【マツダ「魂動デザイン」の長所と短所】美しければ売れる? 見飽きないのか?

マツダデザインの長所と短所

 消費者からすればマツダの各モデルが“ほぼ同じように”見えることについて、マツダ自身がどう考えているのだろうかを問う前に、改めて「ほぼ同じデザイン」の良い面と悪い面、それぞれを洗い出してみよう。

2019年7月にマイナーチェンジされたマツダ2。 左が新型マツダ2、右が従来型デミオだ。新型はヘッドライトのデザインがシャープになっているのと、グリルなどのデザインが変更され、スッキリとした印象となっている
2019年7月にマイナーチェンジされたマツダ2。 左が新型マツダ2、右が従来型デミオだ。新型はヘッドライトのデザインがシャープになっているのと、グリルなどのデザインが変更され、スッキリとした印象となっている

■ほぼ同じデザインの長所

1/デザインの統一感

 マツダはフルモデルチェンジしても、多くの欧州メーカーと同じように先代からのイメージを大きく変えることなく引き継いでいる。

 各モデルに「“らしさ”を与え続ける」ブランド戦略を採ることで、ユーザーに所有しているモデルがすぐに古びてしまうことがないという「安心感」をもたらしている。

 どのモデルでも、遠くから見ても、すぐにマツダとわかる、らしさが感じられる。

 正直、欧州車に匹敵、いや超えると思うほど、センスのいいデザインになったと思う。ただ、もう少しヘッドライトやバンパーなどに各モデル独自の個性を持たせてほしい。

2/生命感と動きのあるスタイリング

 チーターなどの野生動物になぞらえて走る姿の躍動感を求めるといったデザイン手法については、自動車、デザイン、アートなど、これまでコメントされ続けているので多くを語るつもりはないが、エクステリアについては「クルマとしての生命感を与える」ことには成功しているといえる。

3/職人気質に基づいた「細部へのこだわり」

 マツダのデザイン全体を統括する執行役員デザイン本部長の前田育男氏は、かつて魂動デザインのスタイリングについて、「複雑な動きの集合体だが、複雑に見せないというところにこだわっている」とコメントしていた。

 ボディ全体としてまとまっているなかで、ボディパネルが微妙に変化していく、そんな細部にこだわるマツダ独特の職人的な頑固さがデザインに表れている。

2015年7月に発売されたCX-3。2018年5月の大幅改良でデザインが変更された
2015年7月に発売されたCX-3。2018年5月の大幅改良でデザインが変更された
2017年2月にデビューしたCX-5
2017年2月にデビューしたCX-5
2017年12月に発売したCX-8

■ほぼ同じデザインの短所

1/フルモデルチェンジしても見た目が大きく変わらない

 同じデザインコンセプトをラインナップ全体に長く施していけば、変化に乏しく新鮮さに欠けるようになってしまうのは致し方ないとはいえ、同じようなスタイリングを採っていても、それでも新型だとひと目でわからなければ意味がない。

 「これ何が変わったの?」という顧客に聞かれるのは、ビジネスの上では問題だ。

 フルモデルチェンジして「変わった」ことに関しては、欧州と日本では考え方がまったく異なる。

 ヨーロッパの人たちは、大きく変わることを望まない。一方、日本人はフルモデルチェンジしてガラッとデザインが変わらないと、購入意欲が湧かないという人も多くいる。

 これは数世紀にわたって維持され続けている欧州の石の文化と、建て替えサイクルの短い日本特有の木の文化に起因するかもしれないが、最近は日本でも「見た目はあまり変わっていないが中身は大きく変わっている」ことにも慣れてきたように思う。

 つまり、マツダは欧州車的なフルモデルチェンジの手法を実践していると言えるのである。毎年何らかの改良を行う年次改良も然りである。

2/ベースの共通性が見え隠れする

 作りやすさとデザインの仕立て方、言い換えればボディ骨格の設計とスタイリングは密接な関係がある。

 各モデルに共通するプラットフォームを与えつつ、モジュラー化(前部、中央フロア、後部をモデルごとに個別に変化可能とした設計手法)によって生産効率を上げる取り組みを、世界中の自動車メーカーが進めている。

 マツダ車でその点が目についてしまうのは、セダン系とSUV系それぞれで、フロント部分でオーバーハングの長さとデザインが“かなり”似通っているからだ。

マシングレーメタリックを採用するマツダ6(旧アテンザ)
マシングレーメタリックを採用するマツダ6(旧アテンザ)

3/テーマカラーを強調しすぎる

 鮮やかな赤の「ソウルレッドクリスタルメタリック(ソウルレッド)」と、後から推しだしてきた深みのあるグレーの「マシーングレープレミアムメタリック」の2本立てで、イメージカラーを成立させている。

 こうした全車種共通で、イメージカラーを同じにするのは、ブランドイメージを統一するという意味では素晴らしい戦略だが、これについてもいささか飽きてきた、と思っているユーザーも多いように思う。

 その一方で、これまで親しみのあった車名を時期をほぼ同じくして、数字を基本とした車名へいきなり(あっさりと言うべきか)変更した。

 海外で使われていた名称とはいえ、デミオ、アクセラ、アテンザの車名をいともあっさりと捨てたのに驚いた諸兄も多かったに違いない。

 数字の車名といえば、ドイツメーカーではかつてのポルシェ、現状ではBMWやフランス勢のプジョーとDSが頭に浮かぶ。

 デザイン、ボディカラー、車名、そしてSKYACTIVをはじめとする先進技術……と、マツダは革命ともいえる進化を果たしてきたが、この期間はたった10年ほどである。ここまでブランドイメージを一気に高めたメーカーがほかにあるだろうか?

 バブル全盛の販売5チャンネル時代、36年にわたるフォードとの資本提携関係、大幅な値引額だが下取り額も極端に安いためマツダ車を買い続けるというマツダ地獄を知る筆者からすると、驚くべき進化である。

 ただ、ブラックカラーのマツダ新世代店舗を通りがかる度に思うのは、イメージカラーを全車ソウルレッドにする必要があるのかと、素人考えながら思ってしまうのである。

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