日本だけでなく世界中のフェアレディZファン、スポーツカーファン、そして日産ファンが待ち焦がれた「新型Z」の発表。今回、明らかとなったプロトタイプの姿には賛否両論あったようだが、何より「Zに新型が出る!!」ということに、皆が喜んでいたような雰囲気を感じた。日産ファンとしてはこれほど嬉しいことはない。
フェアレディZは、GT-Rとともに、半世紀以上にわたり、日産ブランドのスポーツイメージを支えてきたモデルだ。1990年代末、日産が倒産すれすれにまで陥った所から、ようやく脱したタイミングで登場したモデルも、Z33型のフェアレディZであり、当時、日産復活を大きくアピールするのに貢献した。
今回の新型Zも、日産復活の狼煙となりうるのだろうか。筆者が、新型Zプロトタイプ発表会で感じ取った、日産の今後について、お話する。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
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Zの復活は、日産の復活でもあった
日産が倒産の危機に瀕していた1990年代末、日産は新車販売低迷により、倒産すれすれまで追い込まれていた。
1999年、カルロス・ゴーン社長(当時)の指揮のもと、「日産リバイバルプラン」という再建計画を実施。村山工場閉鎖や従業員のリストラ、早期退職、利益が出せない車種廃止など、その内容は、相当な痛みを伴うものだった。
これにより日産は、当初の予定より1年前倒しで目標を達成。2003年までの4年間で2兆円を超える巨額の借金を完済することができた。この、日産が倒産の危機を脱しつつあった2002年登場したのが、Z33型フェアレディZだ。
フェアレディZは、一度途絶えてしまっている。バブル経済崩壊の影響もあり、スポーツカーの開発どころではなかった日産は、フェアレディZの開発をストップしていた。Z32型フェアレディZが、2000年に生産終了となってしまったため、ここでフェアレディZの火はいったん消えた。
だが、カルロス・ゴーン社長(当時)の指示により、開発は再開。こうして復活したフェアレディZは、日産の復活を象徴するように登場、世界中のZファンによって温かく迎え入れられた。
その後、日産は、中期プラン「日産180」「日産バリューアップ」など、次々と中長期プランをコミットメントし、達成。こうして日産が、V字回復を成し遂げたのは、皆さんもご存じの通りだ。
2020年現在の日産の現状は、もちろん当時とは異なる。コロナ禍の影響で販売台数激減する前から、日産の社内政治の乱れが指摘され、合わせて、軽視してきた日本市場への対応の不味さも混ざり、まさに「身から出た錆」でできた傷に「塩を塗りこんだ」状態で、「泣きっ面にハチ」といった状況だろう。
そんな折に飛び込んできたのが、新型Z登場の情報だった。
今回の新型Zもまた、日産復活のイメージリーダーだ
2020年5月の決算発表の際、最後に公開された動画で、フェアレディZを示唆するモデルが登場したのには、筆者も度肝を抜かれた。正直なところ、こんな時代にスポーツモデルの復活の可能性なんて「99%ない」と考えていたからだ。
「日産ネクスト」という経営プランとは別に、復活の狼煙としてのイメージリーダーとなる「光」を見せてくれた、新型Zの登場。日産のブランディング・マーケティングチームの上手さに、良い意味で「やられた!」という驚きと、喜びを感じた。
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