過ぎたるはおよばざるがごとし? こだわりが強すぎて消えていった”しくじり車”たち

アメリカ流そのままでは無理がある?

■日産レパードJ.フェリー 1992(平成4)年6月~1996(平成8)年3月

エンジンはシーマ用の4.1L、V8 (270ps/37.8kgm)と先代F31型にも設定された3L、V6(200ps/26.5kgm)の2種類で、4速ATを組み合わせて後輪を駆動する
エンジンはシーマ用の4.1L、V8 (270ps/37.8kgm)と先代F31型にも設定された3L、V6(200ps/26.5kgm)の2種類で、4速ATを組み合わせて後輪を駆動する

 レパードとしては3代目(JY32型)となったレパード「J.フェリー」は、曲線のみで構成されたスタイリングのほか、イタリア製レザーで仕立てられた内装など、バブル景気の“残り香”を漂わせて登場した。

 ただし、当時の北米市場では立ち上がったばかりのインフィニティブランドでは成立したものの、日本市場の日産ブランドでは「やりすぎ」となってしまった異色の高級セダンだ。

 まだ当時、3ナンバーのボディサイズがしっくりとこなかった筆者にとって、全長4880×全幅1770×全高1390mmの丸みを帯びて大柄に思えたボディ(ホイールベース:2760mm)に違和感を覚えたことが印象に残っている。

 また”尻下がり”のスタイルは日本ではウケないと自動車雑誌でよく書かれていたことを思い出した。

 4ドアセダンのみの設定となったとはいえ、インフィニティJ30を日本市場に投入して命脈を保つことになったレパードは、セルシオやクラウンマジェスタと並んで数少ない、当時の日産の乗用トップモデルだったインフィニティQ45とともにV8搭載車としての価値はあったはず。

エクステリアデザインは主に日産のカリフォルニアデザインセンター(NDI)が手がけ、リアエンドの下がった、いわゆる「尻下がり」「垂れ尻」の北米市場の“好み”に合わせた仕上げとなっていた
エクステリアデザインは主に日産のカリフォルニアデザインセンター(NDI)が手がけ、リアエンドの下がった、いわゆる「尻下がり」「垂れ尻」の北米市場の“好み”に合わせた仕上げとなっていた

インフィニティ流の「贅沢さ」

内装の仕立てについても、センターコンソールと運転席ドアスイッチ周辺は本杢パネルで仕上げられている。日本車としては初めて、助手席エアバッグを標準装備した(レスオプションも選択可)車種でも
内装の仕立てについても、センターコンソールと運転席ドアスイッチ周辺は本杢パネルで仕上げられている。日本車としては初めて、助手席エアバッグを標準装備した(レスオプションも選択可)車種でも

 贅沢装備は日産車としては異例の贅沢な仕様といえ、フェラーリやマセラティにも収められているイタリアの家具メーカーであポルトローナ・フラウ製(表皮のみ)の本革シートをオプションで用意する。

 このシートの設定価格は約80万円とされ、標準仕様の本革シート(オーストリアのシュミットフェルトバッハ製で初代マツダセンティアにも採用していた。でも設定価格が約50万円に達するなど、高級感の演出は突出していた。

 ここまでの中身を与えても、日本国内では月平均の販売台数は約数十台から100台強程度と低迷、総販売台数も約7300台に終わり、インフィニティブランドの導入を横目で見ながら(結局は不発に終わったが)大胆にラインナップに加えられたJ.フェリーは、残念ながらバブル崩壊最後の“徒花”となってしまった。

 だが、今の日産にこれほどまで贅沢かつ斬新なモデルを生み出せるエネルギーが残っているのか。少なくとも個々のモデルに他メーカーを出し抜くような、コンセプトの大胆さを求めたくなるのは筆者だけではあるまい。

日産レパードJ.フェリーの中古車情報はこちら!

どこまでも斬新、どこまでも異端

■ホンダZ 1998(平成10)年~2006(平成18)年1月

UM-4という独自のメカニズムを搭載して登場したZは衝突安全面でも有利だった。しかし使い勝手を考えると3ドアしかなかったのが致命的だった
UM-4という独自のメカニズムを搭載して登場したZは衝突安全面でも有利だった。しかし使い勝手を考えると3ドアしかなかったのが致命的だった

 この2代目となる(といっても、個人的には今でさえピンとこない)「Z」こそ、ホンダの商品戦略の“大胆不敵さ”が凝縮したモデルに違いない。

 まず「コンセプトありき」で生み出され、そもそも量産されることに無理がある(?)ような「こだわりに富んだ」というよりは「自由すぎる」成り立ちは、どこか天晴れと言いたくなるような独自性の塊だった。

 ホンダの過去のモデルの名を復活させるパターンを数あるが、Zもそのひとつ。1998(平成8)年の軽自動車の規格変更に伴い、同時に登場したライフ(これも2代目)とともに登場した新型Zは、初代とはまったく異なるコンセプトを打ち出した。

 エンジン縦置きのフロア下ミドシップ(これに近いコンセプトの乗用量産モデルは、初代トヨタエスティマぐらいだ)レイアウトの採用は、良くも悪くも“ホンダらしさ”に溢れていた。

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