マーチ ジェイド RVR… 販売低迷でも「光るところ」があるクルマを褒める 8選

 よければホメるし、悪ければダメと指摘するのはあたり前。しかし、あえてここではダメ出しNGの「ホメるの限定」インプレッションで8車を紹介。

 本企画に登場するクルマは、いずれも新車販売市場で苦戦しており、2020年1月の月販台数では多いものでも約400 台、少ないものだと17台という大変な状況である(同月の新車販売台数トップはホンダN-BOXの18,953台)。

 人気イマイチであまり売れていないモデルばかりだが、ホメるのオンリーで評価するとどんなインプレッションになる?

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※本稿は2020年3月のものです
文:岡本幸一郎、渡辺陽一郎、清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年4月10日号


■かつては国産コンパクトの代表だったが 日産 マーチ(2020年1月販売台数:649台)

(TEXT/清水草一)

●ボタン類が大きくてわかりやすいやさしいクルマ

2010年登場。価格117万2600~187万6600円。1.2L直3エンジン搭載。1.5LのニスモSもあり

 マーチは万人にやさしいクルマだ。例えればラクラクホンのようなものである。

 例えばインパネのボタン類。どれもこれも大きくて丸っこくて、大変わかりやすい。そもそもボタン類が少ないのもイイ。なぜこういうクルマがほかにあまり出てこないのだろう?

 狂ったようにボタンやらつまみやらを並べまくったり、ピアノの鍵盤のようにしたり、果てはグルグル回したり押したり引いたり斜めにしたりして3億とおりくらいの操作を可能にしたクルマもあるが、そんな複雑なこと、運転しながらできると思っているのか。

 ウチの奥さんなんか、運転中は視線を前方から1mmも動かせないのに、いったい何をどうせよと言うのか。マーチを見習え! マーチのボタンならおっきいので見なくても操作できる(かも)。クルマってのはこうでなくちゃいけない!

 マーチは外観もいい。とにかく人に危害を加えそうにない感じがステキだ。インテリアも同様。保育園や老人介護施設のようなやさしさに満ちている。ああ、このままここで暮らしたい、ここで一生を終えたいという気持ちになってくる。走らなくたっていいとすら思えてくる。

 なのにマーチはちゃんと走ってくれるのだ。アクセルを踏めば加速し、ブレーキを踏めば止まり、ハンドルを切れば曲がる。ああ、なんて素晴らしいんだろう! アクセルを踏むとブーンというのも、わかりやすくてイイです。

■ミニバンかワゴンかどっちつかず!? ホンダ ジェイド(2020年1月販売台数:187台)

(TEXT/岡本幸一郎)

●車高が低いのに3列シート、使い勝手のいい万能選手!

2015年登場。価格244万3100~314万6000円。1.5Lハイブリッド、1.5Lターボを搭載

 シビックを延ばしたワゴンのようなルックスは一見するとシートが3列あるようには見えないが、かぎりある空間を最大限に活用して、1列目に“セダン”、2列目に“リムジン”、3列目に“フレキシブル”とそれぞれテーマが与えられている。

 なかでもV字型に170mm前後スライドできる2列目は画期的アイデア。一番後ろにするとリムジンのように足元が広々とするのはインパクト満点! 気分はもうちょっとしたVIPだ。このクラスでこんな体験のできるクルマなんてほかに心当たりがない。

 3列目もいざとなればちゃんと役に立ってくれる。これを「狭い」なんて言うほうが野暮というものだ。ジェイドはこれでよい。しかも3列目はいらないという人のために、のちに2列シート5人乗り仕様まで追加するという周到ぶりだ。

 車高が低いのでフラつきが小さく走りが安定していて乗り心地も快適そのもの。このクラスの日本車としては珍しくデュアルピニオン式を採用した凝った電動パワステのフィーリングも上々だ。特に専用の足回りにホンダ得意のアジャイルハンドリングアシストを加えたRSの爽快な走りはスポーツカー並みだ。

 燃費のよいハイブリッドにパワフルな直噴ターボと、それぞれわかりやすく期待に応える2種類の選択肢が用意されているのもうれしい。

 使い勝手のよい車高の低いクルマを求める人にもってこい。実はかなりの万能選手だ。

■エクリプスクロスの影に隠れて 三菱 RVR(2020年1月販売台数:193台)

(TEXT/岡本幸一郎)

●デビューから10年の熟成したよさあり!

