新型フィット&ヤリスが燃費競争を「降りた」理由  もう狂騒は終わったのか?

エコカー減税が燃費競争を助長した

2017年5月に登場したミライースは燃費競争をやめたクルマとして記憶に残る1台。2014年に発売された(ミライースの)ライバル車である現行アルトはJC08モード燃費が37㎞/L。当初(デビュー前)、新型ミライースはこの数値を超えると予想された。ところがデビュー後にカタログ資料を見てみると、車両重量を80kgも軽量化しながら、燃費数値は先代型と同じ35.2km/Lだった。上級グレードのG”SAIII”、X”AIII”は34.2km/Lに低下。開発者は「先代型はJC08モード燃費を追求した結果、動力性能と実用燃費が悪化した。新型はこの点を改めた」という
2017年5月に登場したミライースは燃費競争をやめたクルマとして記憶に残る1台。2014年に発売された(ミライースの)ライバル車である現行アルトはJC08モード燃費が37㎞/L。当初(デビュー前)、新型ミライースはこの数値を超えると予想された。ところがデビュー後にカタログ資料を見てみると、車両重量を80kgも軽量化しながら、燃費数値は先代型と同じ35.2km/Lだった。上級グレードのG”SAIII”、X”AIII”は34.2km/Lに低下。開発者は「先代型はJC08モード燃費を追求した結果、動力性能と実用燃費が悪化した。新型はこの点を改めた」という

 いわゆる燃費競争が激しかった時代は、2010~2015年頃だ。この背景にはエコカー減税の実施があった。

 当時は2010年度燃費基準の達成度合いに応じて、購入時に納める自動車取得税と自動車重量税を、50%・75%・100%(免税)の3段階で軽減した。

 減税率の格差が大きく、しかも目新しい制度であったため、「エコカー減税に該当すること」がクルマを選ぶ時の条件になった。

 一種の流行で、特に軽自動車は同じパワーユニットを使った車種を豊富に用意するから、段階的に燃費数値を高めていった。

 例えばスズキの場合、2011年3月にMRワゴンのJC08モード燃費が27.0km/Lになり、2012年2月にはMRワゴン・エコを追加して27.2km/Lに向上させた。

 2012年9月にはワゴンRが改良して28.8km/L、2013年7月には再びワゴンRが改良して30km/L、2014年8月にはワゴンRがFZを追加して32.4km/Lという具合だ。

 この間にムーヴやミライースも改良を受けて、競争しながら燃費数値を向上させ、ひとつの車種が1年間に数回、燃費数値を更新していた。

 この頃にダイハツの販売店からは、次のような話が聞かれた。

 「JC08モード燃費の数値がライバル車に比べて0.5km/L負けると、エコカー減税率が下がることもあり、売れ行きにも差が付く。

 燃費の良いクルマは、購入時の税額と購入後のガソリン代が両方とも安くなるから、お客様も魅力を感じる。

 特に軽自動車は、ボディサイズとエンジン排気量は全車共通で、背の高い車種は外観や車内の広さも似ている。

 お客様にとって違いが分かりにくく、燃費数値、エコカー減税による税金の安さ、メーカーが軽自動車の販売1位か否か、といったことが重要になる」とコメントした。

 ところがこの後、ユーザーから「カタログやウェブサイトに記載される燃費数値と、実際の燃費が全然違う」という批判が寄せられるようになる。

 最近はブログやツィッターもあるから、カタログ数値と実走行の燃費に大きな隔たりがあると、その情報が簡単に広がってしまう。

 その一方で2013年以降になると、ユーザーの関心は、燃費数値から衝突被害軽減ブレーキに移っていく。販売店からは「ぶつからないクルマはどれですか? という質問を受けるようになった」という声も聞かれた。

 つまり燃費数値にこだわって選んだものの、実用燃費は大きく異なり、各車種とも燃費競争を重ねると数値の差も縮まってくる(当然だが燃費数値を無限に向上することはできない)。

 新たに登場した衝突被害軽減ブレーキは、初期段階では装着車と非装着車に分けられ、歩行者の検知性能にも差が生じた。

 こういった事情から、ユーザーの関心は衝突被害軽減ブレーキに移り、燃費数値の0.5km/Lにこだわるユーザーは減っていった。

次ページは : JC08モード燃費に代わりWLTCモードに移行

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