日常の用途で真価を発揮するユーティリティ機能も充実
外観はトヨタが掲げていたデザインフィロソフィである「VIBRANT CLARITY(活き活き・明快)」を体現する「スマート・モダン」をテーマにデザインされ、清潔感と親しみやすさを兼ね備えた造形としていた。アーチ型キャビンと大きくラウンドしたフロントマスクと印象的な張りのある面構成によって、親しみやすさを強調しながら都市空間との調和も意識されている。
インテリアはリビングのような開放感が演出されている。幾何学パターンの表面処理や明快なデザインのシート表皮を採用し、オレンジとアイボリーのツートーン、またはライトブラウンのモノトーンというユニセックスで洗練されたカラーバリエーションを展開。乗る人の性別や年齢を問わず、乗員に快適さと視覚的な安心感を提供する。
空気清浄機能付きのプラズマクラスター搭載エアダクト、肌触りと清潔性に配慮したフレシール加工シートなどの快適装備にも抜かりはない。さらに、大容量マルチボックスやアンブレラホルダーといった収納スペース、スマートドアロックリモートコントロールといった日常使いで真価を発揮するユーティリティ機能も充実している。
ポルテは「生活のパートナー」としての役割を果たす新しいカテゴリーの提案として、使いやすい小型車にとどまらず、車両パッケージングの常識を覆すことで、モビリティの多様化が進みつつあった当時の新車市場において価値ある存在であることを明確に訴求した。

開口幅1020mm、開口高1265mmというクラス随一の大開口設計により、大人の乗り降りはもちろん、チャイルドシートの乗せ降ろしや大きな荷物の出し入れもスムースに行える。キーレスリモコンでも開け閉めでき、雨の日や子どもを抱えての操作にも便利だ
パワーユニットは、1.5Lおよび1.3Lエンジンを設定。優れた出力と燃費性能を両立し、日常走行から高速域まで余裕のあるパフォーマンスを提供する。
組み合わせられるトランスミッションは電子制御4速ATとし、滑らかな加速と効率的な燃焼を促進する。また、熟成されたサスペンション構造と高剛性ボディにより、しっかりとした接地感と快適な乗り心地を両立。コンパクトカーとしての操縦安定性においても完成度の高さが光る。
安全面では、GOA(Global Outstanding Assessment)衝突安全ボディを採用。全方位衝突コンパティビリティ構造により、前後左右の衝突安全性を高めると同時に、歩行者傷害軽減構造も取り入れた設計としていた。
2代目ではキャラクター違いの兄弟車もラインナップ
2012年7月にはフルモデルチェンジを実施して2代目が登場した。コンパクトでありながらミニバン的なユーティリティを備えた「プチバン」というジャンルを確立した初代の特徴を継承しながら、従来のポルテのほかに兄弟車として「スペイド」が新規投入された。
ポルテとスペイドは基本的な車体構造やユーティリティを共有しつつ、デザインと販売チャネルで明確に棲み分けが図られている。外観はいずれも、直線と円弧を融合させた長円形のモチーフ「スクエアオーバル」を各部に採用し、柔らかさと整然さを兼ね備えたフォルムとすることで、視覚的な統一感と安心感を両立している。
ポルテは曲線を多用して柔らかく親しみやすい印象だが、対してスペイドは、フロントまわりをヘッドランプまで連続する水平基調のキャラクターラインと、張り出したヘッドランプおよびバンパーコーナーで構成することで精悍でクールな印象を演出した。
サイドビューでは、ヘッドランプからリアへと繋がるシャープなキャラクターライン上にスライドレールとドアハンドルを一体的に配置し、クリーンでスマートなシルエットを実現した。リアビューには、クリアレンズを採用した水平基調のリアコンビネーションランプと、張りのある立体造形を組み合わせ機能的でクールな後ろ姿を表現している。

ポルテ(スペイド)は、限られたスペースのなかでどれだけ豊かに、便利に、快適に過ごせるかといった問いに真摯に向き合い、日常の動線やライフスタイルを深く読み取り、ユーザー本位の発想をパッケージ全体に落とし込んだ。
その結果、生活空間としてのクルマという新たな定義を提示した。高齢化社会や多様な家族構成といったユーザーの変化に対しポルテのようなユニバーサル・コンパクトの存在は、市場において重要なポジションを担っていた。
しかし、左右非対称の特徴的なデザインは好みが分かれ、利便性の高い助手席側スライドドアに対するニーズはあったもののターゲットがかなり限定的で、同様のプチバンとしてソリオ、コンパクトミニバンのシエンタやフリードといった、汎用性のあるクルマにシェアを奪われてしまう。
そのため2代目以降は存在感が薄れて、後継モデルも登場せずに市場からフェードアウトしてしまう。ミニバンやスーパーハイトワゴンタイプの軽自動車のように万人向けではなかったことが売れ行きに影響したものの、ユーティリティ性能に特化した小型車としての能力はかなりの高レベルにあった唯一無二のクルマである。
コメント
コメントの使い方まったく広がりを見せないまま一代で消えていったのに、市場を確立というのは変だろう。