新型コルベットはフェラーリを超えられるか? スーパーカー史上最強コスパ!!

 ゼネラルモーターズジャパンは2020年8月27日、史上初のミドシップレイアウトを採用した新型コルベットの日本仕様および価格を発表するとともに、コルベット史上初のハードトップを採用したコルベットコンバーチブルを日本導入することもアナウンスした。

 また日本市場へはコルベットブランド初の右ハンドルを導入することも発表。発表された新型コルベットの価格は「コルベットクーペ 2LT」が1180万円、「コルベットクーペ 3LT」が1400万円、「コルベットコンバーチブル」が1550万円。デリバリーが始まるのは2021年5月頃を予定しているという。

 日本で販売される新型コルベットの価格は北米での価格(あくまでもベースの価格となるが2LTが6万7295ドル、3LTが7万1945ドル)を考えると、約1.6~1.8倍と高くなっているが、それでも3000万円オーバーのフェラーリF8トリブートやランボルギーニウラカンエボ、そして2420万円のNSXと比べても、かなり安い。

 新型コルベットの価格が、フェラーリの半額以下、正確には3分の1近く(フェラーリF8トリブートの価格はコルベットの価格の最大約2.82倍)安いというのは凄いことではないだろうか。

 そこで、改めて新型コルベットの価格、1180万円は価格に見合うだけの性能を備えているのか、実際に試乗したモータージャーナリストの渡辺敏史氏が解説する。


文/渡辺敏史
写真/ゼネラルモーターズ

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FRから史上初のミドシップを採用した理由とは?

日本での価格は1180万円から。6.2L、V8エンジンはミドに搭載されている

 8代目C8型、新型コルベットの日本上陸が徐々に近づいてきた。このコロナ禍で本国のデリバリーへの影響もまだ見えないなか、当初のスケジュール通りに事が運ぶかを断じることはできないが、クルマ好きの気持ちとしては、ともあれ早いところ、日本の路上を走る姿が見てみたいという期待で盛り上がる。

 なんといっても興味の中心は、60年以上に渡るFRレイアウトからMRレイアウトへと画期的な刷新を果たしたことだろう。この最大の目的は、レーシングフィールドでの存在感をさらに高めるためだ。

 C5世代以降のコルベットはWECやIMSAなど、耐久レースのGTクラスで輝かしい実績を重ねてきた。

 ことル・マン24時間レースでの通算8回の勝利は、ヨーロッパでのコルベットの名声を高め、ローカルスポーツカーからの脱却に大きく寄与している。マーケティング的な意味合いからも、コルベットとレースはいまや切っても切れない関係だ。

 が、ライバルの台頭に伴うパフォーマンスバトルを制するに、ここ数年は戦績も示す通り、FRレイアウトの限界に悩まされてもいた。

 現場のライバルであるフェラーリ488GTEやフォードGTはもちろん、ポルシェ911でさえRSRのミッドシップ化に踏み切るなか、パワーを確実に駆動力へと変換するために、もはやミドシップ化は避けて通れない。

 コルベットは過去幾度かミドシップ化を検討しては断念しているが、今回はガチで勝つための方策としてそれが選ばれたわけだ。その開発はC7がデビューした直後の14年から始まっていたという。

 C8コルベットと同級のミドシップスポーツとして挙げられるのは、フェラーリF8トリブート、ランボルギーニウラカンエボ、マクラーレンGT&600LT、アウディR8、フォードGT、ホンダNSXといった面々になる。


■シボレーコルベットクーペ:1180万~1400万円
・全長4630×全幅1934×全高1234mm、ホイールベース2722mm
・6153㏄、V8OHV、502ps/637Nm
■フェラーリF8トリブート:3328万円
・全長4611×全幅1979×全高1206mm、ホイールベース2650mm
・3902㏄、V8ツインターボ、720ps/770Nm
■ランボルギーニウラカンエボ:3282万7601円
・全長4520×全幅1933×全高1165mm、ホイールベース2620mm
・5204㏄、V10、640ps/600Nm
■マクラーレンGT:2695万円
・全長4683×全幅2095×全高1213mm、ホイールベース2675mm
・3994㏄、V8ツインターボ、620ps/630Nm
■ホンダNSX:2420万円
・全長4490×全幅1940×全高1215mm、ホイールベース2630mm
・3492㏄、V8ツインターボ(507ps/550Nm)、3モーター(フロント37ps/73Nm×2、リア48ps/148Nm)

720ps/770Nmを発生する3.9L、V8ツインターボを搭載するフェラーリF8トリブート。0~100km/hは2.9秒
640ps/600Nmの5.2L、V10を搭載するランボルギーニウラカンエボ。0~100km/hは2.9秒

 単純にパワー&トルクの比較でいえば、これらライバルより明らかに見劣りする502ps/637Nmとなるが、その最高速は320km/h、0〜60マイル(96km/h)は2.9秒をマークするというから、ほぼ遜色はない。

 搭載する型式名称LT2は伝統のスモールブロック、OHVの6.2L直噴V8だが、中身はC7世代に対して徹底的にリファインされており、潤滑方式はドライサンプが標準となっている。すなわち低重心化はエンジンマウント設計レベルで徹底されているわけだ。

 ボディサイズは全長4630mm、全幅1934mm、全高1234mm。車格的なイメージで一番近いのはこのカテゴリーのトップセラーであるフェラーリF8トリブートになるだろうか。

