マツダのミドルクラスSUV、CX-60の販売が伸び悩んでいる。発売から7年も経っているCX-5よりも売れていないのだ。CX-60はなぜ売れていないのか、その理由に迫ってみたい。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb編集部、マツダ
【画像ギャラリー】CX-60はこんなにいいのになんで売れないのよ! CX-60とCX-5を写真でチェック!(16枚)画像ギャラリー■マツダの国内販売台数が不振
2024年度上半期(2024年4~9月)におけるマツダの国内販売状況を見ると、昨年度の上半期に比べて22%減った。国内市場全体は3%のマイナスだから、マツダは減り方が大きい。国内市場におけるメーカーの販売ランキングは、上からトヨタ、スズキ、ホンダ、日産、ダイハツと続き、マツダは6位だ。
マツダの国内販売台数が昨年度の上半期に比べて22%減った背景には、複数の理由がある。まずは国内におけるマツダの最多販売車種になるマツダ2の不振だ。
コンパクトカーは売れ筋カテゴリーで、各メーカーとも国内で販売台数を稼ぐ基幹車種を投入するが、マツダ2は2024年度上半期の1か月平均が約2000台に留まった。1か月平均が約2000台の販売実績は、エクストレイルやジムニーシエラと同等で、ルーミーの28%に過ぎない。マツダの国内販売1位がこの台数では辛い。
マツダの国内販売2位は、ミドルサイズSUVのCX-5だ。マツダを支える重要な車種で根強い人気を得ているが、現行型は発売から7年を経て、古さを感じる。そのために前年度の上半期に比べると、国内の売れ行きが20%以上下がった。2024年度上半期の1か月平均は約1600台だ。
マツダの国内販売3位は、コンパクトSUVのCX-30。発売から約5年を経て、これも売れ行きが先細りになった。2024年度上半期の1か月平均は約1100台で、売れ筋カテゴリーのコンパクトSUVでは少ない。シビックを下まわった。
ちなみにマツダでは、先代CX-5を皮切りに、2012年から魂動デザインとスカイアクティブ技術に基づく新世代商品のラインナップを充実させている。これらのマツダ車は、外観がカッコ良く、内装も上質で走行性能も優れている。運転感覚も楽しく、クルマ好きのユーザーから歓迎された。
ところが近年は、前述の通り設計の古い車種が増えた。CX-3も発売から10年近くを経過して、マツダ3も5年以上を経た。設計の古い車種が増えると、売れ行きが伸び悩んで当然だ。特に国内で人気のカテゴリーとされるコンパクトカーのマツダ2、コンパクトSUVのCX-3やCX-30が落ち込むと、マツダの国内販売全体に悪影響を与えてしまう。
そして設計の古い車種だけでなく、CX-60も伸び悩む。発売は2022年9月だから、マツダ車では設計が比較的新しい。それなのに2024年の1か月平均は約600台と少ない。発売時の国内販売目標は1か月当たり2000台だったから、実際の売れ行きは目標の3分の1だ。発売直後の2023年時点でも、1か月平均は2000台弱だから目標を割り込み、2023年はますます低下した。
■CX-60の評判
なぜCX-60は低迷するのか。販売店に尋ねると「乗り心地が硬い、変速ショックが大きいとお客様から指摘され、CX-60の売れ行きにも影響を与えた」という話が聞かれた。
この背景には、SNSの普及も影響しているだろう。購入したり、試乗した人達がSNSで発信すると、情報が幅広く共有される。特にマツダ車に関心を寄せるユーザーには、クルマ好きが多いため、SNSでもクルマ関連の情報を積極的にチェックする。そうなるとCX-60の欠点に関する情報も拡散されやすい。
また乗り心地は、走行中は常にすべての乗員が体で感じている。エンジンの吹き上がりが分かるのはドライバーで、実感するのも峠道や高速道路の進入時に限られるが、乗り心地は違う。したがって売れ行きを左右しやすい。
もうひとつの理由として、乗り心地が小回りの利きや車内の広さと違って感覚に基づくことも挙げられる。味覚にも似て、大勢の人達が「硬い」と指摘しているのを知っていると、自分もなんとなく硬いように感じてしまう。
特に今のクルマは、走りに関係する欠点を見つけにくい。走行安定性が悪かったり、動力性能が著しく低いクルマはほとんどない。そのために欠点の指摘対象が、乗り心地、ステアリングの操舵感、エンジンの回転感覚、トランスミッションの変速ショックなど、感覚的な部分に偏りやすい。その結果、クルマ関連の媒体を含めて、乗り心地が欠点として指摘されやすい。
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