なぜルノー・日産連合は成功できているのか?企業提携の成否の決め手に迫る

なぜルノー・日産連合は成功できているのか?企業提携の成否の決め手に迫る

 自動車業界の歴史を振り返ると、さまざまな提携がこれまで行われてきた。たとえばクライスラーはダイムラーとはダメだったが、フィアットとはとてもいい関係を構築している。

 なぜこのような差が出来るのか。企業提携の成否の決め手はどこにあるのかを考えてみた。

 文:鈴木直也
ベストカー2016年12月10日号


自動車業界の激動はまだまだこれから

 昨年は、日産が三菱を傘下に収め、スズキがトヨタグループに仲間入りというニュースが業界を賑わせた。自動車業界の再編はまだまだ終わっていない、ということだ。

 この種のメガ合併が世界的に大きな話題となったのは20年前のダイムラー・クライスラーの誕生が発端だったと思う。

 落ち目とはいえビッグ3の一角だったクライスラーをベンツがのみ込んで台数の面でも世界トップを目指す。「クルマ業界の競争ルールが変わった!」そういう衝撃があった。

 その後も、1999年には日産がルノーの傘下に入り、2000年には三菱とベンツの提携、2009年にはGMの破産によるスズキ、富士重工、いすゞの独立など、日本のメーカーも関わる激動の時代が続く。

 そして最近のこの動き。激動の時代は実はこれからなのかもしれない。

相手の文化をいかに尊重するか

 何故こういう合従連衡が続くのかというと、中小メーカーには「ある程度の規模がないと生き残れない」という切迫感があるからだ。

 環境、安全、IT、次世代パワーユニットなど、最近はクルマ作りに膨大な資金と人間が必要。スズキみたいな優良企業でも、さすがに厳しくなってきたという事情がある。

 ただ、それはわかるにしても、では合併で台数の規模を大きくすればすべてOKなのかというと、そうはうまくいかない。

 自動車産業は歴史ある企業が多いし、たくさんの人がものづくりに関わるから、会社ごとに独特のカルチャーがある。そういう“文化”を尊重しない相手と組むと、数字では表わせない感情的な軋轢が生まれる。

 そういう文化的な摩擦が“離婚”にまで発展したのがダイムラー・クライスラーだった。あれほど騒がれた世紀の合併も2007年には破綻。

 その後クライスラーは投資ファンドに買われたのち経営破綻。最後はフィアットに拾われ、現在のFCAに至っている。

 面白いのは、経営破綻にまで至ると企業のカルチャーうんぬんも一旦リセットされて、すんなり買収先にのみ込まれること。フィアット・クライスラーとなってからは、両社のコラボレーションはうまくいっているように見受けられる。

Jeepレネゲードはフィアット500Xとの兄弟車。アメリカンテイストだがイタリアで生産される
Jeepレネゲードはフィアット500Xとの兄弟車。アメリカンテイストだがイタリアで生産される

 日本でも、GMのあとVWと資本提携したスズキは、国際仲裁裁判所に提訴までして提携関係を解消した。

 これも、20%のスズキ株を手にしたVWが同社を子会社あつかいしたことからくる対立。独立心旺盛なスズキには、こういう処遇はとうてい容認できなかったわけだ。

 これに対してうまくいっている合併/提携というのは、お互いの文化(とくにものづくりのカルチャー)を尊重して過度に干渉しない関係。その代表例が、ルノー×日産のアライアンス。

 資本面から見れば日産は純然たるルノーの子会社だが、上から目線ではなくパートナーとして処遇。クルマ作りでも日産ウェイを尊重してルノー流を押しつけることをしない。

 カルロス・ゴーンというカリスマ経営者がトップにいるという事実も重要だけど、これが両社のパフォーマンスをうまく引き出しているように見える。

 スズキや富士重工がトヨタグループに参加したのも同じ理由。トヨタは異なるカルチャーの会社を一緒にしても絶対うまくいかないという信念を持っているから、“結婚”はせず“同棲”関係にとどめる会社。これが相手側にも居心地がいいのだ。

 海外でも、インド資本傘下に入ったジャガー・ランドローバーや、中国資本傘下のボルボなども、クルマの開発/生産はこれまでどおり。そのためか、むしろ海外資本傘下となってからのほうが元気がいい。

 やっぱり、人間も会社も同じ。ヤル気を引き出すには、押しつけより自主性尊重なんですね?

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