【AT操作の嘘と本当】完全に停まってからRやPに入れないと壊れるのか!?

アイシン・エィ・ダブリュのエンジニアに直撃!

 さて、本題の「クルマをきちんと停めてRやDに入れないとATは壊れるのか?」という質問に答えてくれたのはアイシン・エィ・ダブリュにて技術本部に勤めるエンジニア。

 アイシン・エィ・ダブリュといえば国内大手のサプライヤーで、ATやCVTといった変速機を手がけているメーカー。業務ではATの設計・開発を携わっているそうで、いわばATの専門家。そんなエンジニアに答えを聞くと、

「ゆっくりとした車庫入れ程度の速度で変速しても壊れるほどヤワではありません(キッパリ)」とのこと!

 では、なぜ壊れないのか? これまで聞かされてきたのは都市伝説だったのか……。

 「AT内部のクラッチおよびブレーキを制御しながら、プラネタリーギアの回転方向を変えてD↔Rのギアチェンジを行なっているので、そんな操作をした程度では壊れません。

 あと、機種によってはある車速以上ではギアチェンジができないような構造になっていますのでまず壊れません。

 世の中にはせっかちなユーザーさんもいらっしゃるので、そういった事象は把握していますし、変速が制限されている機種では基本的にそうした操作をしてもギアチェンジされないようにしています。

 また具体的に何km/hまで変速がOKなのか、うち(アイシン・エィ・ダブリュ)でもそうですし、変速機を納めている自動車メーカーにも基準があります。

 社外秘なので、ちょっと答えにくいですが、一般的には時速40~60kmとかそんな速度ではギアチェンジされないようにしています」という。

 さらに食い下がって、クルマをしっかり停まっていない状態で、DやRに入れるのを長い間繰り返すと、耐久的に問題ないのか、聞いてみた。

 「アクセルを踏まないようなゆっくりとしたギアチェンジの車庫入れであれば大丈夫だと思います。

 そもそもマニュアルミッションのようにリバースギアがあって、クルマが動いている(ギアシャフトが可動している)時に操作すると、そのギアがガチャっと乱暴に噛み込むワケではありません。

 クラッチおよびブレーキを制御しながらギアチェンジを行なっているのと、アクセルを踏まなければATへの入力トルクも小さいのでギアへの負荷というのも小さいと考えています」という。

 さらにCVTも同様なのか聞くと、CVTの開発者ではないと断りを入れつつも「同様だと思います」とのことだった。

プラネタリーギアを構成する3種類のギアは常に固定、あるいはフリー化してかみ合っているのだが、変速(発進時~高速走行時)するときは、写真の矢印部分にあるクラッチやブレーキを設けており、それを使うことで各ギアの変速ショックを滑らかにしているという。クラッチの役目はギアとギアをつないだり離したりしているのに対し、ブレーキはそのギア自身を固定したり離したりしている。それは油圧を使って制御している。ちなみにこのクラッチとブレーキを使って回転方向を切り替える仕組みは20年前から変わっていないという
プラネタリーギアを構成する3種類のギアは常に固定、あるいはフリー化してかみ合っているのだが、変速(発進時~高速走行時)するときは、写真の矢印部分にあるクラッチやブレーキを設けており、それを使うことで各ギアの変速ショックを滑らかにしているという。クラッチの役目はギアとギアをつないだり離したりしているのに対し、ブレーキはそのギア自身を固定したり離したりしている。それは油圧を使って制御している。ちなみにこのクラッチとブレーキを使って回転方向を切り替える仕組みは20年前から変わっていないという

 というわけで、ATはそんなにヤワではないことが今回わかった。とはいうものの、件のエンジニアは「長く乗るのでしたらやはり、キチンと停まってから操作をしていただいた方が良いと思います」とのこと。無理無茶なギアチェンジは禁物ですよ!

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