次は使えない最廉価グレードを取り上げたい。装備が簡素で選ぶ価値の乏しいグレードはたくさんあるので、特徴的な例を挙げる。
「買い得感薄し」最安グレード ワースト5
■ワースト5位:エルグランド 250XG/321万3000円
エルグランドでエアロパーツの装着されないスッピンのボディでは、コンセプトに合わず外観の見栄えも情けない。しかも、『250XG』の2列目シートはベンチタイプのみだ。
エアロパーツを装着して、なおかつ快適で豪華なセパレートのキャプテンシートを選べる『250ハイウェイスターS』(339万5520円)を買いたい。価格差は18万2520円だから、装備の違いを考えると『250XG』は割高でもある。
■ワースト4位:C-HR S-T/251万6400円(4WD)
ターボのS-Tが4WD専用になるのも選びにくいが、ハイブリッドの『S』を含めて、LEDヘッドランプを装着できずハロゲン専用になる。カッコイイSUVのC-HRに、ハロゲンヘッドランプというのは非現実的だろう。
そして、LEDヘッドランプは上級の『G-T』(277万5600円)でも15万1200円のオプションだ。
C-HRにLEDヘッドランプを装着すると、カーナビなどを除いても300万円近い価格になってしまう。従ってすべてのグレードでLEDヘッドランプを装着できるようにすべきだ。
また、ターボの2WDも必須のラインナップになる。現状ではC-HRはグレード選びに困るクルマになっている。
■ワースト3位:RVR M/205万8460円
上級の『G』に比べて19万2240円安いが、『M』にオプション設定されたベーシックパッケージは、ディスチャージヘッドランプ+フォグランプ+アルミホイールのセットで価格が19万4400円になる。
これらの装備はすべて『G』に標準装着されるから、『M』にベーシックパッケージを加えて購入すると、『G』の価格を飛び超えてしまう。
しかも『G』にはベーシックパッケージの装備以外にもキーレスオペレーションやパドルシフトなどが装着され、これらは『M』には備わらない。
つまり、『M』+ベーシックパッケージは、『G』よりも装備が貧弱なのに価格は上まわるという、とんでもなく割高な仕様だ。
■ワースト2位:ヴィッツ 1.0F/132万5160円
2位はヴィッツの3気筒1Lエンジンを搭載する『1.0F』。アイドリングストップを装着すると140万5080円になり、これを備えた4気筒1.3Lエンジンの『1.3F』との差額は7万6680円だ。
ただし、『1.0F』では後席が分割可倒式にならずタイヤサイズも異なる。その結果、1気筒/300ccの違いが、わずか5万円相当に縮まる。
しかもJC08モード燃費は、『1.3F』が25.0km/Lなのに、『1.0F』のアイドリングストップ装着車は24.0km/Lと悪い。
つまり、『1.0F』は5万円安いだけで動力性能が大幅に下がり、3気筒だからノイズは騒々しく、タイヤの違いで乗り心地は粗く、燃費は悪化する。
自動車税は年額5000円安くなるものの、まったく選ぶ価値のないグレードだ。
■ワースト1位:ノートe-POWER S/177万2280円
ワーストはノートe-POWER『S』だ。JC08モード燃費を37.2km/Lとするために(ほかのe-POWERは34.0km/L)、エアコンまで省いた。
今はエアコンがメーカーオプション(12万9600円)で用意されるが、発売当初は設定がなかった。また、今でもe-POWER『S』には緊急自動ブレーキを付けられない。
しかも、複数の装備を省いた割に、価格はさほど安くない。どの車種にも当てはまる話だが、大半のグレードに標準装着される装備はメーカーが安価で調達しているため、省いても価格をあまり下げられないのだ。
従ってe-POWER『S』は選ぶ価値が乏しい。
開発者にe-POWER『S』を設定した理由を尋ねると「アクアの37.0km/Lを超えないと注目されないから」というが、さらにボディの大きなプリウスは大半のグレードが37.2km/Lで、最廉価のEは40.8km/Lになる。
ノートe-POWER『S』を目当てに販売店に来店する顧客もいるが、エアコンが非設定だった時には、事情を説明してe-POWER『X』を推奨していた。
そのためにメーカーの発表したe-POWER『S』の販売比率は0%だ。
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