新型コルベットの走りは期待通りか?
エンジンを始動するとキャビンに飛び込んでくるサウンドはまごうかたなきアメリカンV8のそれだが、回転の上昇とともにその音質はザラ味が薄く澄んだものになっていくあたりがFR世代とはちょっと異なるところだろうか。ともあれその音源が後ろからというところに、ちょっと不思議な感覚を覚える。
自社設計の8速DCTはGMとしては初出ながら、低中速域でのリンケージマネジメントはすこぶる滑らかでアウディやホンダのそれと比べても見劣りはない。
そのワイドレシオもあって、100km/h巡航の回転域は1400rpm付近。日本の法定速度域では2000rpmも回れば事足りるほどで、車内ではオーディオを楽しむ暇も充分にある。
その環境を支える静粛性や乗り心地にも十分配慮されているのがコルベットのチャームポイントだ。その上質さはライバルを上回り、ポルシェ911にほど近いところにあると思う。
また、しっかりとフェンダーの両峰が確認でき、車幅感が掴みやすい前方視界はまさにコルベットの伝統を踏襲しているといえるだろう。
日本仕様の新型コルベットはもれなくZ51パッケージが装着された、運動性能的には全車同一の状態でデリバリーされる。
足回りは従来の横置きコンポジットリーフからコイルオーバーに変更された、そのコイルバネやスタビが強化されるほか、ドライブモードに応じて減衰力可変するマグネティックライドが標準となり、リアアクスルには多板クラッチを電子制御することで左右林の増減速を自在に操るeLSDが装着される。現状では最も走りの側に振られたスペックが標準となるわけだ。
軽量・高剛性化を果たしたアルミスペースフレームのシャシーは強靭な上精度的にもルーズさを感じさせないマジもんのスポーツカーのそれ。502psのパワーは余裕綽々で受け止める。
加減速時の姿勢の良さはミドシップならではのものだろう。それがゆえに、FR時代のコルベットに比べると、動力性能的には物足りなく思えてくるほどだ。
が、実際にクローズドコースを走れば、コーナーの手前でとんでもない速度域に達している。
そこまでシャシーが信頼できるという点ではフェラーリF8トリブートも相当の熟度に達しているが、新型コルベットとの大きな違いはやはり圧倒的なパワーだ。
それがもたらすヒリヒリした刺激は、スーパーカーカテゴリーにおける新型コルベットの最大の課題かもしれない。
が、ここはほどなく先代ZR1などが搭載した700ps級のパワートレインも積まれることになると目される。
でも個人的にはシャシーが勝り、安心して踏んでいける今のパッケージで存分に楽しんだほうがハッピーだと思う。
価格を知ればぐうの音も言わせないほどの満足度
クローズドコースでのパフォーマンスは先述したライバルのいずれにも、まったく劣ることはないレベルに達している。
操作に対する応答の速度・精度・確度などは、旧いコルベットのイメージとはまるっきり異なるものだ。もちろん最高速や瞬発力は肩を並べど、ガチバトルとなれば絶対的な出力が劣るぶんの些細な遅さは露呈するだろう。
でも新型コルベットにはそれを補って余りある日常域で走らせての充実感がある。ほかのモデルでは事務的移動でしかない50〜100km/hあたりにも漂う緩やかなリズム感は、伝統的なOHV、V8ユニットのサウンドやビートが紡ぐものだ。
高いステータス性をウリにするライバルよりはマニア向きかもしれないが、その2分の1~3分の1に相当する1180万円〜という価格を知れば、その満足度はぐうの音も言わせないものを持っていると断言できる。
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