パンクしても一定の距離をそのまま走れる。そんな特長を持つのが「ランフラットタイヤ」です。このタイヤは、2000年代から徐々に広まり、今ではBMWのようにほとんど全ての新車に標準装着するメーカーもあります。しかし、全体として見ると、まだそれほど普及は広がっていません。
従来のランフラットタイヤは、通常のタイヤと比べて、特に「乗り心地が悪い」といった定評があり、これも普及が進まない理由のひとつでした。
果たしてランフラットタイヤ最大のネガは改善されているのでしょうか? そもそもなぜ、乗り心地が悪くなりやすいのでしょうか。その仕組みと合わせて、最新事情を解説します。
文:斎藤聡/写真:編集部、BMW
レクサスやGT-Rも!? ランフラットタイヤの採用車は?
パンクしてもそのまま走り続けることができるランフラットタイヤ。80km/hで80km走行を続けられるように作られています。
高速道路でパンクしてもそのまま走り続けることができるので、危険な路肩に車を止める必要がないし、日本ではあまり考えられませんが、治安のよくない地域で車を止めるリスクも回避できます。
もともとは軍用車両用に開発されたタイヤということのようですが、乗用車用にも開発が進み、徐々に広がりを見せています。
まだ普及しているというほどではありませんが、案外多くの車が装着しています。BMWはランフラットタイヤを積極的に採用しているメーカーとしてよく知られていますし、同じグループのミニもランフラットタイヤを履いています。
ほかにも、アルファロメオのジュリアや、国産ではレクサスのGS、LC、LS、日産GT-Rもランフラットタイヤを純正装着しています。
そんなランフラットタイヤ一番のデメリットは乗り心地が悪いこと…と言われていました。これは構造的な問題からきていることなんです。
なぜ乗り心地で不利? ランフラットの構造とデメリット
ランフラットタイヤで現在主流になっているのは、サイドサポート型と呼ばれるタイプで、タイヤ側面(サイドウォール部)の内側に補強のゴムをつけて、パンクしてもタイヤが完全につぶれず、そのまま走れるように設計されているんです。その基準が「80km/hで80km走行できること」。
タイヤの側面(内側)に補強用のゴムを盛っているわけですから、タイヤも重くなるし、タイヤのしなやかさも損なわれがちで、一般的なタイヤと比べると、重量面でも乗り心地の面でも不利といえるわけです。
実際、ランフラットタイヤが標準装着された初期の頃は、タイヤの柔軟性があまり感じられずゴトゴト硬い乗り心地でした。また、タイヤが重いため足元が重く、シャープさとか切れ味の良さとかが物足りない感じでした。
特に苦手だったのが、ちょっと大きめの段差を乗り越えるとき。本来ならタイヤがたわんで、そのあと少し遅れてサスペンションが動き出してショックをいなすのですが、タイヤがあまりたわまないので、唐突にサスペンションが動き出し、「ガツン」というショックが出ることがありました。
また、タイヤのたわみだけで路面の凹凸をいなすような小さな凸凹でもタイヤが上下に動いてしまい、ゴツゴツした乗り心地が出てしまう場面もありました。
ハンドルを切り出した時のフィーリングもあまり褒められませんでした。
ハンドルを切り出すと、まずタイヤがたわんで変形し、それから曲がる力が出てくる…という順序になるのですが、ランフラットタイヤは、タイヤがたわんだり変形しにくいので、そのあたりの動きがデジタル的というか、ちょっと唐突な感じになりがち。
といっても大げさに書けばということで、大雑把にはやはり乗り心地の改善が一つのテーマでした。
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