ホンダ シティは自由な発想と若々しいエネルギーから生まれた新時代のライヴビークル【愛すべき日本の珍車と珍技術】

単なる移動手段以上の体験を提供してくれる高質な室内空間

 車内は「さわやかで、気持ちよく」をテーマに、パッケージングと素材感の両面から、乗員に心地よさを提供する作り込みがなされている。限られたボディサイズのなかで実現された居住空間は、理性的なスペース設計と温かみのある質感素材によって、乗る人の感性との調和を図るという狙いが見て取れる。

 ドライビングポジションはスポーティな走りを意識してあえて低めに設定された。ロー&ワイドな車体フォルムとあいまって、安定感と一体感のある運転感覚を演出する。運転席まわりは運転中の視認性と操作性を重視した設計が随所に見られ、シンプルかつ機能重視のレイアウトを特徴とする。

 特にインパネとドアライニングを一体化させた「ラップラウンド・デザイン」は、視覚的な統一感だけでなく、ドライバーを包み込むような安心感をもたらしてくれる。さらにインパネには大型のフルパッドを採用し、見た目の質感と手触りの良さを両立していた。

 取りまわしのしやすさはコンパクトカーの利点だが、シティでは視界設計においても抜かりない。前方ウインドウには、縦840mm、横1245mm、面積0.87m²という広大なガラスエリアを確保。傾斜角28度のスラントを持たせたうえに、低いボンネットと組み合わせによって優れた前方視認性を確保している。

 さらに、グラスルーフ仕様では、頭上からの自然光を取り込みつつ、サイドウインドウとの連携により全方位的な視認性を高めた。単なるコンパクトカーにとどまらず、上級車種にも通じる質感と機能性を融合させた高質な小型車としての新しい価値を提案した。

大径のアナログ2眼メーターを採用。右にスピードメーター、左にタコメーター、中央に燃料計と水温計を配置したシンプルな構成で、走行中の視認性を優先した設計だ
大径のアナログ2眼メーターを採用。右にスピードメーター、左にタコメーター、中央に燃料計と水温計を配置したシンプルな構成で、走行中の視認性を優先した設計だ

 2代目シティの開発において、「高いポテンシャルと実用性の高次元での両立」は重視されたポイントのひとつだ。

 都市型コンパクトカーとしての使いやすさを損なうことなく、ドライバビリティと性能を徹底的に磨き上げるために、軽量・コンパクトでありながら高出力・高効率を実現するパワーユニットが必要とされた。その回答として誕生したのが、ホンダ独自の1カム・16バルブエンジンだ。

 D12A型直列4気筒SOHCエンジンは、1.2Lクラスとしては異例とも言える出力性能と優れた燃費性能を併せ持つ。その鍵となるのが、1気筒あたり4バルブを備えた高効率燃焼システムと、それを1本のカムシャフトで制御するという革新的な設計思想である。

 それまでDOHC方式が一般的であった4バルブ機構を、ホンダはあえてSOHCで成立させるという大胆なアプローチを採用する。カムシャフトをボア中心に配置し、そこから効率的に吸気・排気の両バルブを駆動する独創的なメカニズムによって、コンパクトな設計ながらも高性能を確保した。

 センタープラグ方式の採用も高性能化に貢献。4バルブ方式の中央にスパークプラグを配置するセンタープラグ方式は、燃焼室内の火炎伝播を最適化し、燃焼のムラを最小限に抑える構造だ。

 これによりエネルギー効率が高まり、出力の向上と燃費の低減を両立。また、排気ガスのクリーン化にも寄与している。このような高度な燃焼設計をコンパクトなSOHC機構で実現した点は、ホンダエンジン開発史のなかでも特筆すべき成果と言えるだろう。

 また、高性能と高効率を追求する一方でホンダは耐久性と整備性にも高い優先度を置いている。エンジンルーム内での作業スペースを確保するために、ユニット全体を徹底的に小型・軽量化し、各部品のレイアウトも見直された。結果として、日常のメンテナンスや整備性にも優れ、長期にわたり安心して使用できる実用性の高いエンジンとなっている。

次ページは : ホンダが蓄積した技術でしなやかな走りを具現化

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