C-HRの長所と短所
2019年にかつて大幅にリードしたヴェゼルを下まわった背景には、C-HRの実用性も影響した。これがC₋HR最大の短所になるだろう。
SUVが好調に売れるのは、外観の迫力とカッコ良さに加えてワゴンの居住性や積載性も備わるためだが、C-HRは後者の実用性が低いのだ。つまりカッコ優先ということだ。
そのために燃料タンクを前席の下に設置して後席のスペースと荷室容量を拡大したヴェゼルに比べると、人気の持続力も低くなってしまう。
実用的なヴェゼルには、車検期間満了が近付くと購入するユーザーが多いから一定の台数を淡々と売るが、C-HRは落ち込む。
具体的に両車の実用性を比べると、身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間はヴェゼルが握りコブシ2つ半、C-HRは握りコブシ1つ半だ。
しかもC-HRは後席のサイドウインドウが狭いので、閉鎖感が強まってしまう。SUVには子育てを終えて3列シートミニバンから乗り替えるユーザーも多く、車内の開放感が大切だが、C-HRの後席はクーペに近い雰囲気だ。
C-HRはリアゲートの角度を寝かせたから背の高い荷物も積みにくく、居住性と積載性は、2013年に登場した設計の古いヴェゼルが格段に優れている。
C-HRは外観が個性的な代わりに後方視界も悪い。サイドウインドウが狭く、ボディ後端のピラー(柱)も太いから、斜め後方はほとんど見えない。
そうなると駐車場から後退しながら出庫する時など、後ろの様子を映すモニターに頼るが、視野が狭いために左右から急速に接近する自転車などは分かりにくい。トヨタの視界に関する社内基準も辛うじてパスしたという。
ここまで視界が悪いと、運転のしやすさだけでなく安全性も阻害する。外観に強い魅力を感じないユーザーは、C-HRのボディ形状を大きな欠点と受け取ってしまう。
C₋HRの長所は?
一方、C-HRの長所は走行安定性だ。SUVでは天井が低めで、2WDの全高は1550mmだから立体駐車場も利用しやすい。
低重心になり、プリウスから採用を開始したTNGAの考え方に基づくプラットフォームも熟成が進んだ。そのために操舵に対して車両の向きが自然に変わり、後輪の接地感など安定性も優れている。
これらの相乗効果で、C-HRでは運転の楽しさを味わえる。背の低いクーペなどに比べると、同じカーブを同じ速度で曲がっても、C-HRはボディの傾き方が少し大きい。
この挙動変化を穏やかに仕上げた結果、C-HRには低重心のクルマでは得られない操る感覚が生まれた。
1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドはプリウスと基本的に同じで、GとSのWLTCモード燃費は25.8km/L、JC08モード燃費は30.4km/Lと良好だ。加速感は滑らかでノイズも抑えた。
以上のようにC-HRは、ヴェゼルに比べると後席と荷室は狭いが、ドライバー優先の設計で運転感覚は楽しい。
■「トヨタ C-HR GR SPORT」のポイント
・フロア下にフロアセンターブレースを追加しボディ剛性を強化。操舵応答性が向上
・足回りを専用チューニングしてフラットな乗り心地とスポーティな走りを両立
・専用19インチタイヤ
・GR SPORT専用のアグレッシブなエクステリア、インテリア
・インテリジェントマニュアルトランスミッション(iMT)を1.2LターボとGRスポーツに設定
しかも 6速iMTが設定されたことはクルマ好きにとっては朗報だ。カッコ優先ではなく、本格的なスポーツ走行が楽しめるからだ。
iMTとはインテリジェント・マニュアルトランスミッションの略で、トヨタとアイシンエーアイが共同開発したもので、MTが苦手だという人に配慮されている点が嬉しい。
発進時にエンストしないよう補助してくれる発進アシスト機能やシフトダウン時に自動的にエンジン回転数を合わせる自動ブリッピング機能を備えていることが特徴だ
C-HRはカローラスポーツと違い、iMT専用SWを押すとiMTがスタンバイ状態になる。SPORTSモードで、iMTがスタンバイになるわけではない。また、発進アシスト機能はすべてのドライブモードで作動。
発進時のクラッチ操作を検出し、エンジン出力を最適に調整(トルクアップ)することでクラッチのみでの発進操作をよりスムーズに行えるようにしている。
販売店の試乗車を使ってこの2車種を乗り比べると、こうしたC-HRの長所が一層良く分かるだろう。後席と荷室をチェックして、縦列駐車や車庫入れも行い、購入の判断をするといい。
■C-HRの価格とラインナップ
●1.2Lターボ
◆S-T 2WD(スーパーCVT-i)=240万円、 S-T 2WD(6速iMT)=236万7000円、4WD(スーパーCVT-i)=259万8000円
◆G-T 2WD(スーパーCVT-i)=266万5000円、 G-T 2WD(6速iMT)=263万2000円、4WD(スーパーCVT-i)=286万3000円
◆S-T ”GR SPORTS” 2WD(6速iMT)=273万2000円
●1.8L、THSIIハイブリッド
◆S 2WD=273万円
◆G 2WD=299万5000円
◆S ”GR SPORTS” 2WD=309万5000円
※G系とGR系の価格差はS-T・ハイブリッドともに10万円となっている
■C-HR G(ハイブリッド)主要諸元
全長4385×全幅1795×全高1550mm
ホイールベース:2640mm
エンジン:1797㏄直4
エンジン最高出力:98ps/5700rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm/3600rpm
モーター最高出力:72ps
モーター最大トルク:16.6kgm
トランスミッション:電気式無断変速機
WLTCモード燃費:25.8km/L
市街地モード:24.7km/L
郊外モード:28.6km/L
高速道路モード:24.6km/L
JC08モード燃費:30.4km/L
価格: 299万5000円
■C-HR S-T 主要諸元
全長4385×全幅1795×全高1550mm
ホイールベース:2640mm
エンジン:1196㏄直4ターボ
最高出力:116ps/5200~5700rpm
最大トルク:18.9kgm/1500~4000
トランスミッション:6速iMT
WLTCモード燃費:15.4km/L
市街地モード:12.2km/L
郊外モード:15.6km/L
高速道路モード:17.2km/L
JC08モード燃費:15.2km/L
価格:236万7000円
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