日本の新車販売市場では、超ハイトワゴンの軽自動車とハイブリッド専用車がしのぎを削っており、またミニバンやクロスオーバーSUVが売れまくっています。
そういう環境だとついつい「個性的な車がいいのかな」と思いがちですが、しかし「普通にいい車がほしい」という要望も根強くあります。
「普通にいい車」。わかるようでわからない、でもなんだか魅力的なカテゴリーですよね。本企画では「普通にいい車ってどんな車か」を考察・定義しつつ、「代表的な、普通にいい車」を3車種ご紹介いたします。
文:渡辺陽一郎 写真:SUBARU、HONDA、TOYOTA
ベストカー2017年10月10日号
■より多くの人が満足できる車のこと
「普通のクルマ」を定義付けて、具体的に車種を選ぶのは難しい。クルマは使い方、好み、予算などに応じて購入され、要はユーザーの個性を反映させた商品になるからだ。
そこでここでは「普通」を、「一般的」あるいは「不特定多数」、古い表現なら「万人向け」と解釈したい。「普通のいいクルマとは、多くのユーザーに適したクルマ」と考える。
不特定多数のユーザーが使うので、最も大切なことは運転のしやすさだ。ボディは比較的コンパクトで小回りが利き、視界がよく、視線の高さも適度に設定されることが求められる。
日本には混雑した市街地や狭い駐車場が多く、特に初心者には、運転のしやすさが普通のいいクルマであるためには不可欠だ。
ほかにも運転のしやすさの要素は多い。動力性能に過不足がなく、操舵感は過敏だったり鈍かったりしない。適切な運転姿勢が得られ、スイッチの操作性やメーターの視認性もよく、コツを要さず自然に運転できることが求められる。
■「平均的に高機能」という特徴
居住性や使い勝手も同様だ。助手席や後席も快適で乗り降りがしやすく、荷物を収納しやすいことも大切になる。
ただし、居住性を重視して大勢が乗車できる背の高いミニバンなどは、普通のいいクルマとしてマイナスになることが多い。
優れた機能を持たせたことで、欠点も生じるからだ。高重心のミニバンでは安定性が下がったり、左側面の死角が増えて狭い道で運転がしにくかったりする。突出した長所や目立った欠点がなく、平均的に高機能なクルマが好ましい。
運転の楽しい、あるいは面白いクルマも「普通のいいクルマ」に逆行する部分がある。楽しいとか面白いクルマは、ドライバーの感情を刺激したり意識に介入するから、気分的に「普通」ではいられない。
外観のカッコよさも同じだ。クルマを好調に売るには走りのイメージが大切で、見栄えを重視したデザインになりやすいが、そこを過度に優先させるとウィンドウの下端が高まって視界が悪くなりやすい。
そして機能が平均的に高いクルマは、疲れたり嫌な出来事があった後でも、いつもと同じように運転できる。最高の「普通のいいクルマ」には、ドライバーに対する優しさが宿っている。
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