NISMO 400Rは超希少種となるべく生まれた、GT-R史に名を轟かせる最強コンプリートカー【愛すべき日本の珍車と珍技術】

ドライバーが意のままに操れる伝達機構

 動力の伝達を担う駆動系も新開発ツインプレートクラッチを採用して強化された。一般的なチューニングカーなどで使わるツインプレートクラッチは、トルク伝達能力は高いが、ペダルが重く、半クラッチ操作が難しくなるため街乗りには不向きだった。

 しかし400Rのクラッチは違う。強化品でありながらノーマル同等の軽い踏力で半クラッチ操作もスムースに行えるので、日常の走行でも「意のままに操れる」感覚が味わえた。

 駆動系のもう一つの注目点が、カーボン製プロペラシャフトの採用だ。素材にカーボンファイバーを採用したことで従来のスチール製に比べて大幅な軽量化を実現し、慣性モーメントを約40%低減。これにより加速性能の向上と高い安定性を両立させている。もちろん強度・耐久性についても妥協はなく、ハードなスポーツ走行にも耐えうる仕様だ。

 足まわりはR33 GT-Rの基本構造を受け継ぎつつ、400馬力の高出力エンジンと超ワイドな275サイズのタイヤとのマッチングを考慮したセットアップが施されている。専用コイルスプリングとビルシュタイン製ショックアブソーバーの組み合わせをはじめ、マウント部にはすべて強化ブッシュを用いることで、スポーツ走行に不可欠なダイレクトな操縦フィールを獲得した。

 さらにフロントには適切なキャンバー角を与える専用リンクを採用し、剛性の高いチタン製ストラットタワーバーを追加。これにより、信頼性とシャープなハンドリングが両立されている。

 速く走る以上に重要なのが確実に止まる性能だ。ブレーキはパッドそのものを専用仕様へ変更。さらにペダルに込めた力を正確にパッドへ伝えるため、シリンダーの前後方向のブレを抑えて剛性感のあるペダルフィールを実現するマスターシリンダーストッパーも備えた。

 こうした走りの根幹を支える部分に強化を施したことも、400Rが「単なるハイパワーGT-R」ではなく、「ドライバーの意志に応える完成度の高いマシン」として評価される理由である。

運転席まわりはφ360mmの専用ステアリングをはじめ、すべての装備が「わかりやすく、操作しやすい」という原則に基づいて作られている。ステアリングセンターにはオリジナルのカーボン調ホーンボタンを備え、視覚的にも400Rであることをアピール
運転席まわりはφ360mmの専用ステアリングをはじめ、すべての装備が「わかりやすく、操作しやすい」という原則に基づいて作られている。ステアリングセンターにはオリジナルのカーボン調ホーンボタンを備え、視覚的にも400Rであることをアピール

 400Rとは、スカイラインGT-Rをベースに、NISMOがレースで培った経験とスポーツオプション開発のノウハウを惜しみなく注ぎ込んで作り上げた、GT-Rファンに捧げる究極の1台である。

 しかし、その存在意義は単なるハイパワーを誇示することではない。街なかからワインディング、そしてサーキットまで、あらゆるシーンでドライバーの存在を余すことなく引き出す。この思想こそが400Rの真髄だ。

 1997年のデビューから数えて、すでに28年。わずか99台のみ生産された400Rは、いまや“伝説”として語り継がれている。中古市場においてはオークションで1億円台後半から億超えの落札例があり、展示や輸入販売では数億円に達するケースもある。その希少性と象徴性は、もはや「国宝級」と表現しても過言ではない。

 400Rは今や、単なるクルマの枠を超え、真のコレクターズアイテムとして存在している。価格以上に、GT-Rというブランドとモータースポーツの歴史を凝縮した“象徴”であることにこそ、その価値があるのだ。

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