これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、ホンダの歴代ハイブリッドカーと現代の「e:HEV」の礎となったハイブリッドモデル、CR-Zを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/ホンダ
ハイブリッドカーのサンプルとして話題に
発売が2025年秋と分かったことで、新型プレリュードが注目を集めている。新型はスポーツカーでありながらフルハイブリッドカーということで、まさに新時代を象徴するモデルだが、今から約15年前、ホンダの新しいスポーツモデルが物議を醸していた。
それは2010年に誕生したCR-Zである。ホンダ初の量産型ハイブリッドカーである初代インサイトの登場から約10年が経っており、ホンダ独自のハイブリッド「IMA」システムもちょうど熟成の時を迎えていた頃だった。
このモデルを開発するにあたってホンダが掲げたテーマ(価値)のなかに、「Exciting=積極的に走りたくなる」というものがあった。ちょうどF1を撤退していた時期ではあったが、やはりホンダといえば「走り」というイメージを持っている人は多く、その期待に応えたいというホンダの思惑もあったのだろう。
ボディタイプは初代インサイトにも通じる3ドアハッチバック。これは、日常での使い勝手を考慮したハッチバック構造であると同時に、コンパクトで扱いやすさも兼ね備えていたこと、さらに、3ドアというのは都会で1人ないし2人程度で乗るのにちょうどいいサイズ感と、まさに先進性も備えた(当時の)現代型ハイブリッドのサンプルのようなモデルであった。
【画像ギャラリー】ホンダ独創のハイブリッドシステムと先進的で躍動感のあるデザインを融合したCR-Zの写真をもっと見る!(6枚)画像ギャラリー名車へのオマージュが散見されるデザイン
デザインは、車名からして想像されるように、かつてホンダが販売していた名車「CR-X」へのオマージュが見られる。シャープな形状のヘッドライトはキリッとした表情を作り、ルーフは後方へ絞り込まれてスピード感が強調される。そしてリアはストンと切り落とされて、独特な存在感をアピールしている。
もちろん、同じハイブリッドカーである初代インサイトにも共通の、軽快感やクリーンなイメージが感じられる。惜しむらくは初代インサイトのリアタイヤを隠していたスパッツも継承して欲しかったところだが、実用性の部分の制約があって無理だったのだろう。逆にCR-Zのリアフェンダーは張り出して踏ん張り感を強調している。
インテリアは運転席まわりに操作系が集中するスポーツモデルらしい造りで、走りに集中しやすい環境となっていた。デザインはどこか初代インサイトに通じるところもあって、メーターから左右水平方向に計器類がレイアウトされ、高い視認性と機能性を演出している。
【画像ギャラリー】ホンダ独創のハイブリッドシステムと先進的で躍動感のあるデザインを融合したCR-Zの写真をもっと見る!(6枚)画像ギャラリー
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