過ぎたるはおよばざるがごとし? こだわりが強すぎて消えていった”しくじり車”たち

技術への「こだわり」が生み出した個性

メカニズムをフロア下に集積した結果、軽自動車ながら小型車に匹敵する室内長を確保。当時ユーティリティ面でZにかなう軽自動車は存在せず
メカニズムをフロア下に集積した結果、軽自動車ながら小型車に匹敵する室内長を確保。当時ユーティリティ面でZにかなう軽自動車は存在せず

 2代目ホンダZは「UM-4:Underfloor Midship 4WD」と呼ばれた独自のプラットフォームを基本に、50:50の車重配分を実現。全車ビスカス式センターデフで適宜後輪を駆動する“スタンバイ”4WDを採用。

 そのほかにも、アイポイントの高さやフラットに仕立てられたフロアなど、パッケージングを見れば、Zが単純な箱形モデルではないことは明らかだ。

 衝突安全実験車から生み出されたという経緯があるZは、当時のホンダ社内で設定したフルラップ55km/h、64km/hでの40%オフセット(変形バリア)の衝突試験をクリア。

 さらに歩行者頭部障害軽減保護機能として、FFであればエンジンが設置されるフロントコンパートメントに衝撃吸収構造を与えた効果だ。

 だが、これだけ細部にこだわりが溢れていても、全体のコンセプトすなわち「このクルマで何を実現したいのか」がわかりにくくなってしまっては「エンジニアのわがままの集大成」と捉えられても致し方なかろう。

 約8年の販売期間で4万台ほどの総販売台数(発表当初の月間目標販売台数は5000台)を見れば、面白さだけでは大ヒットには至らなかったということになる。

 軽自動車という“真面目な”カテゴリーゆえの結果といえるかもしれないが、「やりすぎた」モデルとしては納得すべき数字だろう。

ホンダZの中古車情報はこちら!

革新的なスタイルは今見ても素晴らしいがなぜかウケず

■三菱i(アイ):2006(平成18)年~2015(平成27)年3月

エンジンのないフロントの空間はクラッシャブルゾーンとしても効率的に利用され安全性を高めるのに一役買っている
エンジンのないフロントの空間はクラッシャブルゾーンとしても効率的に利用され安全性を高めるのに一役買っている

 箱型のハイトワゴン、さらに背の高いスーパーハイトワゴン全盛の最近の軽自動車のなかにあって、i(アイ)を見ると、これほどスタイリングにこだわった軽自動車は稀なはず。

 斬新な“ワンモーションフォルム”など、独自のコンセプトを備えながら、買収されたダイムラークライスラー(当時)との関わりのなかで生まれ、消えていった不運な一台といえる。

 iは三菱の独自設計とされるプラットフォームを基本に、エンジンを45度傾斜させてリアアクスルの前方に載せる「リア・ミッドシップレイアウト」を採用した(燃料タンクは床中央に配置)。

 iの開発に当時提携関係にあったダイムラー(当時のダイムラークライスラー)がどの程度関与したかは明らかにされてはいない。

 あくまで参考ながら、筆者が確認した初期モデルでは、エンジン周りの部品やガラスウインドウなどのパーツ類には当時のダイムラークライスラーの名が見られ、前後のタイヤサイズは145/65R15、175/55R15と当時のスマートと共通なのは偶然ではあるまい。

 パッケージングでは、全長3395×全幅1475×全高1600mmのボディサイズにホイールベースは軽自動車として現在でも最長とされる2550mmを設定して、リアエンジンレイアウトとして室内空間に余裕を持たせた。

 マクファーソンストラット/3リンク式ドディオンアクスルのサスペンションとともに、独自のセッティングを施した電動パワーステアリングのフィーリングは独特で、ブレーキング時にノーズダイブすることなく水平の姿勢を保ったまま減速する振る舞いはリアエンジン車ならではといえた。

発表時には軽自動車用3B20型直3ターボ(64ps/9.6kgm)を設定。発表から間もない2006年10月には自然吸気エンジン仕様(52ps/5.8kgm)を追加。それぞれ4速ATを組み合わせている
発表時には軽自動車用3B20型直3ターボ(64ps/9.6kgm)を設定。発表から間もない2006年10月には自然吸気エンジン仕様(52ps/5.8kgm)を追加。それぞれ4速ATを組み合わせている

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