荷室長は短いがそれを補う魅力が満載
その代わりにN-VANは、前述のように荷室長が短い。軽商用車では重大な欠点だから、これを補うために、N-VANはエブリイバンやハイゼットカーゴには備わらない機能を盛り込んでいる。
まず後席に加えて助手席も床面へ落とし込むように折り畳める。すべて畳んだ状態では、運転席以外は平らな荷室になる。
大きな荷物は積めないが、L字型の荷室面積は広いから、38cm×31cmの段ボール箱をたくさん積むような用途にはピッタリだ。
この機能をさらに高めるため、スライドドアも工夫した。左側はダイハツタントのように、ピラー(柱)をスライドドアに埋め込んでいる。
前後のドアを両方ともに開くと、開口幅は1580mmに広がり、タントの1490mmを上まわる。段ボールをたくさん積み降ろしする時など、左側のワイドな開口部とリアゲートを併用すると、作業効率が大幅に向上する。
安全装備と運転支援機能が充実することも特徴だ。歩行者や車両を検知できる衝突被害軽減ブレーキに加えて、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能も備わる。
衝突被害軽減ブレーキは、エブリイバンやハイゼットカーゴも用意するが、運転支援機能は軽商用車ではN-VANならではだ。
見た目はN-BOXに近いが中身はどう違う?
ホンダカーズ(ホンダの販売店)の営業マンにN-VANの最近の状況を聞いてみると、本音を語ってくれた。
「大きな荷物を積むお客様は、N-VANをあまり検討されません。洋服や花など、軽くて小さな荷物を積むお客様が購入されています。
なかにはN-VANを検討したうえで、N-BOXを選び、後席を畳んで荷物を積むお客様もいらっしゃいます。
N-VANは商用車、N-BOXは乗用車ですが、お客様から見ると明確な線引きはないと思います」とコメント。
小型/普通商用車の車検は、毎年受けるが、軽商用車なら2年ごとだ。そうした違いはあるが、N-VANは軽乗用車に近い感覚で使える軽商用車という認識のユーザーが多いのだろう。ただし注意すべき点もある。
まずシートの座り心地だ。商用車の規格では、後席の面積よりも、荷室を広く確保する必要がある。
したがってN-VANの後席は、N-BOXに比べると前寄りに装着され、足元空間が極端に狭い。
後席の背もたれは直立しており、座面を含めて薄手だから、柔軟性が乏しく座り心地も悪い。ベーシックなグレードの後席には、ヘッドレストも備わらない。
助手席も小さく畳める構造だから、N-BOXに比べて座り心地が悪い。硬めで柔軟性が乏しく、サポート性も不満だ。
つまりN-VANの場合、運転席以外はすべて補助席で、2名以上の乗車で長距離を移動する用途には適さない。
スライドドアは、N-BOXなどの軽乗用車では電動開閉式が多いが、N-VANはピラーをスライドドアに内蔵したこともあって手動式だ。
乗り心地にも注意したい。N-VANは最大積載量を350kg(2WD)に設定した軽商用車だから、軽乗用車のN-BOXに比べると足まわりが硬い。
指定空気圧も前輪が280kPa、後輪は350kPaと際立って高く、これも乗り心地に悪い影響を与えた。
軽乗用車のN-BOXは、14インチタイヤが240kPa、230kPa、15インチは前後輪ともに210kPaだから、N-VANはシートの座り心地とタイヤの設定が相まって、乗り心地が一層硬く感じる。
車両重量はN-BOX G・Lホンダセンシングが890kg、N-VAN Lホンダセンシングは930kgと重く、N-VANのNAエンジン車はパワー不足を感じる。
操舵感はすべてのグレードについて鈍めの設定だ。重く高重心のボディで走行安定性を確保するため、車両の動きを抑えた。
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