 そして新しいコルベットのありようをよく示しているのは、2722mmというホイールベースだ。

 ほかのミドシップスポーツが軒並み2600mm台半ばまでに収まるなか、長さで頭ひとつ抜ける理由は骨格的にもスタビリティを確保したいからだろう。ここに空力要件も加われば、ストックでも相当な安定性を発揮することになる。

 ホイールベースが長いぶん、室内長が広いかといえばそうともいえない。フェラーリF8トリブートやウラカンエボはシート背後に荷物を置けるスペースを持つが、コルベットにはそれがなく、手荷物を室内に置いておくのは難しい。

 日常的な使い勝手という点では、意外とこの差は大きいものだ。が、コルベットはミドシップでありながら前後に大きなトランクルームを持つ。その容量は合わせて約357Lと発表されている。

 荷室的に、形状自由度の低いスーツケースのようなものは積めるものと積めないものがありそうだが、専用のラゲッジセットを用いれば後部にゴルフバッグも積むことが可能だ。

 2名分の旅行荷物などは普通に搭載できるだろう。代々守られてきたコルベットの機能性はミドシップでも継承されたといっていいだろう。

620ps/630Nmを発生する3.9L、V8ツインターボを搭載するマクラーレンGT。0~100km/hは3.2秒
ライバルの中では一番安い2420万円で販売されているNSX。0~100km/hは3.0秒

新型コルベットの走りは期待通りか?

まさにコルベットらしい押し出し感のあるスタイル
ミドに積まれるエンジンは、6.2Lで最高出力は502ps、最大トルクは637Nmを発揮するOHVのV8。気筒休止システムを搭載するほか、最大1.2Gという旋回時においても確実な潤滑を維持するドライサンプ式を採用

 エンジンを始動するとキャビンに飛び込んでくるサウンドはまごうかたなきアメリカンV8のそれだが、回転の上昇とともにその音質はザラ味が薄く澄んだものになっていくあたりがFR世代とはちょっと異なるところだろうか。ともあれその音源が後ろからというところに、ちょっと不思議な感覚を覚える。

 自社設計の8速DCTはGMとしては初出ながら、低中速域でのリンケージマネジメントはすこぶる滑らかでアウディやホンダのそれと比べても見劣りはない。

 そのワイドレシオもあって、100km/h巡航の回転域は1400rpm付近。日本の法定速度域では2000rpmも回れば事足りるほどで、車内ではオーディオを楽しむ暇も充分にある。

 その環境を支える静粛性や乗り心地にも十分配慮されているのがコルベットのチャームポイントだ。その上質さはライバルを上回り、ポルシェ911にほど近いところにあると思う。

 また、しっかりとフェンダーの両峰が確認でき、車幅感が掴みやすい前方視界はまさにコルベットの伝統を踏襲しているといえるだろう。

 日本仕様の新型コルベットはもれなくZ51パッケージが装着された、運動性能的には全車同一の状態でデリバリーされる。

 足回りは従来の横置きコンポジットリーフからコイルオーバーに変更された、そのコイルバネやスタビが強化されるほか、ドライブモードに応じて減衰力可変するマグネティックライドが標準となり、リアアクスルには多板クラッチを電子制御することで左右林の増減速を自在に操るeLSDが装着される。現状では最も走りの側に振られたスペックが標準となるわけだ。

 軽量・高剛性化を果たしたアルミスペースフレームのシャシーは強靭な上精度的にもルーズさを感じさせないマジもんのスポーツカーのそれ。502psのパワーは余裕綽々で受け止める。

 加減速時の姿勢の良さはミドシップならではのものだろう。それがゆえに、FR時代のコルベットに比べると、動力性能的には物足りなく思えてくるほどだ。

 が、実際にクローズドコースを走れば、コーナーの手前でとんでもない速度域に達している。

 そこまでシャシーが信頼できるという点ではフェラーリF8トリブートも相当の熟度に達しているが、新型コルベットとの大きな違いはやはり圧倒的なパワーだ。

 それがもたらすヒリヒリした刺激は、スーパーカーカテゴリーにおける新型コルベットの最大の課題かもしれない。

 が、ここはほどなく先代ZR1などが搭載した700ps級のパワートレインも積まれることになると目される。

 でも個人的にはシャシーが勝り、安心して踏んでいける今のパッケージで存分に楽しんだほうがハッピーだと思う。

斬新なデザインのコクピット。自社製の8速DCTを採用
歴代モデル同様、2シーターとなる

価格を知ればぐうの音も言わせないほどの満足度

これだけの性能、内容でフェラーリの2分の1~3分の1近い価格というのは凄い!

 クローズドコースでのパフォーマンスは先述したライバルのいずれにも、まったく劣ることはないレベルに達している。

 操作に対する応答の速度・精度・確度などは、旧いコルベットのイメージとはまるっきり異なるものだ。もちろん最高速や瞬発力は肩を並べど、ガチバトルとなれば絶対的な出力が劣るぶんの些細な遅さは露呈するだろう。

 でも新型コルベットにはそれを補って余りある日常域で走らせての充実感がある。ほかのモデルでは事務的移動でしかない50〜100km/hあたりにも漂う緩やかなリズム感は、伝統的なOHV、V8ユニットのサウンドやビートが紡ぐものだ。

 高いステータス性をウリにするライバルよりはマニア向きかもしれないが、その2分の1~3分の1に相当する1180万円〜という価格を知れば、その満足度はぐうの音も言わせないものを持っていると断言できる。

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