ひと昔前と現在ではクルマ選びも大きく変わってきています。その典型が安全装備で、今や安全装備はあって当たり前になってきている反面、どんな効果があるものなのか名前だけではわかりづらくなっている。
充実しているからこそのぜいたくな悩みとも言えるが、一般ユーザーにとって非常に厄介なのが、同じ機能なのにメーカーによって名称が異なることが点だろう。
規格を作って同じ名前に統一しようとする動きはあるがいっこうに進んでいない、というのが現状だ。
アルファベットの略称は安全装備だけでなく今の世の中氾濫しているが、これを機に覚えよう!!
文:ベストカーWeb編集部/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU
【画像ギャラリー】注目安全装備を日本で初めて搭載したクルマ列伝
横滑り防止装置

横滑り防止装置は1995年にデビューした2代目トヨタクラウンマジェスタに日本車として初搭載された。
滑りやすい路面やオーバースピードでコーナーに侵入した時など、車両の挙動が乱れた時にABS機能とトラクションコントロール機能を統合して車両を安定させる機能を持っているアクティブセーフティ技術のひとつだ。
では問題です。以下に挙げるのはすべて横滑り防止装置の名称だが、どのメーカーが使っているでしょうか?
■VSA(Vehicle Stability Assist)
■ASC(Activ Stability Control )
■DSC(Dynamic Stability Control)
■VSC(Vehicle Stability Control)
■VDC(Vehicle Dynamics Control)
■ESP(Electronic Stability Program)

正解は国産メーカーに限定すると、VSAはホンダ、ASCは三菱、DSCはマツダ、VSCはトヨタ&ダイハツ、VDCは日産&スバル、ESPはスズキとなる。ダイハツはかつてDVCという独自の名称を使用していたが、現在はトヨタと同じVSCを使用している。
同じ横滑り防止装置でもメーカーによって名称がバラバラで、すべて正解した人はかなりのクルマ通か業界人と思われる。
輸入車もそれぞれが独自の名称を使っているので混乱に拍車をかけている。
実はこの名称の乱立がユーザーを混乱させるといいうことを危惧して、ESC(Electronic Stability Control)の名称で統一しようという動きはあるが、遅々として進まず、今後も統一されることはないと思われる。

横滑り防止装置は国交省が2010年12月に順次搭載を義務付けると発表し、2012年10月以降の新型車に義務付けられたのを皮切りに、2018年2月以降に生産された軽自動車が義務付けになって(トラック、バスなどは2017年2月以降)、2019年12月現在、発売されている乗用車はすべて装着されている。
そういう点を考慮すると、2012年以前に生産されたクルマの場合は、購入時に装着されているかどうか要チェックだ。いろいろ似た略称があるなか、大変だが覚えておこう。
定速走行・車間距離制御装置

衝突被害軽減ブレーキと並んで花形技術として急速に認知された安全装備が定速走行・車間距離制御装置だが、今やACC(アダプティブクルーズコントロール)という名称のほうがピンとくる人も多いはず。
ACCは一定速度で走行が可能なクルーズコントロール機能に車間距離を一定に保つという機能が付加されたものだ。
実はこのACCもメーカーによって以下のとおり異なる名称でカタログなどに表記されているから注意が必要だ。国産8メーカーのみピックアップ
■トヨタ&レクサス:レーダークルーズコントロール
■日産:プロパイロット
■ホンダ:ACC(アダプティブクルーズコントロール)
■マツダ:MRCC(マツダレーダークルーズコントロール)
■スバル:アイサイト
■三菱:e-Assist(イーアシスト)
■スズキ:アクティブクルーズコントロールシステム
■ダイハツ:ACC(アダプティブクルーズコントロール)

汎用の名称であるACCを使っているのは国産メーカーではホンダとダイハツのみで、それぞれが独自の名称を使用している。
カバーする速度域については、全車速域というのが主流になってきているが、購入時にチェックしておきたい。クルーズコントロールと付かない、プロパイロット、e-Assistを覚えておけばOK。ちなみにCCはクルーズコントロールと覚えておけば安心だ。
車線逸脱防止システム

車線逸脱防止システムも一般に認知されてきてて、ACCと併用することで高速道路を走行中の疲労軽減に大きく貢献している。
この安全技術を世界で初めて商品化したのは日産で、2001年にデビューした4代目シーマだった。シーマに搭載されたものはレーンキープサポートシステムという名称で、CCDカメラで車線を認識し、ステアリングアクチュエータで操舵支援するというものだった。
現在の車線逸脱防止システムも基本的には原理は同じだが、シーマが搭載した当時に比べると使える範囲が広くなり、精度も格段に進化している。
今や軽自動車にまで装着されているのは当たり前だし、サポカーの項目にもなっているほど重要視されている。
これまた国産メーカーがそれぞれ違う名称で自らの技術をアピールしている。

■トヨタ&レクサス:LTA(レーントレーシングアシスト)
■日産:インテリジェントLI+LDI(車線逸脱警報)
■ホンダ:LKAS(車線維持支援システム)
■マツダ:LAS(レーンキープアシストシステム)
■スバル:特に名称なし(ステアリング制御:白線認識/先行者認識)
■三菱:LKA(レーンキープアシスト)
■スズキ:特に名称なし(車線逸脱防止機能)
■ダイハツ:LKC(レーンキープコントロール)
特に名称がないのがスバル、スズキで、そのほかはこれまた独自の名称が使われている。
ただ、略称の組み合わせなどがバラバラの横滑り防止装置と違って独自の名称のすべて頭にレーンを示すLが使われているのがポイント。そのあたりをヒントに覚えておこう。
まとめ
横滑り防止装置をはじめ、安全装備は規格ありきで開発されたのではなく、それぞれのメーカーが独自に開発を進め、それぞれが商標登録したから名称がバラバラなのだ。
どこのメーカーが開発してもターボ、4WDといった統一された名称がないのはそんな理由がある。
今後もさらにいろいろな安全装備が登場、進化していくが、これまでどおり自動車メーカーがそれぞれ独自に名称を付けてアピールする、というスタンスは変わらないだろう。
アルファベットの略語というだけで面倒と思わず、これもクルマの進化として覚えていくしかない。