クルマ好きはなぜ200万円以下、FR、MTという夢を追うのか?

 クルマ好きが思い描く夢のパッケージというのがある。決して大パワーである必要はないし、サーキットでタイムが出るスパルタンなクルマである必要はない。

 しかしシンプルにハンドリングが楽しい「FR」でパワーを余さず使える「MT」、そして手が届く200万円という価格のクルマだ。

 現在販売されているクルマのほとんどが「FF」で高効率の「AT(CVTなども含む)」のため、選択肢がほとんどないのが現実だ。

 それでもクルマ好きがこの夢を捨てきれないのはなぜなのだろうか?

文:鈴木直也/写真:トヨタ、日産、マツダ、ベストカー編集部

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■クルマ好きが憧れるもの

マツダ ロードスター(4代目)

 クルマ好きが数人集まって「こんなクルマがあったらいいよね!」というテーマでおしゃべりすると、定番として出てくるのが

 「200万円台で買えるコンパクトFRスポーツ」というやつだ。

 まぁ、ぼくのまわりでダベっているのが団塊世代のオッサンだからかもしれないが、なんだかやたらとお手軽FRスポーツ熱が高い。

 現実はといえば、FRはおろかFFでもコンパクトスポーツ的なクルマが少なくなっちゃってるわけで、これはクルマ好きとしてはたしかに寂しい。

 次世代を担う若いクルマ好きを育てるためにも、リーズナブル価格のちゃんとしたスポーツカーが必要という意見には大いに賛成だ。

 しかし、この「200万円台で買えるコンパクトFRスポーツ」という商品企画、自動車メーカーにしてみるとけっこうハードルが高い。

 まず、FRパワートレーンが手に入らない。

■FRスポーツで200万円台は難しい

日産 サニー 1200 クーペGX-5スピード( B110型 1972年)

 団塊世代のオッサンが若かった頃はサニーもカローラもFRで、それをベースとしたクーペ仕様に強力なエンジンを積めばお手軽にFRスポーツを造ることができた。

 典型的なのがB110サニークーペやTE27レビン/トレノだ。「70年代の話じゃさすがに古すぎるでしょ」と言うなかれ。この時代から連綿と続くFRパワートレーンを活用して最後に作られたFRスポーツがAE86。

 そう、AE86までは倉庫に埃をかぶったFRパワートレーンのストックがあったわけです。

 もちろん、4~500万円クラスを狙うなら専用のFRパワートレーンを開発すればいいのだが、目標は200万円台。既存のパーツを流用したりしてやりくりしないと、とてもじゃないが300万円以下には収まらない。

トヨタ 86

 そこをなんとか乗り越えて商品化にこぎつけたのが86/BRZとロードスターだが、たぶんコストダウンはこのへんが限界。

 両者ともエントリーモデルはギリギリ260万円くらいからあるが、実質装備を考えると最低ひとつ上のモデルになるから、乗り出し330万くらいの予算が必要となってしまう。

 冒頭の「オッサンのクルマ談義」が、もし200万円ソコソコでFRスポーツが欲しいという意味なら、少なくとも日本じゃムリ。中古の86/BRZを探すべしという結論しかない。

■ヨタ8の再来!?「S-FR」

トヨタ S-FR

 それを象徴するようなクルマが、2015年の東京モーターショーに出展されたトヨタのコンセプトカー「S-FR」だ。

 ショーでベールを脱いだ途端、クルマ好きはこぞって「ヨタ8の再来! 出たら絶対欲しい!」と大絶賛したものだが、それが呆気なくボツったのはおそらくコストの問題。

 S-FRこそ「200万円台前半なら最高だけど300万円超えちゃうと微妙」という典型的な例。

 団塊のオッサンが若かった時代は、こういうコンパクトFRが安く作れる土壌があったけど、現代はFRというだけでプラス100万円くらいの予算が必要。200万円でS-FRというのは見果てぬ夢なのだ。

■憧れと現実

マツダ ロードスター(初代モデル 1989年)

 けっきょくのところ、「お手軽なコンパクトFRがほしい!」という声は、ぼくが思うに団塊世代(とそのひとまわり下くらい)のノスタルジーで、「俺たちの若い頃はみんなスポーツカーに憧れたんだよ!」というグチのような気がする。

 実際にも86/BRZやロードスターのオーナーにはけっこう年配の人が多く、要するにこの手のクルマを買える人は買っちゃってる。

 いろんな事情で買えないオッサンたちが、「もっとお手頃価格で若者にも乗れるFRが欲しいんだよ!」とオダをあげてるわけ。

 ないものねだりをしてるより、中古の86やロードスターに乗ったほうが幸せになれると思うぞ。

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