ウルスはなぜここまで大成功できたのか?
個人的な分析だが、ウルスは最初からメチャメチャ楽しくて、乗ると笑いが止まらなくなるようなスーパーなクルマだったから……ではないだろうか?
ポルシェカイエンが登場した当初は、ずいぶん未熟な部分があった。カイエンターボで東京と福島を往復した時は、あまりにもエンジンブレーキの効きが弱く、前へ前へと進むばかりで、ヘトヘトになりました。「こんなのがポルシェなのか!」と思いましたよ。
その後、熟成は進んだけれど、やっぱりポルシェのSUVは、911などのスポーツカーに比べると、どこかシロートさん向けに作っている感覚はある。
が、ウルスは違った。そりゃまぁベースはカイエンと同じフォルクスワーゲンの系のプラットフォームで、VWトゥアレグやアウディQ7と兄弟車の関係にはある。
「こんなのはランボルギーニじゃない!」というランボファンがいるのも当然でしょうけど、クルマの完成度は最初から非常に高かった。
ウルスは、まずスタイリングが素晴らしい。ランボルギーニ風の直線基調を維持しつつ、フロントグリル内の血走った眼、あるいは大蛇の舌みたいなおどろおどろしい装飾で、見事にランボルギーニを表現している。
ランボルギーニといえば猛牛。猛牛は狂ったように暴れるものだが、ウルスの顔にはその狂気がある!
インテリアも、アヴェンタドールなどに準じた、ちょっと子供っぽい夢にあふれている。
六角形のヘキサゴンモチーフが各所にちりばめられ、スターターボタンもアヴェンダ同様のミサイル発射ボタン風。バカになってランボルギーニを楽しむぜという気分にさせてくれる。
そして走り。とにかくもう、ウルスに乗ればなんでもできてしまう。加速も減速もコーナリングも、スーパーSUVの名に恥じない、すさまじいパフォーマンスなのである。
ランボルギーニの親会社であるアウディが、アウディのメカニズムを基本に、ランボルギーニ風なやりたい放題のパフォーマンスと、スーパーな演出をブチ込んだクルマとでも申しましょうか。
どんな乱暴な運転をしても大丈夫そうな安心感は、やっぱりアウディクワトロの血筋。
でもルックスやサウンドなどの演出は完全にランボルギーニ。だからつい羽目を外したくなる。安心の土台の上に治外法権的なパフォーマンスがあれば、ドライバーは特権的な快楽に浸ることができる。
もちろん、アヴェンタドールやウラカンも治外法権的なパフォーマンスを持つクルマですけど、それらに乗るには、乗降性や積載性や最低地上高の低さなど、いろいろな不便に耐えなければならない。
しかしSUVのウルスにはそれがない。潜在的にランボルギーニに憧れを抱いていたけれど、実際乗るのはノーサンキューだった富裕層にとっては、まさに「こんなランボが欲しかった!」となる。
しかも、価格は日本の場合、3068万1070円と、それほど高くない(もちろん大多数の庶民にとってはかなり高いが)。
アヴェンタドールは約4500万円、ウラカンも4WDモデルは3000万円を超える。富裕層にすれば、ウルスの値段は「意外と安いじゃないか」となるのではないか? 安くて便利なんて言うことないネ! って感じですか?
カイエンで経営を立て直したポルシェを見ればわかるように、スポーツカー専業メーカーは、ブランドイメージに特別感がある。スポーツカー専業メーカーのSUVだからこそ、ここまでのヒットになるのだ。
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