2010年登場。価格214万3900~255万5300円。1.8L直4エンジン搭載。4WDのみの設定

 実はRVRというのは、生まれながらにして、“先見の明”のカタマリのような存在だ。まだ背高パッケージやスライドドアが珍しい頃に出てプチヒットした初代は、SUVテイストのスポーツギアまで早くもラインナップしていたことにビックリ。

 しばしのインターバルののち復活した3代目も、今まさに人気カテゴリーであるコンパクトSUVに変貌を遂げて、いちはやく世に現れたのだから恐るべしだ。

 その3代目も10年選手の長寿モデルとなってきたが、スマホへの対応強化やサポカーSワイドに該当させるなど時代のニーズに合わせてしっかり進化しているところも偉い。

 去年の一部改良で「ダイナミックシールド」をさらに発展させたルックスも、もはや同じクルマとは思えないほど雰囲気が変わって立派に見えるようになった。ボディサイズは同じなのに車格が上がったように見えるほど。デザイナー氏、グッドジョブ! だ。

 取り回しのよいコンパクトなサイズが日本の道路事情でも扱いやすいのはいうまでもなし。それでいて車内は狭くなく、後席の居住性もトランクの広さも申しぶんなし。広大なパノラマガラスルーフのおかげで開放感も抜群だ。

 乗り心地もいたって快適で特に気になるところもない。雪上での高い走破性もさすがは三菱。発売から時間が経過したぶん、あらゆる部分が熟成されてこなれた印象だ。

■高級車として存在感が薄い!? ホンダ レジェンド(2020年1月販売台数:17台)

(TEXT/岡本幸一郎)

2014年登場。価格720万5000円。後輪のふたつのモーターでも駆動する4WDの3.5L HV搭載

●個性的なエクステリアで特別感があり、走りもいい!

 日本ではすっかりセダンの市場が縮小しているが、ホンダではセダンのラインナップが充実している。なかでも最上位のレジェンドは、世の高級セダンのなかでもひと際異彩を放つ存在に違いない。

 まずはなんといっても、ひとたび目にしたら脳裏に焼きついて離れない、超個性的なフロントフェイスが特徴だ。それもめったに見かけない希少なクルマだからこそなおのこと、見かけた時の体験は忘れられないものになる。

 さらに、上質なレザーやシルバー加飾をふんだんに配したインテリアが見せる高級感も、素晴らしい! のひとことだ。

 走りのほうもとても印象深い。クルマを自転運動させるという独自のSH-AWDなればこそ実現した異次元のハンドリングは世界で唯一無二。

 特に雪の上で走らせた時には、その回頭性とコントロール性の高さに感動すら覚えたものだ。販売台数は控えめななかでも北海道ではちょっとパーセンテージが高いという事実もすべてを物語っている。

 エンジンフィールも上々で、今や貴重な排気量大きめな自然吸気V6が生み出す力強く伸びやかな吹け上がりと重厚なサウンドにもホレボレする。これに3基のモーターが加わり、一斉に力を発揮した時の強力な加速Gもまたレジェンドならではの境地だ。

 この車格でこれほどドライビングの高揚感を与えてくれる高級サルーンなどない。

■SUVなのか位置付けがわからない スズキ イグニス(2020年1月販売台数:107台)

(TEXT/渡辺陽一郎)

●意外と後席は充分な広さで、最低地上高が高いのも便利

2016年登場。価格140万8000~191万700円。1.2Lマイルドハイブリッド搭載

 全長を3700mmに抑えたコンパクトカーだが、最低地上高には180mmの余裕があり、路上のデコボコを乗り越えやすい。悪路にかぎらず、駐車場と車道の段差が大きいような場所でも、ボディの下まわりを擦りにくい。

 水平基調のコンパクトなボディは四隅の位置がわかりやすく、最小回転半径が4.7mだから小回りの利きもいい。インパネは水平基調で視認性と操作性が優れ、前席は腰を包む形状だ。背もたれは下側が硬めで、座り心地は欧州車に似ている。

 後席も実用的だ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ半を確保した。この前後方向の足元空間は、クラスが上のカローラやマツダ3と同等だ。しかもイグニスでは、後席に座る同乗者の足が前席の下側に収まるから、4名で乗車してもあまり窮屈に感じない。

 エンジンは1.2Lマイルドハイブリッドで、動力性能は高くないが、車両重量は最上級グレードでも880kgに収まる。そのために運転感覚は軽快だ。

 操舵に対する反応も意外に機敏でよく曲がる。街中から峠道まで、楽しく運転できる。4WDを選ぶとグリップコントロールも備わり、余裕のある最低地上高と相まって走破力を高めた。SUVとコンパクトカーの中間的なコンセプトは、発売後4年を経過した今でも新鮮に感じる。

■タイ生産の雰囲気で人気低迷中!? 三菱 ミラージュ(2020年1月販売台数:138台)

(TEXT/渡辺陽一郎)

●人気コンパクトのような他人とカブる不都合なし!

2012年登場。価格140万8000~151万4700円。1.2L直3エンジン搭載。FFのみの設定

 ボディサイズは全長が3795mm、全幅は1665mmだからマーチよりもコンパクトだが、ワイドなグリルによって存在感は強い。ボディカラーもワインレッド、サンライズオレンジ、セルリアンブルーなど個性的な色彩をそろえた。チタニウムグレーは、ちょっと渋い感じだ。

 この個性がミラージュのキモになる。フィットやヤリスでは、発売から3年も経過すれば街中に溢れかえる。値引きの大きな在庫車を選ぶと、ボディカラーもホワイトやシルバーで、どこにいても見かけられる。大型ショッピングセンターの駐車場では、愛車だと思って近づいたら他人のクルマで、車内の人と目が合って気まずい雰囲気になったりする。

