCDやカセットテープが主流だった。

 加えて、CDがいまのように自分で気軽に曲を詰め込めるようになるのにも、CDの登場からだいぶ時を経てのことだったので、「自分の好きなように思い思いの曲を詰め込んでクルマに持ち込む」というと、これはもう長い間カセットテープの独壇場だったのだ。

 鉛筆を突っ込んでクルクル回して巻き戻したこと(若い人はこのフレーズが何を言っているのかまったくわからないと思うがこうとしか書きようがない)レンタルCD店から10枚くらい借りてきてマイベストカセットを作成してここぞのドライブで再生し無限にリピートしたこと…。嗚呼。

 そんなカセットテープ、消滅して久しい…と勝手に思い込んでいたが、じつはまだまだ需要があり、しかも「進化」を続けているのだという。自動車評論家 永田恵一氏にレポートしてもらった。

※本稿は2020年5月のものです
文:永田恵一/写真:MAXWIN(昌騰有限会社)、株式会社ナガオカ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年6月10日号


■今なお根強い人気。車載カセットデッキも進化!!!

 クルマで音楽を聴く際の録音媒体がCD-RやMDといった形のあるデジタル媒体を経て、ダウンロード配信などの形のないものに変わってから相当の年月が経った。

 それだけに現在の20代以下にはダイヤルの電話などと同じように「カセットテープを見たことがない」という人も多くなっているようだ。

 しかし、40代以上の世代だとラジオで流れた曲を録音して自分のオリジナルテープを作るエアチェックや自分が寝ている間に放送された深夜ラジオの録音、レンタルCDのダビングなど、カセットテープのお世話になった人も数多いに違いない。

昔なつかしきカセットテープ。手書きの「Toshinobu Kubota」が泣かせます

 デジタル音声&録音が全盛となっている昨今であるが、そんな時代にあえてカセットテープのメリットを考えてみると、

(1)デジタル音声よりも耳に優しい温かさや柔さかさのある音がする。これはデジタル音声に慣れた今、たまにカセットテープやレコードを聴くと、そう感じる人は少なくないだろう。

(2)録音に音源と同じ時間がかかるというのは音楽カセットの生産元、個人ともにデメリットではある。しかし、その半面もし間違えて上書きした場合、デジタルのデータを消してしまったら取り返しがつかないこともあるのに対し、すぐに気づけば被害が最小限ですむ。

 こんなことを書くとカセットテープやビデオテープには上書き防止のツメがあり、ツメを折ると上書きができなくなり、ツメにテープを貼るとまた上書き可能になったということを懐かしむ人もいることだろう。

(3)録音の際にテープが回っているので、安心感がある(これはICレコーダーなどでタイムカウンターを確認すれば同じではあるが)。

(4)形があるだけに増えると大きなスペースを使うのは事実だが、許容できる範囲であれば形があることが思い出の濃さを際立たせてくれる。

 といったことが浮かび、メリットも意外に多い。

■なぜか英国では近年になってカセット人気が復活!?

 では、日本でカセットテープの現状がどうなっているのかを見てみよう。まず、CDショップなどで販売される音楽カセットテープの生産は2010年の286万6000巻に対し、2019年は33万6000巻と残念ながら右肩下がりとなっている。

 しかし、録音するために使う生カセットテープの販売は1989年の約5億巻がピークだったのに対し、現在は年間約1000万巻と、激減はしているものの、根強い需要があるともいえる。

 これは主に年配層が録音に使うことがそれなりにあるためという理由が大きく、家電量販で生カセットテープやカセットテープが聴けるハードウェアを探すと、確かにまだ選択肢があるくらい販売されている。

 また、海外では英国で2017年くらいからカセットテープが再び注目されて売れ始めており、ここ10年間で英国でのカセットテープの販売量は最高水準となっているという。

次ページは : ■現在のカセットデッキはブルートゥース対応型

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