いすゞビークロス(1997年)
1993年の東京モーターショーで、いすゞが1台の新しいSUVのコンセプトカーを出展した。その名はヴィークロス。従来のSUVの概念を大きく覆すスポーティな3ドアのスタリングが与えられていた。
チーフデザイナーを務めたのは、のちに日産自動車のデザイン本部長となる中村史郎氏だった。
東京モーターショー出展から約3年半後となる1997年3月、ビークロスは世に送り出された。
しかし、それまで存在しなかった「スペシャルティSUV」という新ジャンルを確立したものの、当時はまだRVブームの名残が強く、ライトSUV以外は、乗用車ライクな快適装備を備えた本格SUVがマーケットの中心であった。
時代としては、高級クロスオーバーSUVを確立した初代ハリアーのデビューが1997年12月であり、スポーティさを強調したSUVの存在は時期尚早であった。
このため、ビークロスの販売は決して成功とはいえず、わずか2年で販売終了。しかし、もう二度とこうしたデザイン優先のSUVは出るまい。歴史に残るSUVであることは間違いない。
初代ハリアー(1997年)
こちらも、都会派高級クロスオーバーSUVの草分けとして、高く評価されている。美しいというよりはカッコいいという感じだが、やっぱりシンプル&クリーンで、洗練されたエクステリアデザインだった。
それでいてワイルドさもあり、レクサスRXの名前で北米で大ヒット。クロスオーバーSUVという分野を切り開いた。
たとえばBMWは、ハリアー(レクサスRX)の後を追ってX5を開発、その後各社が続くことになったのだ。
初代ムラーノ(2002年)
シンプルでありながら、フロントやリアの強く丸みを帯びた造形は、グラマラスかつ未来的。当時はここまでラウンドしたフォルムを持つSUVはなく、見る者にショックを与えた。
当時日産は、キューブやマーチ、スカイラインクーペと、次々にデザイン的なヒットを飛ばしていて、乗りに乗っていた。初代ムラーノも、「日産のデザインはすげえ!」と思わせたものだ。
その後、日産デザインは徐々にコテコテ路線に傾き、没落していきましたが……。
3代目レクサスRX(2009年)
レクサスRXは、日本国内のみ「ハリアー」の名前で販売されていたが、3代目からはRXに統一され、ハリアーは2代目が継続販売、その後国内専用モデルとして独立……という経緯を辿るわけですが、この3代目RXは、まさにシンプルで美しいSUVだった。
12年のマイナーチェンジでスピンドルグリルが移植され、ややバランスが崩れたが、前期型は余計なデコレーションがほとんどないエレガントなフォルムだった。特にボディと完全に一体になったフロントバンパーや、優美なリアピラーが秀逸でした。
2代目CX-5(2017年)
マツダの現行SUVラインナップは、みんなシンプルで美しい。CX-5、そのロングホイールベース版であるCX-8、コンパクトなCX-3、そしてその上のCX-30と、どれも甲乙つけがたい優れたデザインだ。その中でどれか一台を代表で選ぶとすれば、CX-5になる。
最新のCX-30は、マツダ3とともに、キャラクターラインを排した面の美しさで勝負しているが、CX-5はそれより一世代前の、キャラクターラインのエッジを際立たせたデザイン。しかしそのラインが実に美しく、パネル面がどれもキリリと輝いて見える。
細部では、グリルとヘッドライトがつながり、開放された部分に注目したい。横から見ると割れ目のように見えるが、その割れ目から見える背後の風景にしばし見とれる。全体にとても彫刻的です。
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