 ところがミラージュなら、こういった没個性が生み出す諸々の不都合と決別できる。特にサンライズオレンジなどを買えば、自分の居場所が他人にも常にわかり、いわば有名人の気分も味わえる。

 運転感覚は軽快だ。エンジンは1.2Lで、車両重量は900kgだから、スイスイと走る印象がある。最小回転半径は4.6mだから、小回りの利きや駐車性は、コンパクトカーのなかでも優れた部類に入る。

 全高は1505mmだから、立体駐車場を使えて、なおかつ前席については圧迫感も生じない。それに乗降性もいい。

 コンパクトカーに実用性と絶妙な個性を求めるなら、ミラージュは検討する価値があるクルマだ。

■大幅に顔を変えても人気上がらず… スズキ SX4 Sクロス(2020年1月販売台数:100台)

(TEXT/渡辺陽一郎)

●スポーティではないが、峠道も気持ちよく走れる!

2015年登場。価格218万200~240万200円。1.6L直4エンジンを搭載し、4WDのみの設定

 SX4 Sクロスには、ベーシックな欧州車の雰囲気がある。フロントマスクを除くと外観は地味だが、実用性は高い。全長が4300mmのボディは、全幅が1785mmと少しワイドながら、街中でも運転しやすい。SUVらしく最低地上高は185mmを確保するから、駐車場などに入る時の段差も乗り越えやすい。

 内装では前席が少し硬めの座り心地だが、ボリューム感があり、肩回りのサポート性は良好だ。このあたりも欧州車風で、走りに影響する機能をしっかりと作り込んだ。

 後席も欧州のSUVを思わせ、着座位置が高いから、膝から先が前方へ投げ出されない。空間効率が優れ、荷室容量にも不満はなく合理的だ。

 エンジンは1.6Lで、6速ATを組み合わせた。有段ATとあって、装着車の多いCVT(無段変速AT)に比べると、ギヤ比が頻繁に変わらないから細かな速度調節もしやすい。高速道路を一定速度で走り続ける場面では、運転しやすく感じる。

 乗り心地はコンパクトなわりに快適で、足回りが柔軟に伸縮する。重心が少し高いから、峠道ではボディが相応に傾くが、挙動の変化が穏やかに進んで不安を感じない。

 むしろSX4 Sクロスなら、スポーティカーと同じ速度で曲がっても、高重心による適度な挙動変化で操る気分が盛り上がる。このようなオーナーでなければわからない密かな楽しさが得られることも、SX4 Sクロスの醍醐味だ。

■Aクラスもあって何だか目立たない…メルセデスベンツ Bクラス(2019年平均月販台数:422台)

(TEXT/清水草一)

●Bクラスのようなハイトワゴンがスタンダード!

2019年9月登場。価格392万~422万円。1.4Lガソリンターボと2Lディーゼルターボ搭載

 BクラスはAクラスのハイルーフ版と思えばいい。つまりそれだけ天井が高く、室内がゆったりしている。

 ホンダのNシリーズのなかで、N-BOXが一番よく売れているのを見てもわかるように、天井が高く室内が広々していることには、無上に近い価値がある。なにせ、全長全幅は同じサイズで、高さだけ増せばそれだけ広くなるのだから、高くしないのはソンというものではないか。

 どうせ建てるなら10階建てより100階建てのほうがいいに決まっている。Bクラスの勝利だ。

 実は私、AクラスとBクラスを並べて、どっちが好きか20代女子にアンケートを取ったことがあるのだが、Bクラスの圧勝だった。理由は「中が広そうだし、見た目があんまり威張ってないから」というものだった。逆にAクラスに対しては、「背が低すぎる」「暴走族のクルマみたい」という、驚くべき反応が返ってきた。

 これを見ても、現在の日本では、Bクラスくらいのハイルーフ車がスタンダードな形であり、自然な存在だということが理解できるだろう。かつてスタンダードだったスタイル(Aクラスなど)は、今ではペッタンコすぎて特殊な存在になったのだ!

 乗ればさすがメルセデス。まったくソツがない。どこにも欠点がないし、呼びかければ返事もしてくれる。友達が少ない自分もBクラスがいればさみしくない。本当に嬉しくなりました。

*   *   *

■まとめ

 以上、8車のホメるの限定インプレ。最後までホメるのが厳しい車種も見られたけど、人気いまひとつな車種もけっこういい点がありましたね!?


【番外コラム】渡辺陽一郎が本当は今一番ホメたいクルマ

 本当に感心したのはN-WGNだ。プラットフォームなどをN-BOXと共通化しながら車両重量は約40kg軽く、走行安定性と乗り心地を上質に仕上げた。前後席ともに座り心地が優れ、後席下側のワイドなトレイ、2段に使える床の低い荷室など、収納性や各種の使い勝手もいい。

 衝突被害軽減ブレーキは自転車も検知できて、運転支援機能も先進的だ。納期が遅れて素直に褒められない面もあるが、商品力は抜群だ。

渡辺氏の本当にホメたいクルマナンバー1はN-WGN。走りも使い勝手もよく、安全装備も充実

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